2021年5月13日 NHKBS1「キャッチ!世界のトップニュース」
アメリカは世界有数の国際養子縁組大国で
これまで27万人以上の養子を迎えてきた。
その中で最も多いのが中国からである。
これまでに8万人以上と全体の約30%を占める。
中国から来た養子の多くは“自分は何者?”という疑問を抱えているという。
23年前に中国から養子を迎え入れたマッカーサーさん夫妻。
晩婚で子どもに恵まれなかったふたり。
中国からの養子を選んだのは
アメリカでは年齢制限があり養子縁組が難しかったからである。
娘のリューリンさんは25歳となり
いまは独立して離れて暮らしている。
(娘 リューリンさん)
「子どものころ中国のことはほとんど意識していませんでした。
成長するにつれて考えるようになりました。」
16年前
(娘 リューリンさん)
「9歳。
小学校に通っています。
飛行機で来たことしか覚えていないの。」
白人とアジア人という人種を超えた家族。
リューリンさんが恥ずかしがったこともあったという。
(アニータ・マッカーサーさん)
「“友だちに出身を教えないで”と言われましたが
“見ればわかるから無理よ”と言いました。」
(ビル・マッカーサーさん)
「何も隠さないと決めていました。」
愛情をかけられて育ったリューリンさん。
アメリカで育ちながら中国にルーツがあることに複雑な思いを抱えていた。
高校生の時に書いた作文にそのことが記されていた。
母に連れられかつて暮らしていた中国の孤児院を訪れた時のことである。
成長して戻ってきてくれたと大歓迎してくれた孤児院の人々。
しかし自分は戸惑いしか感じられず
目を合わせないよう下を見続けていたという。
自分のアイデンティティーは何か。
悩んだ時期もあったが
両親が多様な文化を尊重してくれたことで自信を持って向き合えるようになった。
(娘 リューリンさん)
「中国とアメリカ
どちらにも属さず
受け入れられない間隔はありました。
どちらかに自分を合わせる必要はなく
自分自身であればいいのです。」
自分の子どもはなぜ養子に出されたのか。
我が子の生い立ちを調べ続ける親もいる。
スタイさんは中国から3人の養子を迎え中国出身の妻と暮らしている。
中国に通って手に入れた新聞を手掛かりに娘の生い立ちを調べてきた。
(スタイさん)
「預けられた孤児院や名前 性別や生年月日などが書いてあります。
1999年から中国全土の情報を集めています。」
孤児院に保護された子どもの性別
発見された日
健康状態などが記されている。
一定期間内に親が名乗り出なければ養子に出されるのである。
20年かけてデータベース化した情報は約7万人分。
これをもとに100組近い生みの親を特定してきた。
そこまで生い立ちにこだわる理由。
きっかけは娘たちから繰り返し聞かれた質問だった。
(娘)
「生みの親がなぜ手放したのか知りたかった。
私たちの多くが捨てられたと思っています。」
スタイさんは中国の孤児院を訪ね
娘を保護したという女性に聴き取りを行なった。
「拾われたのは何時ごろですか?」
「午前8時ごろです。」
(スタイさん)
「娘の服装や哺乳瓶の話を聞き
生い立ちが分かった気になりました。」
ところが数年後あるニュースを目にすることになる。
中国湖南省の孤児院が
乳幼児を集めるため届け出た人にお金を払っていたという大規模な事件である。
海外に養子に出せば孤児院にお金が入るからだった。
娘は売られていたのではないか。
不安を感じたスタイさんが孤児院にあらためて事情を聴くと
捨てられていたという当初の説明が作り話だったことが分かったのである。
(スタイさん)
「“ごめんなさい 私たちが見つけたんじゃない”と言いました。
でたらめだったのです。
問い詰めると“嘘を一度つくと続けるしかない”と言いました。」
