ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

華麗なるレース (A Day At The Races)

2007年07月05日 | 名盤

 
 クイーンのレコードをいちばん聴き込んだのは中学生の頃です。美しいメロディー、クラシカルなコーラス・ハーモニー、壮麗なギター・オーケストレイションなどに耳を奪われたものでした。
 でも、財布の中味の乏しい中学生が片っ端からレコードを買えるはずもありません。ラジオで聴いたり、友達から借りたりして聴くうちに、「これはどうしても欲しい」と思うものだけを何とかやりくりして買っていました。
 クイーンの5枚目のアルバム「華麗なるレース」は、シングル・カットされた「愛にすべてを」を聴いて、たまらなく欲しくなり、たしか中古レコード店で買ったんじゃなかったかな。





 「華麗なるレース」は、分厚いコーラスやドラマティックな曲調など、前作「オペラ座の夜」の流れを汲むもので、クラシカルな部分とポップな部分がほどよく溶け合っている感じです。とくにそれが顕著な例が「愛にすべてを」「手をとりあって」だと思います。ピアノ中心の伴奏なので、普通ならば甘さに流されて線が細くなりがちなのですが、クイーンの場合、オーヴァー・ダヴィングを重ねた緻密なコーラスがバックのサウンドの中心となっているので、甘いというよりは、むしろ重厚・荘厳なサウンドとなっています。





 レコードに針を落とすと、まずギターによるイントロダクションが現れます。それに続いて、ハード・ロック・ナンバーの「タイ・ユア・マザー・ダウン」で『レース』が始まります。この曲は、デビュー当時の荒々しさを彷彿とさせるものです。ほかに「ホワイト・マン」や「さまよい」でヘヴィなサウンドが聴かれます。
 ピアノとコーラスだけで聴かせる「テイク・マイ・ブレス・アウェイ」、ブライアン・メイ作のポップな佳曲「ロング・アウェイ」、ロックとワルツを見事に融合させた「ミリオネア・ワルツ」と続きます。
 5曲目の「ユー・アンド・アイ」はジョン・ディーコンの作。ジョンらしい、とてもポップな曲で、このアルバムの中でもぼくの好きな曲のひとつです。シングル・カットされてもおかしくない出来栄えだと思います。





 6曲目の「愛にすべてを」は最高全米13位、全英2位の大ヒットとなった美しい曲です。コーラスの見事さもさることながら、曲に色彩を施しているようなロジャー・テイラーのドラミング、シンバル・ワークが目立ちます。
 「懐かしのラヴァー・ボーイ」は、ドラマティックで親しみやすいメロディーを持つフレディの曲です。『ラヴァー・ボーイ』とはもちろん男性の愛人(つまりゲイ)のことです。
 ラストは「手をとりあって」。ほの暗い雰囲気で始まるバラードですが、クライマックスに近づくにつれて、明りが灯り、それが輝きを増していくような感じを受けるロマンティックな曲ですね。この曲は一部日本語の歌詞が出てきます。これは無名の頃からいち早くクイーンを受け入れ、熱心な声援を送ってきた日本のファンに対する感謝の表れだということです。





 このアルバムは、フレディとブライアンの二本の柱がそれぞれ4曲ずつ書いています。とくにフレディのメロディー・ラインの良さは、アルバム全体の中でも際立っていると思います。
 ハード・ロックの色合いを残しながらも、バリエーションに富んだ曲の数々は、クイーンのバンドとしての成長を証明するものにほかならないでしょう。
 なおこのアルバムは、全米で5位、全英で1位を記録したほか、オランダ1位、日本1位、ノルウェー3位、カナダ4位、オーストリア、スウェーデン、オーストラリア8位、ドイツ10位、ニュージーランド11位、フランス16位など、各国で大いにチャートを賑わせました。



 
 
◆華麗なるレース (A Day At The Races)
  
■歌・演奏
    クイーン/Queen
  ■リリース
    アメリカ1976年12月18日、イギリス1976年12月10日、日本1977年1月9日
  ■プロデュース
    クイーン、マイク・ストーン/Queen、Mike Stone
  ■収録曲
   Side-A
    ①タイ・ユア・マザー・ダウン/Tie Your Mother Down (May)  ☆全米49位, 全英31位
    ②テイク・マイ・ブレス・アウェイ/You Take My Breath Away (Mercury) 
    ③ロング・アウェイ/Long Away (May)  ☆
    ④ミリオネア・ワルツ/The Millionaire Waltz (Mercury)
    ⑤ユー・アンド・アイ/You And I (Deacon)
   Side-B
    ⑥愛にすべてを/Somebody To Love (Mercury)  ☆全米13位, 全英2位
    ⑦ホワイト・マン/White Man (May)
    ⑧懐かしのラヴァー・ボーイ/Good Old Fashioned Lover Boy (Mercury)  ☆全英17位
    ⑨さまよい/Drowse (Taylor)
    ⑩手をとりあって/Teo Torriatte(Let Us Cling Together) (May)  ☆
    ☆=シングル・カット
  ■録音メンバー
   【Queen】
    フレディ・マーキュリー/Freddie Mercury (lead-vocal①②④⑤⑥⑦⑧⑩, piano②④⑤⑥⑧, backing-vocals①②③④⑤⑥⑦⑧⑩, gospel-choir⑥)
    ブライアン・メイ/Brian May (guitars, piano⑩, lead-vocals③, backing-vocal①③④⑤⑥⑦⑧⑩, gospel-choir⑥)
    ジョン・ディーコン/John Deacon (bass, acoustic-guitar⑤)
     ロジャー・テイラー/Roger Taylor (drums①③④⑤⑥⑦⑧⑨⑩, percussion①②⑧⑨⑩, guitar⑨, lead-vocal⑨, backing-vocals①③④⑤⑥⑦⑧⑨⑩, gospel-choir⑥)
   【guest】
    マイク・ストーン/Mike Stone (additional background vocals⑧)
  ■チャート最高位
    1977年週間チャート    アメリカ(ビルボード)5位、イギリス1位、日本(オリコン)1位       
    1977年年間チャート   イギリス45位、日本24位
 
 





 

コメント (8)
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