日暮しの種 

経済やら芸能やらスポーツやら
お勉強いたします

人参果(にんじんか)

2014-05-31 08:00:00 | 編集手帳
5月17日 編集手帳

『西遊記』に、
匂いを嗅ぐだけで360年も長生きできる「 人参果(にんじんか) 」という果物が出てくる。
三蔵法師一行は万寿山の仙人を訪ねた折に振る舞われている。

その実は希少なことこの上なく、
花が咲き、
実が成って熟するまでに1万年かかるという。
「こどもの日」から「母の日」「父の日」につづく季節になると、
いつもその一節を思い出す。

わが子を亡くしたつらい経験をもつ親御さんにとって逝きし子は、
この先何万年待とうとも再びはめぐり合えぬ唯一無二の命だろう。
希少で掛け替えのないことは、
人参果の比ではない。

韓国の旅客船「セウォル号」の沈没事故からひと月がたった。
修学旅行の生徒を含む284人が犠牲となり、
行方不明者はなお20人を数える。
その海外ニュースが心のどこかに影を落とすなかで「こどもの日」や「母の日」を過ごした方も多かろう。

『西遊記』の作者も霊妙で希少な人参果を創案するとき、
あるいはわが子のことがちらりと頭をかすめたかも知れないと、
そう思うときがある。
実のかたちは「生まれて3日もたたない人間の赤んぼうそっくりであった」と、
物語にある。
コメント

遊牧民の伝統 手織りの「ギャッベ」

2014-05-30 07:00:00 | 海外ネットワーク
5月25日 海外ネットワーク


絹で織られた伝統的なペルシャ絨毯。
約300万円。
同じペルシャ絨毯でもモダンなデザインが特徴の絨毯ギャッベ
羊毛で織られていて約30万円。
手ごろ感があって日本国内でも取り扱う店が増えてきている。
「手作りというのは感覚として伝わる。
 一つだけというところが貴重な感じ。」
「絵柄とか色合いがすごく好き。」
“ギャッベ”はペルシャ語で“分厚くあらっぽい”という意味。
価格の手ごろ感に加えて厚みのある手触りも人気である。
(IDC大塚家具 日色敬行さん)
「30代前後から年配の方まで幅広く好評です。
 肌触りがすごく気持ちよくて売り場で寝転んで試す人も多い。」
ギャッベはイランの遊牧民が始めて代々受け継がれてきたものである。

イランと首都テヘランから南へ約1000キロ。
標高2000mを超える山々が連なる。
ザグロス山脈でギャッベは作られている。
山岳地帯に暮らす少数民族のカシュガイの人たち。
18世紀にトルコとの国境付近から移り住んできたとされている。
今も昔ながらの遊牧生活を続けている。
カシュガイの人たちは自分たちで育てた羊の毛でギャッベを手で1枚1枚織り上げる。
座布団ほどの大きさのギャッベを1枚織るのに約2週間かかる。
その技術は母から子へそして孫へと数百年にわたって受け継がれてきた。
丈夫で持ち運びしやすく寒さをしのぐこともできるギャッベ。
厳しい遊牧生活を送るカシュガイの人たちにとって欠かせないものである。
「子どものころからずっと織っている。」
絨毯商人のハミッド・ゾランバリーさん(43)。
ハミッドっさんの父親はギャッペ市場拡大に力を尽くし“ギャッベの父”と呼ばれている。
一家は60年にわたってギャッペを専門にあつかってきた。
ハミッドさんはより多くの人にギャッベを使ってもらおうと様々な取り組みを進めてきた。
もともとは限られた色の毛糸しか使われていなかったギャッベ。
カシュガイの人たちを訪ね消費者の好む色やデザインを取り入れるよう依頼した。
今では色とりどりのギャッベが作られるようになった。
(ギャッベ織りの責任者)
「私たちはもともと自分の生活のためだけにギャッベを織ってきた。
 しかし注文を受けて新しい色を取り入れるようになった。」
素材にもこだわった。
ハミッドさんはカシュガイの人たちがつむいだ毛糸をザクロなどの天然素材で染めて織ってもらっている。
ギャッベの素朴なぬくもりを引立てるための工夫である。
さらに出来上がったギャッペは念入りにチェックし無駄な糸などを取り除いている。
こうしてカシュガイの人たちと二人三脚でギャッベの品質と価値を高め各国に売り込んできた。
今年3月には北欧にも販路を広げようとドイツ ハンブルグの店を大幅に拡張した。
海外での売り上げは30年余りで10倍近くに伸びたがさらに増やしたいと考えている。
春の大移動を終えたカシュガイの人たち。
今年もギャッペを織る季節がやってきた。
「今年の羊毛はとてもいい。」
「みんな昔からギャッペを編み私も受け継いだ。
 編むことに誇りを持っている。」
ハミッドさんもギャッペの出来上がりを楽しみに待っている。
(ハミッドさん)
「カシュガイの人たちは長い歴史と伝統を持っている。
 彼らの文化を大切にしながら新しいデザインや色を取り入れたい。」