自分たちのようなケースは他にもあるのではないか。
集めたデータをもとに調べると
一人っ子政策が理由で
親が子どもを泣く泣く手放したり地元の当局が取り上げたりするケースが少なくなかった。
(スタイさん)
「中国からの養子を迎えたのは恵まれない子を救おうと思ったからでした。
それが真実ではないかもしれないと知り
絶望的な気持ちになりました。
同じような家族の痛みを和らげ平穏に暮らせる日をもたらしたい。」
2021年5月12日 NHK「おはよう日本」
岡山県備前長船の地は古くから日本刀の産地として知られているが
いま本物の日本刀を新たに作ろうという人は少なく
職人への注文は減っている。
そうしたなか
これまでにない注文を受けて新たな仕事に挑戦する職人も出てきた。
ねっとりとした鮮やかな青色。
色を付けた漆である。
日本刀をおさめる鞘に塗ると強度と美しさを与える。
岸野さん(43)は鞘に色を付ける専門の職人で
塗師(ぬし)と呼ばれる。
岸野さんが活動する備前おさふね刀剣の里。
日本刀は複数の職人の分業で作られるため
職人ごとに工房が設けられ
それぞれで注文を受けている。
岸野さんは去年これまでにない注文を受け新たな挑戦に取り組んできた。
(塗師 岸野さん)
「初めてです。
喜んでもらえるこしらえに作っていきたい。」
その注文は東京に住むフランス人の男性からだった。
新作の短刀をおさめる鞘に
伝統的な日本の波の模様や激しい波の模様を描いて欲しいというものだった。
男性は去年 期間限定で公開された
国宝の日本刀「山鳥毛(さんちょうもう)」を見るために備前長船を訪れ
本物の日本刀に魅了され注文したという。
日本刀を求める人が少なくなるなか
岸野さんにとって外国人からの注文も家紋以外の独自のデザインの注文も初めてだった。
男性がこだわったのが鞘の色。
一般的な黒や赤でなく
鮮やかな青を望んでいた。
岸野さんは顔料を濃くしたりうすくしたり思考錯誤して男性が望む青を作り上げた。
その青の漆を何度も塗っては乾かす作業をおよそ10回繰り返し
1か月かけてさやの色塗りを終えた。
作業開始から3か月後
いよいよ模様を描く作業を始めた。
細い筆を使い
2ミリほどの線で丁寧に描き込んでいく。
(塗師 岸野さん)
「バランスとるのが大変。
次につなげる線をどう均一に描くか。
本当に“失敗しないように”というだけ。」
注文のデザインを鞘の大きさに合わせて描き直し
それを見ながら描いていく。
この作業も描いては乾かしを3度繰り返し2週間を要した。
(塗師 岸野さん)
「細かい仕事
目もかすれてきたので大変だが完成させたい。」
作業開始から4か月後ようやく鞘が完成した。
激しい波は5つ連続で
伝統の波も男性のデッサンどうりに表現された。
鞘の色は一見暗く見えるが
角度を変えてみると
落ち着いた深い青に仕上がった。
(塗師 岸野さん)
「緊張もありわくわくしながらできた。
色を作るのが大変だった。
模様のバランス考えるのが大変だった。
客からこういう模様を入れてほしいという注文があれば
応えていける職人になりたい。」
2021年5月13日 読売新聞「編集手帳」
フランスの作家ルナールが軽妙な筆致で動植物を描いた短文集『博物誌』は、
岸田国士の翻訳で新潮社から文庫版が出ている。
蝶――二つ折りの恋文が、
花の番地を捜している。
先週この一文に触れたところ、
問い合わせをもらったので改めて書籍を紹介させていただく。
それにかこつけ、
かねて書きたくてうずうずしていた文章を引く。
花――今日は日が照るかしら
向日葵(ひまわり)――ええ、あたしさえその気になれば
如露(じょうろ)――そうは行くめえ。
おいらの料簡ひとつで、
雨が降るんだ(略)
薔薇(ばら)――まあ、なんてひどい風!
添え木――わしが付いている。
「庭のなか」と題する項にある.
