6月3日 国際報道2019
(当時のABCニュース)
「中国政府は天安門広場の学生たちを鎮圧するよう命じました。」
(当時の英BBCニュース)
「何時間も銃撃が続いたあと私は軍の部隊と直面しています。
群衆は“殺戮をやめろ!政府を倒せ”と叫んでいます。」
流血の惨事に衝撃を受けた国際社会。
当時どのように天安門事件に対処したのか。
外交文書から明らかになってきている。
イギリス国立公文書館。
「こちらが1989年の天安門事件に関する外務省の機密ファイルです。」
北京のイギリス大使館から日々 本国に送られてきていた現地の情報。
そこには政権内部からリークされた情報として
デモ鎮圧に向けた強い意志を示す最高実力者 鄧小平氏の言葉とされるものが記されていた。
200人が死ねば中国は20年の安定を得られるだろう
こうした中国の強硬な姿勢をアメリカのブッシュ大統領をはじめ各国の首脳は一斉に非難した。
(アメリカ 当時 ブッシュ大統領)
「わが国は武力行使を強く非難する。」
ところが事件直後
ブッシュ大統領とイギリスのサッチャー首相(当時)の間で交わされた電話記には
中国との関係悪化を望まない姿勢が透けて見える。
(ブッシュ大統領)
このままアメリカが中国政府との関係を維持できるよう望んでいる
(サッチャー首相)
大統領に同意します
中国当局との外交チャンネルは維持し続ける必要があります
イギリスは中国との対応に苦慮していた国の1つである。
当時 北京の大使館で情報収集にあたっていた 元在中国イギリス大使館二等書記官 ショーン・リオーダン氏。
イギリスは中国との関係悪化を望まない事情を抱えていたという。
それは8年後に控えた香港の返還だった。
(元在中国イギリス大使館 二等書記官 ショーン・リオーダン氏)
「私たちの関心は安定した斬新的な進展であり
香港に不安定な状況をもたらすような劇的な変化は望んでいなかった。」
本国で対中政策を担っていた元イギリス外務省共闘局長 アンソニー・ウィルミントン氏。
中国政府を刺激しないようバランスをとっていたと証言する。
(餅イギリス外務省 極東局長 アンソニー・ウィルミントン氏)
「サッチャー首相とブッシュ大統領は
長期的に中国を懲らしめ続けたり
避難し続けたり
制裁措置を科すことは生産的だはないと考えていた。」
一方アメリカが重視したのは中国から得られる経済利益だった。
かつての中国大使で
その後国務次官補として対中政策を担ったウィンストン・ロード氏。
中国がとる改革開放路線の維持を望んでいたという。
(元在中国アメリカ大使 ウィンストン・ロード氏)
「すでに各国は中国との経済的な結びつきが大きく
孤立させない方が良いと考えた。」
各国の思惑が錯綜するなか迎えた事件翌月のサミット 先進国首脳会議。
中国に対し武器の取引禁止などの制裁を科し
厳しい姿勢を示した。
ところが舞台裏では違う動きが起きていたことが
サミットの5日後にブッシュ大統領が鄧小平氏に送っていた書簡に記されていた。
親愛なる友 鄧小平殿
サミットの共同宣言の草案に
中国を過度に非難する文言がありましたが
アメリカと日本が取り除きました
今は厳しい時期かもしれませんが
米中の明るい未来に向け
ともに前進しましょう
その後 驚異的なスピードで発展を遂げた中国。
一方で民主化が進まないままである。
当時の外交官たちは“経済発展が民主化をもたらす”と考えていたという。
(元在中国アメリカ大使 ウィンストン・ロード氏)
「通常 国がある程度 経済的に発展すれば中産階級が生まれ
彼らが政治的自習を要求し民主主義が導入される。
私たちも中国がそうなることを期待したのだが・・・。」
(元イギリス外務省 極東局長 アンソニー・ウィルミントン氏)
「中国が最終的にどこへ行くのか
これから新たなひずみが生まれ政治改革につながるのか
判断が非常に難しい。」