ギャッベは最近はイラン国内でも新婚家庭を中心に人気が高い。
イランの遊牧民に受け継がれてきた絨毯作りの技はユネスコの世界無形文化遺産に登録されている。
手織りの技術や使う道具などが時代が変わってもそのまま受け継がれたことが評価されたということである。







コメント

アーティストは運営するNY発ユニークB&B

2014-05-29 07:00:00 | 報道/ニュース
5月24日 キャッチ!


芸術家が多く住むニューヨークのブルックリンの一角にある朝食付きのB&B。
朝食を作ったのはアーティストのアレーナ・レーゼルさん。
この宿はアーティストのグループが運営しているB&Bである。
「とてもくつろげる。
 友だちの家に泊まっているみたいだ。」
「大きなホテルと違って地元に密着していることがいいわ。」
共同生活をしているアーティストたち7人が創作活動と生活を両立させるため4年前に始めた。
住み込みでB&Bを運営しその売り上げで家賃や食費を賄っている。
現金収入がなくても生活できるしくみを作ることができた。
人は雇わずみんなで仕事を分担している。
この日の電話番はミュージシャンのマット・キーサンさん。
部屋の掃除をしているのは作家のキャサリン・レーシーさん。
インテリアもお金をかけず自分たちで手掛けた。
こうして1人当たり週に10時間程度の労働で生活を維持し創作活動に専念している。
B&Bの一つ下のフロアーがアーティストたちの生活の場である。
作家のキャサリン・レーシーさんは最近初めての本を出版することが決まった。
(キャサリン・レーシーさん)
「仕事は短時間で生活費の心配もないから
 ほとんどの時間を本を書くことに集中できたわ。」
朝食を作っていたアレーナさんはテキスタイルアーティスト。
近所にアトリエを借りている。
自分で染めた糸を使って布を織り一点物の洋服を作っている。
「ニューヨークの生活とアートを両立させるには金専門の援助がないと本当に大変。
 B&Bでのサポートがなかったら作品作りを続けることは不可能だったわ。」
土曜日の夜 リビングルームでアーティスト仲間のミュージシャンが小さなコンサートを開いた。
宿泊客を招いたこうしたイベントもこのB&Bならではの大きな魅力となっている。

コメント

NY夏の風物詩 フリート・ウィーク

2014-05-28 08:00:00 | 報道/ニュース
5月24日 キャッチ!


Fleet Week(艦隊週間)
毎年 この時期にアメリカ海軍の軍艦5隻もニューヨーク湾に登場し
街中は制服姿のセーラーたちであふれかえる。
今年は若いセーラー1500人がニューヨークの休暇を楽しんだ。
市民たちとの交流もたっぷりあって
セーラーたちのレクリエーションと海軍のイメージアップを図ったPR活動の一石二鳥。
セーラー服はアメリカでは海軍だけなので
真っ白いパッケージに包まれたセーラーたちは注目を集める。
(ニューヨーカー)
「毎年ニューヨークにセーラーがやってくるのが楽しみなの。
 大変な任務に就く若者たちに1週間を満喫してもらいたい。
 できるだけ親切にするし
 楽しんでる?って声をかけるの。」
「セーラーってとってもキュート!」
「クールで強くてセクシー!」
「街で見かけたら“お務めありがとう”って言うの。
 それから1杯おごってあげるわ。」
(セーラー)
「久しぶりの都会だから歩くだけでもとても楽しいんだ。」
「ぼくらをみたら拍手したりみんなとても歓迎してくれる。」
(ニューヨーカー)
「女の子に声をかけても全然ダメ。
 みんなセーラーに夢中なんだ。」
「ゲイの集まるバーにもせーらーがたくさんやってくるのよ。
 軍もゲイを受け入れたしね。
 一緒に飲むと彼らがよくわかる。
 身近に感じられるようになったわ。」
(クラブの客引き)
「もちろん“お笑い”も見に来るんだよ。
 海の上って退屈だろ。
 毎日鳥しか見てないんだ。
 そんな“カモ”がたくさんやってくるんんだ。」
コメント

進化する生体認証 現状と課題

2014-05-27 08:00:00 | 報道/ニュース
5月22日 キャッチ!