九州南部が平年より19日も早く梅雨入りした。
晴れたり曇ったり、
ときに局地的な大雨を降らす季節が早めのダッシュを決めたらしい。
風水害の心配ばかりか、
今週の末から全国各地で気温が急上昇するという。
熱中症への警戒が欠かせなくなる。
ご家族や近所で、
毎日のように天気の話をされてはいかがだろう。
「庭のなか」の花々や道具の気兼ねのない語らいは、
心配を分け合うようすと解せないこともない。
2021年5月11日 NHKBS1「キャッチ!世界のトップニュース」
タラ科の魚 スケソウダラ。
スケソウダラ漁はロシア極東で盛んに行なわれているが
新型コロナウィルスの感染拡大の影響を受けて
ロシアの漁業者は苦境に立たされている。
日本海やオホーツク海をはじめ豊かな漁場を抱えるロシア極東。
漁業は基幹産業のひとつである。
主力はスケソウダラ。
世界でダントツの水揚げ量を誇っている。
ロシアでとれるスケソウダラの9割がロシア極東産である。
そのスケソウダラが新型コロナウィルスの感染拡大の影響を受け
いま苦境に立たされている。
冷凍室には中国へ輸出されるはずのスケソウダラが高く積み上げられている。
(冷凍倉庫の社長)
「これだけの量と数はめったにないと言えます。」
9,000トンを収容できる倉庫に空きはない。
なぜ輸出されずにロシア国内に留め置かれているのか。
ロシアでとれるスケソウダラは
水揚げされるとほとんどの場合 洋上で頭部と内臓を取り除き冷凍する。
その7割はそのまま中国へ運ばれる。
そして中国の工場で加工され
おもにヨーロッパに輸出されるのである。
しかし感染拡大で中国側は輸入品の検疫を強化。
いまではほぼすべての魚の受け入れを停止している。
ロシア側は受け入れを再開するよう求めているが
見通しは立っていない。
50年にわたって漁業に携わってきたチェンスキーさん。
今年も乗組員30人がスケソウダラ漁に出た。
(漁業者 チェンスキーさん)
「しっかり準備をして予定どおり漁に出ましたが
洋上にいる時に中国が国境を封鎖したと知りました。」
とった魚をどうにかして売るしかない。
チェンスキーさんはロシア国内の市場に出すことにした。
しかし販売価格は安く
2,000万円近くの損失が出たという。
(漁業者 チェンスキーさん)
「スケソウダラの価格は一気に下落し
大きな赤字を出してしまいました。」
漁業者を救おうと漁業組合も動き出している。
60年の長い歴史を誇る地元の漁業組合の代表 ブルコワさん。
これまでに経験のない困難な状況について聞き取りを行っている。
漁を終えて帰ってきた船の乗組員はこの先の生活に対する不安を訴えた。
(漁業組合代表 ブルコワさん)
「売り先がなく厳しい状況ですが
みなさんは給料をもらえていますか?」
(乗組員)
「みな給料に満足していません。」
ロシア極東の漁業に大きな影響を及ぼしている中国の受け入れ停止。
ブルコワさんは
今こそ中国に依存した漁業から脱却するべきだと考えている。
(漁業組合代表 ブルコワさん)
「私たちは今回起きたことを教訓に
加工施設を建設して製品を生産し冷凍施設も建設していきたいです。」
2021年5月11日 読売新聞「編集手帳」
道を歩けばスズメに会った時代の作品だろう。
俳人の藤井紫影が描写している。
<子雀の一尺飛んで親を見る>
スズメの子が親と暮らすのは10日ほどで、
その後はスズメの子だけで群れを作って旅に出るという。
そんな習性を知ってからというもの、
一茶の句をふしぎに思うようになった。
<雀の子そこのけそこのけお馬が通る>。
親がそばにいる光景を一茶も目の当たりにしたのだろうか。
短い子育て期間にもかかわらず、
そこに目を向けている。
かつてはそれだけ、
生活の周りにたくさんのスズメがいたということだろう。
宮沢賢治の詩「小岩井農場」に鳥にちなむ色の名が出てくる。
柔らかな山肌は「ひわいろ」、
遅咲きの桜の花は「鴇いろ」、
ゆるやかに傾斜する畑は「とびいろ」――
「鶸(ひわ)色」は明るい黄緑、
「鴇(とき)色」は淡い紅色、
「鳶(とび)色」は茶褐色。
小欄は辞書に頼らないと詩句の像を結べなかった。
ちなみに雀色は夕暮れ時の形容だが、
今や死語に近い。
野鳥への親しみ方が変わったからだろう。
愛鳥週間(10~16日)を迎えた。
鳥たちとの距離がこんなに違うと、
昔の俳人や詩人が言っているような。
2021年5月10日 読売新聞「編集手帳」
種まき爺(じい)さんとか蛇の口とか、
ユニークな名前が楽しい。
この季節、
山の斜面に見られる雪形(ゆきがた)の話である。
岩肌と残雪とが織りなす美しい文様には雪絵、
残雪絵の呼び名もある。
春の遅い雪国では古来、
農耕期や豊凶を知らせる農事暦として伝承されてきた。
一説によれば数は数百に上る。
ちなみに「爺さん」は東北の鳥海山など、
口を開けた大蛇は中央アルプス・麦草岳に現れる。
このところ、
あちこちの地域版が雪形と田植えの到来を報じている。
岐阜の笠ヶ岳、
白馬の雪形は例年より3週間ほど早く姿を見せた後、
積雪で一度消えたらしい。
雪解けは早かったけれど。
気候が落ち着いてくれれば…。
