ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

コラシアム(COLOSSEUM)

2006年11月15日 | ミュージシャン


  
 ニュー・ロック、またはアート・ロックと呼ばれて注目された1960年代末期の一連のムーヴメントの渦中に出現したバンドの中で、「コラシアム」の名はいまでも燦然と輝いている、とぼくは思っています。


 コラシアムはジョン・メイオールのブルースブレイカーズに在籍していたジョン・ハイズマン(drums)、トニー・リーヴス(bass)、ディック・ヘクストール・スミス(sax)が中心となり、デイヴ・グリーンスレイド(keyboard)とジェームス・リザーランド(vocal, guitar)らを加えて1968年に結成されたイギリスのジャズ・ロック・グループです。
 ブリティッシュ・ロックらしい重厚な雰囲気をまといながら、新しい時代の到来が予感される当時の混沌としたロック界を体現するかのような新鮮な雰囲気をも併せ持っています。
 ぼくは、このバンドはクリームなどと並び称せられてもおかしくない重みと価値があると思っているのですが、さてどんなものでしょうか。


 20年以上も前のこと、FMでコラシアムの『ヴァレンタイン組曲』がかかったのを聴いたことがあります。
 17分以上にもなる大曲ですが、フルコーラス放送されました。
 それを聴いたぼくは、すぐにその『ヴァレンタイン組曲』の入ったコラシアムのアルバムを買いに走ったものでした。


     
     『ヴァレンタイン組曲』(Valentyne Suite)


 ブルースやジャズの要素いっぱいに繰り広げられる彼らのプレイは、先進の気質と魅力にあふれるものです。
 創造的、意欲的で、技術的にも文句なく、当時の彼らが生み出されたブリティッシュ・ロック界の充実ぶりまでもが伺えるほどです。
 バンドを率いるのは、ドラマーのジョン・ハイズマン。
 存在感のあるハイズマンのスティックさばきは、ちょうど同じ時期に活躍していた、やはりブリティッシュ・ロック界の名ドラマー、ジンジャー・ベイカーに勝るとも劣らない、華麗かつ過激なものだと思います。
 そのほか目立つのが、D・H・スミスのサックスとD・グリーンスレイドのキーボード群の活躍です。
 ロック界では珍しいサックスの入った編成は、ビジュアルだけでもユニークで、ジャジーです。



トニー・リーヴス(bass 左)、ジョン・ハイズマン(drums 中央)、ディック・ヘクストール・スミス(sax 右)


 コラシアムは、1971年の暮れには活動歴わずか3年あまりで解散することになるのですが、彼らのブリティッシュ・ロックにおける位置づけはその短い年月からは計り知れない大きなものではないでしょうか。
 ハイズマンはのちアラン・ホールズワースらとテンペストを、またゲイリー・ムーアらとコラシアムⅡを結成しています。
 リザーランドの後任としてコラシアムに加わったクレム・クレムソンは、のちハンブル・パイの一員として活躍することになるし、プロデューサーに転身したリーヴスの、後任ベーシストであるマーク・クラークはのちユーライア・ヒープやレインボウに加入しています。
 スミスはソロ活動へと進み、D・グリーンスレイドは、ツイン・キーボード・グループとして一部では評価の高いバンド、「グリーンスレイド」をのちに結成するなど、それぞれの活動歴を見てゆくだけでも、このコラシアムというグループがいかにブリティッシュ・ロック界の中で大きな位置を占めていたかが分かるでしょう。


 彼らの音楽はジャズ・ロックの源流のひとつとも言えるし、ブルースやクラシックからの大きな影響もうかがえます。
 そしてそれ以上に、積極的にジャズやブルースを吸収し、昇華していったその姿勢からは、コロシアムはプログレッシヴなグループだったとも言えるのではないでしょうか。


 コラシアムは1994年に再結成されました。
 2007年2月には来日公演が予定されていますが、これを機会にもっと再評価されてもよいのではないかと思っています。


 【追記】コラシアムは2015年に再び解散。2018年6月12日にはジョン・ハイズマンが73歳で死去したが、2020年に再々結成している。




コメント (2)
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