最近著しく進んでいる生体認証=バイオメトリクス。
体の一部を使って個人を特定するものである。
アメリカでは犯罪の現場捜査への導入が積極的に進められている一方でプライバシーを巡る議論も起きている。

西海岸のチュラビスタ警察署は犯罪捜査の在り方を変えるかもしれない新たな技術を試している。
麻薬所持で逮捕された女性の身元確認のため警察官が現場に駆けつける。
名前を聞いたり身分証の提示を求める必要はない。
写真を撮るだけ。
端末の顔認識ソフトが容疑者の顔写真と犯罪歴を探し出す。
「名前や誕生日、住所とは違って刺青や傷痕はごまかせません。」
警察官がより多くのデータにアクセスすることができる一方でその扱い方や保管方法が問われている。
「とても役に立っています。
 自分のことを明かさない人でも写真で身元確認ができると知ると本名を名のる傾向があります。」
警察では指紋や顔、手のひらの掌紋などの生体認証によって身元の特定を行うことが多くなっている。
指紋認証の技術自体も大幅に進化。
モバイルスキャナーで採取された指紋は遠く離れたウェストバージニア州にある厳重警備のFBI施設に送られる。
NGI=次世代識別システム
10億ドルを投じて作られたこのシステムには
1億3700万人分の指紋情報に加えて顔などの生体認証情報も登録される。
現場からの指紋や写真のデータはこのシステムが分析する。
FBIは1900年代初めから指紋を収集してきたが照合には数か月かかることもあった。
このシステムならばそれをわずか数分で処理できる。
FBIは最近まで収集した掌紋や顔写真の検索は簡単ではなかった。
(FBI ウィルツ捜査官)
「FBIは集めた顔写真や掌紋をほとんど利用できていませんでした。
 十分な検索手段がなかったのです。
 作業軽減のためにNGIが導入されました。」
今では現場の警察官がNGIに写真を送るだけで顔が類似する人物のリストを入手できる。
NGIにはひとによってパターンが異なる虹彩(瞳孔の周りのしわ)のデータも登録されている。
こうしたNGIの能力は未解決事件の捜査に生かされると言う。
(FBI ウィルツ捜査官)
「未解決事件に大きな力を発揮するでしょう。
 次々と成果が上がるのが待ち遠しいです。」
(人権擁護団体 リンチ弁護士)
「NGIについての最大の懸念は誰の情報でも保存されてしまうことです。」
リンチ弁護士は収集しているデータの開示を求めFBIを訴えている。
(人権擁護団体 リンチ弁護士)
「NGIには犯罪者の記録だけを加えるとFBIは説明しました。
 しかし犯罪者だけの記録に限るという法律はありません。」
顔認識システムでは間違った人物を特定したり候補15人の中に容疑者が含まれないケースが15%の割合で発生する。
(人権擁護団体 リンチ弁護士)
「顔が似ているというだけで容疑者候補にされてしまった人は無実を証明する必要が出てきます。
 これは民主主義の考えに反するのです。」
コメント

伝統のバーボン 成長産業に“変身”

2014-05-26 08:00:00 | 報道/ニュース
5月20日 キャッチ!


バーで陽気に楽しむアメリカの人たち。
手にしているのはバーボンウィスキー。
景気が上向くにつれアメリカ国内のバーボンの売り上げも拡大。
少し贅沢をしようと価格の高い商品が売れるようになっている。
若者の間でバーボンをしゃれた飲み物と見直す動きも後押ししている。

