7月1日付 読売新聞編集手帳
初夏、ホトトギスがキョキョキョと鳴く。
「てっぺん欠けたか」「特許許可局」…日本人はその声を、さまざまに聞きなしてきた。
“新説”を『読売歌壇』より。
〈聴き做(な)すに特許許可局とは鳴かでドッキョコリタカ独居懲リタカ〉(板坂寿一)
選者、小池光さんの評に「鳥は変わらず、人の耳が変わる」とある。
2年前に掲載された一首だが、
発表された2010年国勢調査の集計を見ると、
いよいよそう聞こえてきそうである。
一人暮らしの世帯が31・2%と3割を超え、
夫婦と子供の世帯(28・7%)を初めて上回った。
少子高齢化の落とす影が、
また少し濃くなったようである。
子育て支援も一項目に含む「社会保障と税の一体改革」政府・与党案がきのう決まったが、
政権の金看板に据えた改革のはずなのに、
菅首相は閣内からの反対論を恐れて閣議決定を見送るという。
計略のつもりであったにせよ、
陣を表明した首相の求心力とはこんなものだろう。
しゃにむに居座りたいほど、
首相の椅子とは座り心地の良いものなのだろうか。
やがて蝉(せみ)の声が「ツクヅクオイシイ」と答えてくれそうな気がする。