緊急や非常といった物々しい文言が行き交う昨今、
なに変わらぬ様子で空の機嫌を案じる農家の言葉にほっと一息ついた。
休日の田植え体験でつかの間、
コロナを忘れた子供もいたようだ。
縄文の昔から体に刻まれただろう農耕のリズムを思う。
多くの雪形が消え去る梅雨の時期に、
長野の安曇野から蝶ヶ岳を眺めると、
白い羽を広げたチョウが拝めるそうだ。
その頃、
幾分でも晴れ間が広がっていると信じたい。
2021年5月10日 NHK「おはよう日本」
京都市にあるスタートアップ企業。
この会社の中から世界の名所が見える。
壁にかかった額縁。
“スマート窓”と呼ばれる商品で世界の観光名所を映し出す。
現場音声を収録することで臨場感を出している。
本体価格は4万9,280円。
月額980円で1,200種類以上の景色をダウンロード可能。
3台連結すれば横長で映し出すこともできる。
海外旅行に行けなくても自宅や職場で気分だけでも味わいたいという人の需要をつかんで
約1年で7,500台販売した。
(アトモフ CEO)
「自分の好きな風景 旅先 思い出の旅行場所に行ける。
気分が切りかえられる。
みんな広い世界に行ってほしいと思うので
そのきっかけになれば。」
一方 携帯電話の大手は
国内に新たな観光地を生み出そうというビジネスに取り組み始めている。
AIを活用して世界の名所と日本の観光地の画像を比べて
その構図などをもとにどれだけ似ているか類似度を数値化する。
1.0=満点
0.7以上で“似ている”としている。
たとえば“東洋のナイアガラ”といわれる大分県豊後大野市の原尻の滝。
その類似度はというと・・・
AIは0.875071。
ノルウェーのシェラーグボルテンと新潟県佐渡の弁慶のはさみ岩を比べてみると
類似度は0.7。
この取り組みのきっかけは
兵庫県朝来市にある竹田城跡が“日本のマチュピチュ”だと話題になって観光客が急増したことである。
この会社はすでに全国各地にマチュピチュに似た景色を見つけている。
将来的にこうした世界の名所とちょっと似ている景色を探し出すサービスなどを提供したいと考えている。
(NTTドコモ 黒須テック開発部)
「SNSとかに画像をアップロードして楽しむというのが
ひとつの観光の楽しみ方になっている。
似ているだけとはいえ
それだけ魅力はあるのかなと確信しています。」
2021年5月10日 NHKBS1「キャッチ!世界のトップニュース」
中国共産党は今年7月に創立100年の節目を迎える。
それを前に共産党の歴史にゆかりのある革命聖地が賑わいを見せている。
“長征”と呼ばれる大規模な行軍が始まった江西省の瑞金や
長征の終着点で革命の拠点になった陝西省の延安など
革命聖地は中国全土に広がっている。
また共産党内部では
革命の歴史を学び直そうという動きが活発化している。
観光客が行き交う通りで合唱を披露する人たち。
歌うのは「建国の父」と呼ばれる毛沢東をたたえる革命歌である。
そろいの衣装はかつての共産党軍 紅軍の軍服を模した服装。(コーラス隊員)
「革命歌を歌うと気分がすっきりします。」
ここは中国内陸部貴州省の遵義。
1935年にここで開かれた共産党の会議で毛沢東が指導権を確立したとされる場所で
代表的な革命聖地である。
中国政府はこうした共産党ゆかりの史跡をたどる旅行を
赤い旅行(紅色旅游)と名付けて推進。
共産党100年となる今年は赤い旅行の宣伝を進め
全国各地の革命聖地が大勢の観光客でにぎわっている。
(観光客)
「この機会に昔のことを思い出したいです。」
「大先輩たちの立派な業績をしのびたいんです。」
中国共産党は1921年7月に創立された。
毛沢東が指導権を確立した後
蒋介石率いる国民党との激しい内戦に勝利。
1949年に中華人民共和国を建国した。
毛沢東の「革命精神」に学べと
繰り返し強調しているのが習近平国家主席である。
(北京 2016年7月 習近平国家主席)
「我々は共産党創立時の奮闘精神を永遠に持ち続けなければならない。
全党員が絶対に初心を忘れてはならない。」
習主席は今年2月
全国の党員に対して
あらためて党の歴史を学ぶよう指示。
北京の書店には党の歴史に関わる書籍を集めたコーナーもお目見えした。
中国各地ではいま党の歴史を学ぶ学習運動が連日行われている。
党の学習運動とはどのようなものか。
代表的な革命聖地のひとつ
内陸部江西省井岡山。
1927年に毛沢東が初めて革命の拠点を置いたとされる場所である。
この日 党の幹部たちを集めた学習活動が行われていた。
(講師)
「大衆に頼って勝利を求めましょう。」
講師が強調していたのは毛沢東の革命精神である。
(講師)
「大衆を立ち上がらせ頼らなければ戦いはできないのだ。」
(研修生)
「革命軍の栄光ある歴史を復習してとても幸せです。
私たちは党の経験を吸収して伝えていきます。」
井岡山にある.共産党直属の研修施設。
各地から集まってきた共産党の幹部に向けた講義が行われている。
この日 党や政府の局長級とされる幹部に向けた講義が外国メディアに公開された。
(講師)
「農村から都市を包囲し