南部ケンタッキー州ルイビルにはバーボンの蒸溜場があちこちにある。
バーボンはこの地域の経済を支える主要産業である。
創業約140年の酒造メーカーのブラウン・フォーマン社。
日本でもおなじみの銘柄のバーボンやテネシーウィスキーなどを幅広く製造する老舗である。
去年の売り上げは約3800億円。
前年比5%増で過去最高を記録した。
アメリカ国内の販売回復に加え伝統の産業が成長産業に生まれ変わった大きな理由が輸出である。
日本やヨーロッパ、新興国と世界に販路を広げることで一時横ばいだった会社の業績は右肩上がりに。
今や売り上げの60%は海外があげている。
中でも中国やインドの新興国向けは去年12%の高い伸びを記録した。
(ブラウン・フォーマン デロング副社長)
「売り上げの6割は海外ですがまだまだ伸びる余地があります。
 海外には大きなチャンスがあるのです。」
バーボンの売り上げ拡大は予想もしなかった問題を起こしている。
バーボンを熟成させる樽の生産が追い付かなくなってきたのである。
工場では230人の従業員が連日の残業で年間60万個の樽を手作りしている。
工場のあらゆるラインがフル稼働し
バーボンの色や香りをつけるのに欠かせない樽ぬ内側を焦がす工程に似たまさに火を噴くような忙しさである。
それでも注文に対応しきれないため会社では新たに60人を雇って樽造りの新工場を建設した。
投資の費用は60億円にのぼる。
(工場長 ウィットマーさん)
「こんなに忙しいのは初めてです。
 数か月すればこの忙しさも落ち着くでしょう。」
バーボン業界の成長 その恩恵は地域経済にも広がり始めている。
バーボンの樽に使われるホワイトオークという材木を専門に扱っている地元の製材業者。
樽の急激な増産で注文が増えたところに住宅用の建築資材としても需要が急回復し
木材価格のこの1年間で30%ほど値上がりしたという。
先行きに自信を深めたこの製材業者も新しい工場の建設に踏み切った。
地元の農家にもバーボン景気の恩恵が広がっている。
従業員20人を雇い大規模農場を経営するピーターソンさん。
親から引き継いだ広大な農地でバーボンの原料になるトウモロコシを栽培しバーボン業界とともに人生を送ってきた。
トウモロコシは農場内の巨大なサイロに貯蔵し定期的にトラックでバーボンの蒸溜所に出荷している。
今後需要がさらに伸びると見込んで新しいサイロを建てて出荷をさらに増やそうと考えている。
(農場経営 ピーターソンさん)
「トウモロコシの需要は年々増えています。
 状況は上向いていて地元の農業にはチャンスです。」
海外市場に販路を広げグローバルな成長産業へと脱皮したバーボン業界。
地域経済に投資意欲を呼び起こし活性化の起爆剤にもなっている。




コメント

平和国家の軍事力

2014-05-25 08:25:40 | 編集手帳
5月16日 編集手帳


その島国は戦争を〈野獣的な行為〉として嫌う。
〈戦争で得られた名誉ほど不名誉なものはない〉と考えている。
トマス・モアの描いた『ユートピア』(1516年)である。

その平和国家が軍事力をもつ理由は二つあるという。
〈自分の国を守るため〉と〈友邦に侵入した敵軍を撃退するため〉と。
前者は個別的な、
後者は集団的な自衛権にあたろう。
苦難を救ってくれる友ならば、
こちらも友の苦難に手を差し伸べる。
普通の国の、
普通の発想である。

政府の有識者会議が、
集団的自衛権の行使を認めるよう求める報告書を安倍首相に提出した。

政府は必要最小限の行使に限定して認める提案に沿って、
憲法解釈を見直すべく与党との調整に入る。
異論も出るだろう。
出ていい。
政策とはいつの場合も、
異論とがっぷり四つに組み合うなかで磨かれるものである。

江戸期の狂歌作者、
元木網(もとのもくあみ)に一首がある。
〈あせ水をながしてならふ剣術のやくにもたゝぬ 御代(みよ)ぞめでたき〉。
平和のおかげで現在の繁栄を築き、
「御代ぞめでたき」の心が骨の髄まで徹した国だからこそ、
胸を張って新たな汗水を流すことができる。
コメント

銀河系 字(あざ) 日本に 端居(はしい) かな

2014-05-24 08:04:11 | 編集手帳
5月15日 編集手帳  


地球上で見られるのとよく似た現象が、
宇宙にもある。
アーサー・クラークは『2010年宇宙の旅』に書いている。
「コーヒーに注がれるミルクの渦巻きを渦状の星雲と比べるがいい」と。

小説家の空想とばかりも言えない。
宇宙船から見た地球の表面は、
顕微鏡で観察したサルの腎臓の細胞に姿がよく似ていると、
宇宙飛行士の毛利衛さんがかつて語ったことがある。
宇宙と地上の“相似形”は、
探せばほかにもいろいろあるのだろう。

