読書感想文22 ~巡査の休日~

2011-11-24 20:55:55 | 
大好きな作家、佐々木譲氏の北海道警シリーズ第4弾。

まさか4作目が出るとはねぇ。
予想も期待もしていませんでしたな。
3作目の【警官の紋章】があまりにも秀逸で、
さらに大団円のラストだったので、
これ以上、何が描かれるのだろうと疑問に思いながら手にした一冊でした。

今作の主人公は小島百合巡査。
時系列的には前作の【警官の紋章】直後という解釈でいいと思います。
前作の冒頭で、小島巡査が現行犯逮捕した婦女暴行犯の鎌田が入院中の病院から脱走し、
懸命の捜査も空しく、行方をくらませてしまいます。
その犯人が逮捕前にストーカー行為を行っていた村瀬香里を、
24時間つきっきりで護衛するのが小島巡査の仕事。
しかしやがて、村瀬香里の携帯に鎌田と思われる者からメールが届く。

今作にも佐伯警部補や津久井巡査は登場しますが、
それぞれが追う事件はまったく繋がっていません。
というか、繋がっているように見えて、まったく別の事件です。
それでも、それぞれの捜査過程が面白く、
一気に読み終えてしまうのは、さすが氏の作品だと思います。

そう、面白いのですが、今作は犯人の動機が弱すぎます。
推理小説は全体的にその傾向がありますよね。
まずは犯罪ありきで構築していくと思うので、
どれもこれも、犯人の動機が弱い。
その程度でそこまでやるか!?という突っ込みは毎度のことです。
でもこの作品は推理小説というよりも警察小説です。
ならば、もう少し犯人の動機にはリアリティーがあってもいいんじゃないかと。
さらに、小島巡査。
以前、相談に来た女性が犯人なのですが、
古いこととはいえ会話まで交わしておいて、
さらにその女性を救えなかったとの後悔の念があるにもかかわらず、
さらにさらに、再会して会話まで交わしているクセに、
まったく気付くことがありません。
普通の警察小説に出てくる警官ならば、
そこまですっぽりと忘れることはないと思うのですがね。

このため、読後の違和感はぬぐえません。
救いは、新宮巡査に活躍の場があったことと、
ラストシーンが秀逸だったことでしょうか。
ビアガーデンに繰り出し、YOSAKOIソーラン祭りを最前列で堪能する
佐伯、津久井、新宮の面々。
そこへ踊り手としてやってきた小島巡査が面々の前に近づき、、
佐伯にケリを入れる。
短くささやかな巡査の休日。
ケリの意味は【うたう警官】から読んできた者にとってはよく理解でき、
“あいつ、おれに回し蹴りをくれたぞ”
の佐伯のセリフにはプッと吹き出してしまいます。

この道警シリーズ、すっかり定番となったようで、
次回作が出るとの噂もチラホラ。
是非とも出てほしいですねぇ。
期待しています。
では。