武装闘争で
中国革命は偉大な勝利を得たのです。」
講義では革命の歴史だけでなく習主席の言葉を1つ1つ紹介していた。
(講師)
「習主席は
近代以降の歴史を理解しないと中国社会を把握できないとおっしゃいました。」
この幹部学院は習主席の指導思想の教育を研修の最重要課題にしているという。
(井岡山幹部学院 副院長)
「幹部学院では
習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想を
教育で重要視しています。」
革命聖地では党や企業といった団体客が目立っていたほか
個人客では高齢者が多く見かける。
一方で若い家族連れなどの姿はあまり見かけない。
革命聖地をたどる旅行が国民全体でブームになっているとまでは言えない。
習主席の“党の歴史を学べ”というキャンペーンは
あくまで全国9,000万以上いる党員に向けたもので
当院ではない一般の国民からすれば
関係のないと考えている人が多いのかもしれない。
党幹部向けの研修施設では
党の革命の歴史や指導者の考え方を強調していた。
党は党の歴史を学ぶ本を指定しているが
そこでは中国という国が共産党の統治のもとでいかに発展してきたかが強調されている。
習主席は“正しい歴史を学ぶように”と指示していて
党にとって都合の悪い歴史
たとえば中国に大きな混乱をもたらした文化大革命とか
民主化を求める学生らを武力で鎮圧した天安門事件には
あまり目を向けないよう求めていると思われる。
共産党100年の節目に
党の統治は正しいと重ねてアピールする狙いがある。
中国政治に詳しい専門家は
(東京大学公共政策大学院 高原教授)
「共産党の偉業を教え込み
支配の正当性を確保する意図がある。
政治運動を通してライバルを周辺に押しやり自分の権威を固める。
これが重要な狙いだ。」
来年秋には5年に1度の共産党大会が行われる。
この大会では習主席がこれまでの慣例を破る形で
3期目以降も続投するという見方も広まっているうえ
毛沢東が務めた“党主席”のポストを復活させ
自らに権限を集中させようとしているのではないか
という見方までくすぶっている。
こうした重要な政治日程を前に週主席は
自らを含む歴代の指導者の統治が正しかったと
いわば思想教育をすることで自らへの忠誠を求めている。
習主席としては対外的にアメリカとの対立が続くなかで
まず足元の党内は団結させておきたいという思惑があるのではないか。
2021年5月8日 NHK「おはよう日本」
日本で話題となったドラマの主題歌を歌っているのは
南アフリカの姉弟。
いまアフリカでは日本の曲をカバーした動画がきっかけとなって現地で注目され
デビューするアーティストたちがいる。
その活動をある日本人男性が支えている。
南アフリカのヨハネスブルグ。
ストリートから聞こえてくるのは
90年代にヒットした日本の曲 ♪今夜はブギー・バック。
道行く人が足を止めリズムに体をゆだねる。
彼らの活動をっ支える 服部アランさん(35)。
今は新型コロナウィルスの影響で日本に一時帰国しているが
この10年南アフリカやコートジボワールを拠点に
現地政府に開発計画などのコンサルティングをしてきた。
もともと音楽が趣味の服部さん。
路上で演奏する若者たちとの交流を通じて
アフリカで音楽で生計を立てることの難しさを知った。
(服部アランさん)
「アフリカだと特に失業率も高く
音楽・イベントをやってCDを売っても全然売れたりしなくてお金にならないので
アーティストとしてすばらしいものを提供する努力をしているのに
割に合わない。」
そこで服部さんはアーティストたちが自立できるよう後押しをするグループを起ち上げた。
若い才能を見出し無償でレコード会社に紹介するなどのプロモーションを展開している。
現在30人のアーティストが参加している。
その1人
コートジボワールのラッパー DEFTYさん。
日本の曲をカバーした動画の公開をきっかけに
フランスのレコード会社の目にとまりデビューが決まった。
動画自体は収入に結びつかないが
ネットで話題になることでチャンスが広がると服部さんは考えている。
今注目されているのが南アフリカのデュオ
Biko's Manna ビコマナ。
14歳の姉 ビコと
11歳の弟 マナの姉弟である。
両親は音楽家で
ふたりは勉強の合間
週末に路上でのライブを楽しんでいた。
(服部アランさん)
「ビコマナは本当にすごく良くて
楽しそうで
歌が上手いのもそうだが
背景とか個性というか人間性が魅力的だった。」
ふたりの才能に気づいた服部さんが
日本の曲を聴かせたところメロディーに興味を持つようになった。
服部さんが8か月かけて
日本語の発音や歌詞に込められた意味を教えたところ
自分たちの持ち味を生かしたカバー曲が仕上がった。
♪ロビンソン
動画は日本などでたちまち話題に。
再生回数900万回越え。
♪白日 (King Gnyu)
そして去年チャレンジしたこのカバー曲は本人たちの目にもとまった。
(king Gnuメンバーのインスタグラム)
めちゃくちゃ渋いカバー
見つてしもたー!!