日本人として初めて国際宇宙ステーションの船長を務めた若田光一さん(50)が無事帰還した。

「日本人らしい和の心」をモットーに米露5人の飛行士と心を通わせたと聞く。
宇宙空間の緊張に異文化の緊張も重なっただろう場所で、
作業や体調を管理する大任を果たした。
若田さんが宇宙で成し遂げた仕事を地上から見守った多くの子供たちの胸には、
「誇り」の相似形がくっきりと描かれたに違いない。

〈銀河系 字(あざ) 日本に 端居(はしい)かな〉(うまきいつこ)。
端居は、
縁側やベランダに出て涼むことをいう。
その人のおかげでちょっぴり高くなった鼻を上に向けて、
春の夕空を仰ぐ。
コメント

学生寮に託した日中友好の願い

2014-05-23 08:03:18 | 海外ネットワーク
5月18日 海外ネットワーク


日本と中国の関係は冷え込んだ状態が続いているが
中国ではこれまでにない形で日中友好を模索しようという動きが始まっている。
名門大学に作られた学生寮がいま日本と中国の若者を強く結び付けようとしている。

北京大学の学生寮でサッカーを観戦するルームメイトのふたり。
中国人の学生と日本人の留学生である。
(中国人学生)
「日本人は友好的で付き合いやすい。
 中国と日本の文化の違いはそんなに大きくない。」
(日本人留学生)
「中国人と暮らすのはどうかなと躊躇しているところがあったけど
 彼がすごく優しい。」
学生寮の中日交流センター。
日中の若者60人が一緒に暮らしている。
中国では中国人学生と外国人留学生が別々の寮に住むことが一般的。
この寮は極めて珍しい形式である。
おそろいのTシャツを着た日本と中国の学生たち。
寮は2年前に日中の友好の場として誕生した。
設立に深くかかわったのは日本で学んだことのある男性。
上海出身の香港の企業家 曹其さん(75)は寮の設立のために3億円余りを寄付した。
曹さんは1958年から4年間東京大学で学び都内の学生寮で日本人と暮らした。
(曹其さん)
「私が作った学生寮は日本のアジア文化会館を参考にした。」
曹さんが暮らしたアジア文化会館は今も残っている。
曹さんと同じ頃この寮で暮らしていた小木曽友さんは現在は寮の理事長を務めている。
今でも曹さんが来日するたびに会って交流を続けている。
この寮では今も留学生100人余りが生活している。
寮には曹さんたちが行った北海道旅行の記録が残されていた。
これからも皆とより良い友達
ここでの暮らしが曹さんの日中友好への思いの原点になっている。
(小木曽友さん)
「政治でも経済でも基礎には信頼関係がある。
 信頼関係を作った日本人をずっと彼は信じている。」
(曹其さん)
「中国と日本は隣人でよき友。
 でも今の中日関係は異常。
 若い人たちがお互いを理解し合うことは将来に良い影響を与える。」
曹さんの寄付で北京大学だけでなく中国国内のほかの4つの大学でも同様の寮の建設が進んでいる。
曹さんは若者たちによる日中友好を中国から広げていこうとしている。
寮で共に暮らしている宛如さん(23)と日本からの留学生の岩田恵実さん(20)。
ふたりが共同生活を始めて1年。
日中関係が冷え込むなかでもともに友情を深めお互いの思いを語り合ってきた。
(岩田恵実さん)
「政治上の問題は絶えないけどお互いの意見を言い合って初めて
 “中国の人はこう理解するんだ”と違いを理解し合える。」
(宛如さん)
「日本に対する印象はだいぶ変わった。
 恵実と話したことをよくクラスメイトに話す。
 日本人の反中感情がそれほど激しくなく悪いイメージばかりでないとクラスメイトに知ってほしい。」
曹さんが寮に託した日中友好の願いは若者たちに確かに引き継がれている。
(曹其さん)
「寮の若者たちは中日友好に積極的な役割を果たしてくれる。
 希望のあるところに種をまいている。
 やるべきことを自分ができることに幸せを感じている。」

コメント

シルクロード経済圏 中央アジアで市場拡大 

2014-05-22 08:00:00 | 報道/ニュース
5月13日 キャッチ!


