ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

ジンジャー・ベイカーズ・エア・フォース (Ginger Baker's Air Force)

2006年11月20日 | 名盤

 
 「ブラインド・フェイス」解散後の1969年暮れ、「ジンジャー・ベイカーズ・エア・フォース」というバンドが結成された。バンド名の通り、ドラマーのジンジャー・ベイカーが中心となって生まれたグループである。
 メンバーは計10人の大所帯。
 いずれも一騎当千の強者ぞろいだ。
 
 
☆ジンジャー・ベイカー(drums, percussion, vocals・・・元クリーム~ブラインド・フェイス)
☆フィル・シーメン(drums, percussion)
☆レミ・カバカ(drums, percussion)
☆デニー・レイン(guitar, vocals・・・元ムーディー・ブルース)
☆リック・グレッチ(bass, violin・・・元ファミリー~ブラインド・フェイス)
☆スティーヴィー・ウィンウッド(organ, bass, vocals・・・トラフィック~ブラインド・フェイス)
☆グラハム・ボンド(alto-sax, organ・・・元グラハム・ボンド・オーガニゼイション)
☆クリス・ウッド(tenor-sax, flute・・・トラフィック)
☆ハロルド・マクネアー(tenor-sax, alto-sax, flute)
☆ジネット・ジェイコブス(vocals)


 多少補足しておくと、
 フィル・シーメンは英国ジャズ界の名ドラマーで、ベイカーが師とも仰いでいた人物。
 デニー・レインはのちポール・マッカートニーの「ウィングス」へ加入、ポールの右腕として活躍した。
 スティーヴィー・ウィンウッドはのちソロを経て「トラフィック」を再編。
 ナイジェリア出身のレミ・カバカは、1973年にそのウィンウッドと「サード・ワールド」を結成。
 グラハム・ボンドは英国ブルース界の重鎮で、ベイカーの旧友。
 ジネット・ジェイコブスは「ドクター・ジョン」のヴォーカリストで、のちクリス・ウッド夫人となる。


     
     『ジンジャー・ベイカーズ・エア・フォース』
     (Ginger Baker's Air Force)


 このアルバム『ジンジャー・ベイカーズ・エア・フォース』は、このグループが1970年1月にロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで行ったデビュー・コンサートの様子を収録したものである。
 アナログ盤で2枚組だったこの作品に収められたのは全8曲、約81分。長尺の曲が多いのは、演奏形態がジャズに近かったので、各個に充分なアドリブ・ソロ・スペースがあるからだろう。


 ホーン・セクションが3人いるが、この頃ブームだった「ブラス・ロック」とは一線を画していると思う。ブラス・ロックがホーン・セクションのアンサンブルに力を入れていたのに対し、エア・フォースのサックス3人の存在意義は、インプロヴィゼイションにある、と言えるからだ。


     
 
 
 ブラインド・フェイスからエリック・クラプトン以外の三人が参加しているのも注目される点だが、音楽的指向の違いがあるためウィンウッドのオルガン、グレッチのベース、ベイカーのドラムとも、ブラインド・フェイス時代より迫力があるのが面白い。
 ベイカーはもともとジャズ、ブルースのフィールドで活動していたから、ジャズへの接近は自然なものだろう。そのうえこの頃のベイカーはアフリカの土着リズムに興味を示していて、それがこのバンドのひとつの個性にもなっている。アフリカ出身者をメンバーに加えた理由もそこらあたりにあるようだ。アフリカン・ビートを大胆に取り込んだ「アイコ・ビヤエ」という曲での、打楽器陣3人の活躍ぶりは目覚しい。


     
 
 
 「いやな奴」と「ドゥー・ホワット・ユー・ライク」で繰り広げられるツイン・ドラム・ソロは迫力満点だ。カミソリのようなキレのあるシーメン、ナタのようなパワーのあるベイカー、といったところだろうか。ふたりのソロは、お互いのフレーズに触発されてどんどんヒートアップしてゆく、一種インタープレイめいたところがあり、そこがまた聴き応えのあるところでもあると思う。


 ジャズの影響が色濃いだけあって、ソロ・スペースが充分にあり、それがために却ってやや冗長なものになっている部分があることは否めないが、1960年代後半から70年代前半にかけての、熱く、プログレッシヴな雰囲気に満ちたロックを表現した一枚だと言うことができるだろう。



◆ジンジャー・ベイカーズ・エア・フォース/Ginger Baker's Air Force
  ■歌・演奏
    ジンジャーベイカーズ・エア・フォース/Ginger Baker's Air Force
  ■リリース
    1970年3月30日
  ■録音
    1970年1月15日  ロンドン、ロイヤル・アルバート・ホールにおけるライヴ録音
  ■プロデュース
    ジンジャー・ベイカー、ジミー・ミラー/Ginger Baker, Jimmy Miller
  ■収録曲
   [Disc 1]  
    A① ダ・ダ・マン/Da Da Man (McNair)
        *organ-solo by Winwood, guitar-solo by Laine, sax-solo by Bond  
     ② アーリー・イン・ザ・モーニング/Early in the Morning (Traditional  arr.by Baker)  
    B③ ドント・ケア/Don't Care (Baker, Winwood)  
     ④ いやな奴/Toad (Baker)
        *drum-solo by Baker, Kabaka & Seamen
   [Disc 2]  
   C⑤ アイコ・ビヤエ/Aiko Biaye (Kabaka, Teddy Osei)  
    ⑥ マン・オブ・コンスタント・ソロウ/Man of Constant Sorrow (Traditional  arr.by Laine)  
        *bass by Winwood, violin by Grech
   D⑦ 君の好きなように/Do What You Like (Baker)  
    ⑧ ドゥーイン・イット/Doin' It (Baker, Grech)
  ■録音メンバー
   【Ginger Baker's Air Force】
    ジンジャー・ベイカー/Ginger Baker (drums, percussion, timpani, vocals, lead-vocals②)
    フィル・シーメン/Phil Seamen (drums, percussion)
    レミ・カバカ/Remi Kabaka (drums, percussion)
    デニー・レイン/Denny Laine (guitar, vocals, lead-vocals②⑥)
    リック・グレッチ/Ric Grech (bass, violin)
    スティーヴィー・ウィンウッド/Steve Winwood (organ, bass, vocals, lead-vocals③⑦)
    グラハム・ボンド/Graham Bond (alto-sax, organ, lead-vocals⑤)
    クリス・ウッド/Chris Wood (tenor-sax, flute)
    ハロルド・マクネアー/Harold McNair (tenor-sax, alto-sax, flute)
    ジネット・ジェイコブス/Jeanette Jacobs (vocals, lead-vocals①③)
  ■チャート最高位   
    1970年週間チャート  アメリカ(ビルボード)33位、イギリス37位 




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