♪Automatic
♪愛をこめて花束を
今はまだカバー曲が中心だが
今後はコンサートやオリジナル曲でのデビューを目指している。
(姉 ビコ)
「私たちは服部さんに出会って旅が始まった。
夢は自分たちのアルバムを出すこと。」
(服部アランさん)
「仲間としてチームを組んで自分たちがサポートしてあげると
彼らの人生や夢に向かって一歩進めたり
新しいチャンスが舞い込んだりして
彼らが描きたいと思っているものが本当に描ける場所を見てみたい。」
2021年5月7日 NHKBS1「国際報道2021」
次世代エネルギーとして注目される水素。
普及に向けて製造コストが課題となるなか
オーストラリアでは
使いみちがほとんどなかった意外な資源から水素を作る実験が始まっている。
4月に行われた気候変動サミット。
オーストラリアのモリソン首相は水素を重視する姿勢を強調した。
(オーストラリア モリソン首相)
「アメリカには“シリコンバレー”があるが
我々は“水素バレー”をつくり
輸送や資源産業などの構造を転換していく。」
水素への関心が高まる一方
先行きが不透明になっているのが石炭産業である。
シドニー近郊に住むハワードさん(33)。
父親の代から炭鉱で働いてきた。
しかし年々脱炭素の機運が高まるなか
将来に不安を感じるようになったという。
(炭鉱労働者 ハワードさん)
「環境への懸念が高まるなか石炭産業がなくならないか不安です。
もし自分に息子ができてもこの業界で働くことはないでしょう。」
こうしたなか探鉱に眠るある資源に業界の関心が集まっている。
水素の原料に使われる褐炭(低品質の石炭)。
今年3月
複数の日本企業が南東部ビクトリア州で褐炭から水素を製造する実証実験を開始した。
オーストラリアに豊富にある褐炭は
乾燥すると発火しやすく輸送には向かない。
一方で値段がつかないほど安いことから
コストを抑えた水素製造が実現できると期待されている。
しかし褐炭から純度の高い水素を取り出すには高度な技術が求められる。
褐炭を燃やして水蒸気を加えると
水素を含むガスが発生する。
当初は
ガスに含まれる二酸化炭素などの不純物の除去が思うようにいかなかったが
思考錯誤を重ねた結果
「商業的に流通している水素の中で最高純度になります。」
燃料電池車などで幅広く活用できる純度を達成した。
次に課題となるのが
水素の運搬である。
効率よく運搬するためには液化して体積を減らす必要があるが
水素の液化温度は-253℃と極めて低く
高い断熱技術が求められる。
そこで開発されたのが
二重の断熱壁を備え
内装と外装の間が真空になっているタンク。
このタンクを搭載した政界初の液化水素専用運搬船で
今年中にも水素が日本に運ばれる予定である。
(川崎重工業 現地法人 メルボルン事務所長)
「技術実証が終わったら結果をレビューし
商用の大規模な水素製造につなげていきたい。」
もうひとつの課題が製造過程で発生する二酸化炭素である。
いま地元のビクトリア州政府が中心となって
二酸化炭素を海底に封じ込め大気中に出さないようにする新たな技術の研究を進めている。
州政府は
水素の製造が商用化されれば地元に数千人の雇用が生まれると期待している。
(ビクトリア州 パラス財務相
「環境に配慮した資源活用法を見つければ
地元社会に富と機会をもたらします。
日本だけでなくオーストラリアにとってもエネルギーの長期確保が望めます。」
2021年5月6日 NHKBS1「国際報道2021」
「千と千尋の神隠し」
「ハウルの動く城」
「もののけ姫」
世界的にも人気のスタジオジブリのアニメ作品である。
これらの作品を題材にフランスである芸術プロジェクトが起ち上がった。
ユネスコの無形文化遺産となったフランスの織物技術を駆使して
ジブリの世界を紡ぎだそうというものである。
絵画のように見えるウールや絹などの織物
タペストリー。
壁掛けとして古くからヨーロッパの王侯貴族の間で珍重されてきた。
タペストリーの伝統を500年以上にわたり受け継いできた地域が
フランス中部のオービュッソン。
糸の染色から織りあげるところまで
1つ1つ手作業で行う職人技が評価され
2009年にユネスコの無形文化遺産に登録された。
しかしタペストリーは時代の移り変わりにより下火となり