4000メートル級の山々が見下ろすカザフスタンとの国境にある町新疆ウイグル自治区ホルゴス。
国境沿いに掲げられているのは両国首脳が握手をする写真。
現代のシルクロードが中国から中央アジアへと抜けるゲートウェイである。
中国からは果物や野菜、建設機械までさまざまなものが輸出されている。
中国政府がカザフスタンとの貿易を活発化させようと関税の手続きを簡素化した結果
ホルゴスを経由する輸出入の金額はこの5年間で8倍余りに増加。
(物流会社 責任者)
「中国からの出荷手続きが円滑になりました。
 新たな物流センターの開発でさらに積み荷の量が増えるでしょう。」
この町には中央アジア向けの輸出拡大をにらんで製造業も進出している。
5年前に生産を始めた靴下工場。
約50人の従業員が1年間に2000万足の靴下を作っている。
中央アジアでのビジネスは年々拡大し生産量は創業時の2倍に増えた。
(靴下工場 担当者)
「ここからなら1週間以内に中央アジアへ商品を届けられます。
 資金さえあれば工場は拡大していくでしょう。」
さらに中国政府はカザフスタン政府とともに両国の国境にまたがる巨大な特区を建設。
区域内では両国の人々がビザなしで行き来できるほか物の売買の税金が免除される。
人々の往来が盛んになるのを目当てにホテルやショッピングセンターも建設された。
特区の一角では中央アジア向けの商品を集めた常設の見本市会場の建設も進んでいる。
事業を進めているのは沿海部の浙江省で日用品や食器などの常設見本市を運営している企業。
これまでは沿海部から日本や東南アジア向けの商品を卸していた。
それが新たにホルゴスを拠点として中央アジアからヨーロッパまでの巨大な市場を相手に売り込みを図ろうというのである。
(見本市運営会社 投資アドバイザー)
「ホルゴスはアジア大陸の中心で多くの国への架け橋となれます。」
見本市にはすでに2000の卸売業者が入居を決めていて9月から営業を開始する。
業者の数は3年後には1万社まで増やしたいとしている。
(見本市運営会社 投資アドバイザー)
「域内に将来100万人以上が出入りし会社に大きな利益となります。
 我々は中国に“東のドバイ”を築こうとしているのです。」
一方 中央アジアの国々は中国経済との結びつきが強まることをどう受け止めているのか。
カザフスタン側では肯定的な意見が多い。
「カザフスタンは今 中国のほうを向いています。
 中国とカザフスタンの貿易は拡大しているので私たちによい影響を与えています。」
中国製品はカザフスタンの人々の生活の中に深く入り込んでいた。
ワンフロアーが5000平方メートルの広さを持つショッピングセンターにずらりと並ぶ中国製品。
婦人服のワンピースやカーディガンは日本円で1000円前後。
平均的なサラリーマンの月収が10万円程度という現地の人々にとって求め安い値段である。
「中国製品を売っている店が多いので化粧品などの日用品をよく買います。」
ただ中国製品の品質については厳しい注文も聞かれた。
このショッピングセンターの経営者はかつて中国製のおもちゃに鉛が含まれていたことを引き合いに出し
中国メーカーに対し品質の向上を求めた。
(ショッピングセンター経営者)
「私たちにとって大切な子どもたちが健康に悪い中国製のおもちゃを以前買ったことがありました。
 中国メーカーには利益のことだけでなく健康のことも考えてほしいです。」
一方 中国との取引の拡大に期待を示す企業もあった。
タイルやフローリングに使う材料を扱っている店。
この店の商品の40%以上は中国から輸入されている。
デザインなどヨーロッパからの輸入品にはない特徴がある中国製品は顧客からの評判も良く
店の売り上げは毎年20%以上増えているという。
(資材販売店 社長)
「私たちにとって中国製品は非常に重要です。
 自社ブランド製品を中国で製造して販売しようと思っています。
 売り上げを増やせるように努力していきたいです。」


