12月30日 編集手帳
キンキンこと愛川欽也さん(4月逝去)は昔、
深夜放送ではがきを1枚読むごとに「青春!」の一語で結んだ。
愛川さんにならい、
一語を添えて亡き人を偲(しの)ぶ。
長田弘さん(5月逝去)に『アメイジング・ツリー』と題された詩がある。
〈この世で、人はほんの短い時間を
土の上で過ごすだけにすぎない
仕事して、愛して、眠って
ひょいと、ある日、姿を消すのだ
人は、おおきな樹(き)のなかに〉。
人生。
俳人津田清子さん(5月逝去)の句。
〈千里飛び来て白鳥の争へる〉。
つらい旅路の道連れ同士がなぜに争う、
白鳥よ、
人間よ。
人生。
桂米朝さん(3月逝去)が生涯、
胸に刻み続けた師匠米団治の教え。
〈芸人は、
米一粒、
釘(くぎ)一本もよう作らんくせに、
酒が良(え)えの悪いのと言うて、
好きな芸をやって一生を送る。
芸をみがく以外に世間にお返しする途(みち)はない。
芸人になった以上、
末路哀れは覚悟の前やで〉。
人生。
評論家の鶴見俊輔さん(7月逝去)に晩年の歌がある。
〈出鱈目(でたらめ)の鱈目の鱈を干しておいて夜ごと夜ごとにひとつ食うかな〉。
食いきれぬほどの“身から出た鱈”を持て余し、
年がゆく。
人生。