職人も最盛期の1割にまで減少。
そこで起ちあがったのが町の博物館の館長 ジェラールさん。
この伝統を再興させるため
世界的に話題となる新たなタペストリーの制作を思いついた。
(国際タペストリー博物館 ジェラール館長)
「ヨーロッパ
特にフランスで愛されている宮崎俊監督の作品をモチーフに作るのは
とても挑戦しがいのあることです。
これまでとは違う世代の人をひきつけられると思いました。」
EUや企業などから1億円を超える資金を得て
5つのジブリ作品がタペストリー化されることに。
その第一弾となる「もののけ姫」の制作が今年3月から始まった。
タペストリーの設計図となる下絵。
深い森の中で主人公が呪いを受けた腕を癒すシーン。
織り上がれば5m×4.6mになる。
全体設計を担当する下絵職人は今回120種類の色の糸を用意。
下絵と糸を照らし合わせ
神秘的な森をどう表現するかを決める。
(下絵職人 マンジュレさん)
「完成するタペストリーが宮崎俊監督の世界にしっかりマッチすることが大原則です。
特に難しいのは樹皮や木の葉や岩などの鉱物の質感を出すことです。
背景には光もさしているので
奥行きを出さなければなりません。」
そこで森を表現する技術にたけた職人が6つの工房の中から選ばれた。
職人歴46年のギヨさん。
下絵を縦糸の下に敷き作業する。
縦糸に糸の付いた横糸を巻き付けて織るタペストリー。
ギヨさんは巻き付ける縦糸の本数を変えることで表面の厚さを変え
太さや色の違う糸を束ねることで細かな質感や立体感を生み出す。
(ギヨさん)
「これは4種類・・・
色を混ぜて樹皮の部分を織るんです。」
ギヨさんが織ったサンプル。
いくつもの糸を使って樹皮の質感を表現した。
(職人 ギヨさん)
「タペストリーが壁に掛けられると
まるで森の中に入っていく感じがするでしょう。
職人たちが技術を駆使して
そんな錯覚を作り出すのです。」
4月下旬 2作目の下絵のベースが届いた。
「千と千尋の神隠し」で
ご馳走を食い散らかし暴走する怪物を主人公が諭す場面。
作品は裏側から織るため
下絵は左右が逆転している。
(下絵職人)
「激しさも感じる。
それぞれの料理をしっかり描かなければなりません。」
(館長)
「この光の具合を表現するのは興味深い。」
プロジェクトには職人を目指して研修している若者たちにも参加してもらう可能性があるという。
(研修生)
「下絵からタペストリーを生み出す過程を見て
私も参加したくなりました。
すごい迫力です。」
「芸術的な映画をタペストリーにする。
将来こんなプロジェクトに参加するのが夢です。」
(国際タペストリー博物館 ジェラール館長)
「伝統を継承しつつも
新たなことを手掛けることで
より多くの人にタペストリーの魅力を伝えたいのです。」
動き出したフランスの歴史が織り込まれた技術と日本のアニメ。
ここから新たな伝統が始まろうとしている。
2021年5月6日 NHKBS1「キャッチ!世界のトップニュース」
アジア系住民への暴行事件が相次ぎ深刻な社会問題として取りざたされているのはアメリカだけではない。
オーストラリアでも差別的な言動がアジア系の人々に向けられるようになっている。
オーストラリア国立大学がアジア系の人々に調査を行ったところ
去年1~10月に1度でも差別を受けたと答えた人は84.5%にのぼっている。
多文化社会・移民国家を掲げるオーストラリアで今何が起きているのか。
4月25日 オーストラリア シドニー。
アジア系住民への差別に抗議の声を上げる集会。
アジア系住民の団体が初めて開催した。
「アジア系差別をなくそう!」
(ニューサウスウェールズ州 レオン議員)
「私たちの社会でアジア系住民への差別が増加しているのに
黙っていてはいけません。」
(ベトナム系の女性)
「これまで無視されてきた差別の問題に対して
声を上げて抗議するのは大切なことです。」
(中国系の女性)
「差別がある限り
オーストラリアが他文化の国であるとは言えません。」
怒りの声を上げる背景には
社会の中でアジア系への差別が露骨な形であらわれるようになっていることがあげられる。
医療機関の待合室で撮影された動画。
(TikTokより)
「“国に帰れ”と言ったな?」
「そうよ 言ったわ。」