コメント

働き方を変える新しいオフィス  ③“職場でイノベーションを”フィンランドの国家戦略

2014-05-21 08:00:00 | ビズ プラス
5月11日 BIZ+SUNDAY


フィンランドの首都ヘルシンキにあるベンチャー企業フューチュリス社。
従業員は200人。
ソフトウェアの開発で急成長している。
アメリカの研究機関が行った調査で“ヨーロッパの最も働き甲斐のある職場”で2年連続で選ばれた。
コミュニケーションを活性化させるオフィスづくりが評価されたのである。
たとえばコーヒースペースはあえて社内に1か所しか作らなかった。
(ヒューチュリス 人事担当 ハンノ・ネバンリンナさん)
「みんな階段を上り下りしてコーヒーを飲みに来なくてはならないが
 そのぶんコミュニケーションもたくさん生まれる。」 
社内にはフィンランドならではのサウナもある。
リラックスした雰囲気で意見交換できる。
ほかにも社員の交流を増やす仕掛けが。
(社員)
「毎日通うのが楽しいと実感できる職場だ。」
この会社が大事にしているのが社員同士の思いやりだと言う。
自分の心理状態を書き込むボードでは
社員が1週間に1度 笑顔や悲しい顔で表現する。
一人一人の状態を全員で共有し気にかける。
これも濃密なコミュニケーションを生み出す仕掛けなのである。
(ヒューチュリス 人事担当 ハンノ・ネバンリンナさん)
「コミュニケーションが迅速に簡単にできればより多くのものが得られる。
 そのほうが楽しくてやる気も生産性もあがる。」
いまフィンランドでは国を挙げて発想力豊かなベンチャー企業の育成に力を入れている。
背景にはフィンランド経済を支えてきた電子機器メーカー“NOKIA”の低迷がある。
これに代わる新たなビジネスの創出が求められている。
フィンランド第2の都市エスポーにあるアールト大学は
フィンランドで最大の国家戦略であるイノベーションを実現するために生まれた。
世界を驚かすような製品を生み出す拠点にしようと4年前に政府・企業・大学が共同で設立した。
この大学のオフィスも特徴的である。
企業と連携しビジネスの種をすぐに実用化できる環境づくりにこだわっている。
学内の何処でも誰がどんな開発をしているのか見えるように設計。
創作意欲を互いに刺激し合う。
アイデアが浮かんだらすぐに形にできるよう工房もいたるところにある。
こうした取り組みは注目を集め
国内のみならずアメリカや日本、ドイツの企業からも提携の申し出が相次いでいる。
誰でも自由に出入りできることもこの大学の大きな特徴である。
開かれた空間こそが新しいものを生み出すと考えている。
(アールト大学 空間デザイン責任者 エサ・サンタマキさん)
「さまざまな人が同じ場所にいることが新たなものを生み出すうえで大切。
 技術者がデザイナーに恋をしてその逆もある。
 これが本当に重要。」
この大学で学んだプル・ターニラさんが開発したのは“投げるマイク”。
広い公園会場などで質問者にマイクを投げて渡すというユニークなアイデア。
大企業の目に留まりこの秋から売り出す計画である。
(アールト大学で企業 プル・ターニラさん)
「ここではみんな膨大な時間を使って何かを生み出そうとしている。
 その雰囲気と経験が大事。」
開かれた人と人との交流が新たなビジネスを生み出す。
その仕組みづくりがフィンランドで着実に進んでいる。

  
コメント

働き方変える新しいオフィス ②大企業のオフィス改革“組織の壁を乗り越えろ”

2014-05-20 08:00:00 | ビズ プラス
5月11日 BIZ+SUNDAY


社員数千人を超える大企業でもオフィス改革が始まっている。
キリングループ本社。
主に3つのフロアで従業員3000人が働いている。
去年5月 グループの連携を抜本的に見直すため一つのビルの本社機能を一気に集約した。
キリンビール、キリンビバレッジ、小岩井乳業など15以上のグループで構成されているキリングループ。
以前はそれぞれの会社が都内に分散していた。
このため会議などの場合どこかの会社に出向く必要があり
結果的に連携が取りづらくなっていた。
(グループ本社移転プロジェクト 井上宏リーダー)
「会議に呼ぶ 呼ばれるという関係。
 そこでもグループの中で壁が出来てしまう。
 人的交流 開発のスピード 情報の交換
 こういうものが非常に遅かった。」
そこでグループ企業を東京 中野に集結させた。
連携を強める工夫はオフィス内にも。
それぞれの会社がかたまって入るのではなく会社の垣根を取り払い
マーケティングはマーケティング
営業は営業と
まとめて配置したのである。
(キリンビール社員)
「ずっとビールの会社にいるとお酒のことは詳しくなるが
 視野が狭くなっている部分もあるので
 全く関係のないビバレッジやワインの人から意見をもらいながら
 商品開発や広告を進めていくこともこれまであった。」
連携を強化するためのもうひとつの仕掛けは3つのフロアーの真ん中にある階段。
キリングループ専用にわざわざ作った。
社員が行き来するこの階段の周りには打ち合わせスペース。
隣の会社でどんなプロジェクトが進んでいるのか日々意識することができる。
(キリンビバレッジ社員)
「自分たちのブランドも当然ですが
 ほかのチームがどんなことを今進めているのかわかるので
 お互いに情報を助け合えたりする部分もある。」
そんな中で生まれたのが今年発売されたプラズマ乳酸菌。
グループ内の会社が発見した乳酸菌を別の会社が飲料として商品開発したもので
売れ行きは好調だと言う。
(グループ本社移転プロジェクト 井上宏リーダー)
「情報の還流が非常に早くなった。
 それから知恵の共有が起こっている。
 お互いが持っているお客様に対する想いとかそういうものをぶつけ合う
 オフィスでたくさんの刺激がある
 そんなオフィスを作っていきたい。」
コメント

