7月9日 NHK海外ネットワーク
アフリカに新しい国南スーダンが誕生した。
国旗の三角の青い部分はナイル川、黄色の星は団結を現している。
9日午前0時をもってアフリカ54番目の独立国となった。
スーダンは6年前200万人以上の犠牲者がでた長い内戦に終止符をうった。
アラブ系の住民イスラム教徒が住む北部に対して、
南部はアフリカ系のキリスト教徒が多く、宗教をはじめさまざまな差別を受けてきた。
ビルが立ち並ぶ北部と対照的に、南部は経済的にも大きく立ち遅れている。
和平合意を受けて今年1月独立の是非を問う住民投票が行なわれた結果、
南部の住民たちは長年の悲願だった分離独立を勝ち取った。
しかし南スーダンの国づくりはけっして平坦な道のりではない。
南スーダンの首都ジュバ、人口約25万人。
ウガンダやコンゴ民主共和国との国境に近い交通の要衝である。
首都ジュバは幹線道路を一歩外れると舗装道路はほとんど無い状態。
国土は日本の約2倍ながら舗装道路は約60キロしかない。
食料や日用品は周辺の国々に依存しているが物資を運ぶのも容易ではない。
新しい国への期待が高まる南スーダン。
地元新聞紙ジュバポスト
「私たちは長い歴史のなかで多くの苦難を体験してきた。
今はすばらしく大切なときだと南スーダンの仲間に伝えたい。」
しかしインフラの整備が立ち遅れた南スーダンで新聞の発行は簡単なことではない。
水道も電機も整備されておらず、
小型発電機で記事を書くパソコンの電力をかろうじて確保している。
ジュバにはじゅうぶんな印刷工場が無く、
1200キロ離れた北部のハルツームで印刷し飛行機で運んでいる。
ジュバポスト マイケル・コマ編集長
「独立後はウガンダかケニアでの印刷を検討している。
印刷が私たちの最大の問題。必ず乗り越えてみせる。」
「南スーダン政府には言論の自由を認めたがらない人がいる。汚職もある。
言論の自由が無ければ国の発展は無い。
民主主義の記事を書くことで国づくりに貢献したい。」
独立を勝ち得たものの果たして自立していけるのか。
スーダンの真実を伝えようとするジャーナリストにとってもこれからが試練のときである。
現地の人は誰もが、自由になれてうれしいと答える。
イギリスによる統治のあと、独立後も北の政府から弾圧や迫害を受け、
2級市民として扱われてきたと多くの人が感じてきたからである。
またスーダンは内戦や政治の腐敗による行政機能がマヒした失敗国家とみなされ、
地域の不安定要因になってきた。
それだけに南部が平和的に独立を果たしたことはスーダンばかりでなく、
この地域全体の安定につながるという期待が高まっている。
長い内戦で国土は疲弊し、独立後も国際社会の支援なしにはやっていけない。
政府の組織、国家運営のための制度も一からつくらなくてはならない。
インフラや法制度の整備とともに、人材の育成も急務。
紛争で多くの人材が失われ祖国を離れた人は数百万人にのぼるといわれている。
報道機関がその役割を十分果たせるような環境づくりも欠かせない。
国づくりのためにさまざまな情報を国民に正確に伝え、
選挙など国民の政治への参加を促すことが必要だからである。
国の将来を担う若者たちの教育も極めて重要である。
多くの国民が内戦で教育の機会を奪われ、教育の数も圧倒的に不足している。
内戦でスーダンの小学校の校舎は壊滅的な打撃を受けた。
今も半数の子供が小学校に通っていない。
教員は3万5000人のうち90パーセント近くが無資格。
南スーダン教育相
「国づくりには技能・知識を持った人材が必要。
こうした人材を育てるのが教育。」
先月から“教員の資質向上”のとりくみが始まった。
スーダンではほとんどの人が教育を受けておらず、
15歳以上の70パーセントが読み書きが出来ない。
女性教員は自宅の戻っても、
新しい国を担う世代を自分の手で育てたいという信念から勉強を欠かさず続けている。
女性教員
「この国を支えていく若い人たちのために私たちが十分な教育をつくらなければ。」
新しい邦づくりの礎となる教育。
明るい未来を信じて南スーダンの人々の取り組みが続く。
歳出面では軍事費が歳出の半分を占めていて教育などに予算がまわりにくい状況。
スーダンはアフリカ有数の産油国でその8割は南部で生産されている。
パイプラインを通じて北部の港から輸出されている。
ともに国の財源を石油収入に大きく依存するふたつの国家が、
石油収入をどう配分するのかまだ決まっていない。
豊富な油田地代であるアビエイ地方をめぐっては南北双方が領有権を主張している。
南の独立を前に今年5月には北がアビエイ地方に侵攻するなど紛争の火種となっている。
また南スーダンにはさまざまな民族がいて、
政府や軍の要職を占める多数派の民族に対して他民族からの反発が強まっている。
新国家は困難な課題を数多く抱えている。
豊富な資源をめぐってアメリカと中国の駆け引きが活発になっている。
この地域に再び緊張を呼び起こさないためにも国際社会の長期的な支援が必要である。
日本も人材の育成と行った得意な分野での関与を積極的に続けるべきである。