9月17日 キャッチ!
いまアメリカでは折り紙が遊びにとどまらず
その繊細な技術が様々な業界で生かされている。
ニューヨーク市ブルックリンでいま人気の習い事の教室がある。
5歳から13歳の子どもたちが熱心に学んでいるのは日本の折り紙。
平面から立体的なものを作りだす折り紙は子どもの想像力や集中力を高めると保護者の関心が集まっている。
(子ども)
「何でも作れるよ。」
「趣味だし好きだね。」
(母親)
「忍耐力がつき再挑戦することを学べるわ。」
日本で古くから親しまれてきた折り紙。
教育業界だけでなく様々な分野でその細やかな技術に注目が集まっている。
デザイン業界が注目するのは折り紙が生み出す斬新な形。
生地を折りたたみ部品を組み込んでいくことで継ぎ目のないシンプルな椅子を開発中のデザイナー。
木の板と布を組み合わせ折り目をつけた商品。
(デザイナー インシー・ジョウさん)
「このバッグはこうして開いて肩からかけることが出来ます。」
平面から生まれる複雑な形の立体
この変化が折り紙にしかない魅力を生むと言う。
(デザイナー インシー・ジョウさん)
「折り紙には平面から立体に変わるところに美しさがあります。
使っていても楽しいし形も変えられます。」
脚光を浴びる折り紙の技術。
いま最先端のテクノロジーの世界で応用が進んでいる。
取り組んでいるのは折り紙の技術を使ったロボットの小型化。
1,7センチ四方のプラスチックでできたシートを熱すると素材の性質によって変形しロボットになる。
部品は無く構造も材料もきわめてシンプル。
このロボットに磁石を乗せ磁力によるリモートコントロールを行うと
坂を上ったり
障害物を取り除いて進むこともできる。
このロボットは将来はさらに数10分の1の大きさに小型化し人間の体内で薬を運ぶ役目を担う計画である。
(マサチューセッツ工科大学 宮下修平研究員)
「折り紙はドライバーやねじなどを使わず3次元の形状を実現できる手段で
ロボットの小型化を目指した時にとても有効な手段です。
基本的なパターンは山折り谷折りしかないが
その組み合わせでできる3次元形状の多様さは驚きです。
さらに勉強を進めていきたい。」
折り紙の技術を専門的に研究する動きも起きている。
ユタ州の研究室では折り紙を数学的に解析し工学の分野に応用しようとしている。
研究員は日々伝統的な折り紙の折り方を試している。
既存の学問では思いつかなかった変形の方法が秘められていると言う。
たとえば折り紙で上下に開閉する動きを分析し医療器具に応用しようとしている。
「細くして体に入れ
中で変化させ
物をつかめるようになるんだ。」
NASAアメリカ航空宇宙局もこの大学の研究に注目している。
共同で開発している筒状の物は
端を引っ張って広げると
開いた時の直径は畳んだ時の9倍である。
効率よく宇宙に運ぶことが出来る。
使用が検討されているのは宇宙船の動力源となる太陽光パネル。
伝統的な折り紙をもとに数学的な解析祖加えて考案されたこのシート。
10年後の実用化を目指していると言う。
(ブリガムヤング大学 シャノン・ザーベル研究員)
「折り紙から学ぶことはたくさんあると思います。
元来 美しいものだけど工学的に見てとても面白いわ。」
長い歴史の中で培われてきた折り紙の独創的な技。
そこに科学の目が加わり
いま世界
そして宇宙にも羽ばたこうとしている。
歴史を紐解いてみると日本の折り紙は戦後間もなくアメリカに紹介されて
その後着々と支持層を増やしてきている。
今年6月にはニューヨークで様々な折り紙のアート作品を集めた展示会が開かれた。
独創的な作品から日本の伝統的な作品まで展示され
アメリカ以外の国のアーティストの作品も出展された。
アメリカでは寿司、カラオケ、布団といった英語として定着した日本語はたくさんあるが
「ORIGAMI」はひとつの単語として認識されるようになってきている。
学問としての折り紙が急速に進んでいる。
2000年ごろまでは制作者の感性と感覚によって生み出されていた折り紙が
理論的に分析するという動きが広まってきた。
折り紙の良さは折り目を入れることで軽いのに強くできることに加えて
広げたり伸び縮みしたりすることが可能な点があげられる。
そこに軍事面や産業面での応用の可能性を見出したアメリカでは
10年ほど前から政府が資金を出して研究がなされるようになっている。
8月に東京で折り紙の国際会議が開かれたが
参加者約300人のうち100人近くがアメリカからでほぼ日本の研究者と同じ数で関心の高さがうかがえる。
折り紙の技術はロボットや宇宙開発だけでなく
住宅や自動車など様々な分野で応用が期待されている。