働き方変える新しいオフィス ①“アイデアが生まれる”オフィス改革

2014-05-19 11:45:00 | ビズ プラス
5月11日 BIZ+SUNDAY


供給が予定されている都内のオフィスビルの延べ床面積は
わずか5年で526万㎡(東京ドーム112個分)にものぼる。
こうしたなか続々と誕生しているのが新しいオフィスである。
これまでのイメージとは異なるこれらのオフィスは
単なる働く場所ではなく新しいアイデアを生み出す場所としてとらえなおそうという動きが進んでいる。

東京港区にあるベンチャー企業イデアインターナショナル。
従業員約190人。
独自にデザインしたインテリア雑貨などを手がけ年間50億円を売り上げている。
カフェのような会議室。
オープンな雰囲気が気軽な会話を生み新たなアイデアにつながることも多いという。
「通りがかった人を呼んで
 これについてどう思いますか?とか簡単にヒアリングできたり
 人が通るスペースなのでそういうことはできる。
このオフィスでひときわ目を引くのが玄関にある大きなキッチン。
新製品を使ったレシピづくり。
通りすがりの社員や来訪者が自然に集まり会話が始まる。
キッチンを囲む会話から次々とアイデア商品が生まれている。
USBにつないで使える卓上加湿器は累計7万個。
音楽で踊るぬいぐるみは累計10万個を売り上げる大ヒットとなった。
(イデアインターナショナル 橋本雅治社長)
「いかに社員に創造性を持ってもらえるかを考えて作った空間。
 無機質なオフィスの中からはなかなかアイデアは生まれにくいと思う。
 コミュニケーションを取りやすい空間にすることによって
 みんなとコミュニケーションが簡単に取れてどんどん新しいアイデアを生み出していく。」

コメント

アジサイの青とサムライ・ブルー 

2014-05-18 08:15:00 | 編集手帳
5月13日 編集手帳


庭のない暮らしが長く、
花や木に疎い。
ひとつ教わっては、
そのたびに感心している。
〈そっちのアジサイ。
 さびた 釘(くぎ)をまわりにおいとくと、
 きれいな青い花が咲くよ〉。

パトリシア・コーンウェルの推理小説『異邦人』(講談社文庫)の一節である。
そういえば遠い昔、
ナスの色が良くなるからと祖母がぬか床に釘を入れていたのを思い出す。
色素と金属イオンがどうにかなって鮮やかな青色をつくり出す理屈は、
アジサイの場合と同じなのだろう。

沖縄や鹿児島県奄美地方はすでに梅雨入りした。
列島から空の青がしばし遠ざかり、
アジサイの青が目にしみる季節も近い。

と、
いつもならばシュンとする頃合いだが、
サッカーのワールドカップ(W杯)ブラジル大会が待つ今年は梅雨の到来がちょっと待ち遠しくもある。
日本代表23選手がきのう発表された。

〈迷うあじさい七色変わる、
 色が定まりゃ花が散る〉。
人生のような花である。
顧みればこの身も、
長い勤め人暮らしで上から 叩(たた)かれ慣れた1本の 錆(さ)び釘に違いない。
テレビ桟敷に刺さり、
「サムライ・ブルー」の鮮やかな発色に胸躍らす日も遠からじ。
コメント

アリー my Love フィフス・シーズン

2014-05-17 19:15:00 | DVD
    

原題:Ally McBeal Season 5 vol.6
製作年:2002年
製作国:アメリカ
ジャンル:海外TVドラマ
製作総指揮:デビッド・E・ケリー
出演:キャリスタ・フロックハート、ピーター・マクニコル、グレッグ・ジャーマン、
   ジェーン・クラコウスキー、ポーシャ・デ・ロッシ、ジョン・ボン・ジョヴィ、クリスティーナ・リッチ

ボストンの法律事務所で働く、
腕利きの女性弁護士アリー・マクビール。
彼女が仕事や恋に励む姿をコミカルに描いた、
全米で大人気のTVシリーズのファイナル・シーズン。
コメント