アジア系のカップルが居合わせた白人女性から「中国に帰れ」とののしられる。
中国系住民のガレージで見つかった落書きは“中国人 死ね”。
地元メディアが大きく報じた。
オーストラリアではアジアからの移民が増え続けていて
現在では人口の1割以上を占めているといわれている。
去年 新型コロナウィルスの感染拡大が始まると
こうした人たちに対し
“チャイナウィルス”と暴言を吐いたり
暴行したりするケースが相次いだ。
さらに
オーストラリア政府が貿易問題などで中国政府との対立を深めていることも国民感情を悪化させているといわれている。
オーストラリアのシンクタンクが去年11月に中国系住民を対象に行った調査では
“過去1年間に中国系であることを理由に脅迫や暴力を受けた”と答えた人は
5人に1人。
“暴力行為を含め差別を受けた”と答えた人のうち半数以上が
新型コロナウィルスや対中関係の悪化が原因だと感じている。
調査を行った専門家は
白人中心に国づくりが進められてきた歴史の中で
社会にくすぶり続けてきた人種的な摩擦が
感染拡大や外交関係の悪化で一気に表面化したと指摘する。
(ローウィー研究所 スー氏)
「新型コロナは
もともと差別的な人たちの意識を増長させ
不幸にも今起きている人種差別につながったのです。」
こうしたなか4月シドニーであるアート展が始まった。
テーマは“I Am Not A Virus(私はウィルスではない)”。
差別の問題に関心を持ってもらおうと
アジア系のアーティストたちが製作した写真や立体作品が展示されている。
布で作られた餃子1個1個にアジア系住民への差別的な言葉が縫い付けられている作品。
餃子はオーストラリアでも広く親しまれているアジア料理である。
身近な存在にひどい言葉を投げつけていることに気づいて欲しいという思いが込められている。
アジア人を象徴する黄色い洋服に1.5mの長さの袖をつけた作品は
新型コロナをきっかけにアジア系の人たちが周りの人々から距離を置かれ孤独を感じていたことを表現している。
(来場者)
「政治問題とここで暮らす人々を分けて考えるべきです。」
「作品を見ることで
差別について考えるきっかけになると思います。」
このアート展を企画した1人の竹内さん。
日本人とオーストラリア人の両親のもと生まれた。
アジア系住民に向けられる差別的な視線を自身も感じてきたという。
差別が表面化している今だからこそ
問題を直視し
議論するきっかけを作りたいと考えている。
(竹内さん)
「展示を見た人たちが
差別について家庭や学校で話をして
お互いにどう接するべきか考える機会になってほしいです。」
オーストラリアは現在 国として多文化主義を掲げ
多くの国から移民を受け入れている。
オーストラリアでは40年余前まで「白豪主義」と呼ばれた白人優先政策が続けられてきた。
白人が優先されてきた歴史の影響は根強く
今でも一部の人の中には白人以外の人への差別的な意識が残っていると感じるアジア系の人もいる。
このように人種的にも歴史をめぐる摩擦が存在していたところに
新型コロナや政治的な対立が触媒となって差別や暴力が表面化したをみられる。
連邦政府レベルの対策はまだ十分に進んでいないのが現状である。
新型コロナの感染拡大でアジア系住民への差別が増え始めていた去年4月
モリソン首相は問題への対応について記者から問われると
“差別は止めなければならない”と強い口調で差別を非難したが
政府として具体的な政策には反映されていない。
オーストラリアでは先住民アボリジニの人たちへの差別も根強く残っているが
人種差別の問題に政府として真正面から取り組んでいないことに批判の声も上がっている。
自治体レベルや大学などの教育機関では人種差別対策のセミナーが開かれるなどの取り組みが進んでいる。
抗議集会にはアジア系住民だけでなく白人の人たちの姿も見られた。
社会に潜む差別の芽があらわになった今の状況を機会ととらえ
社会全体でこの問題を考えていくことが重要である。
2021年4月23日 NHKBS1「国際報道2021」
温室効果ガスの排出を減らそうという機運が世界的に高まっているが
その実現は容易ではない。
再生可能エネルギーの普及などで二酸化炭素の排出を減らす一方で
吸収を増やすことで実質的に排出量を削減する取り組みも重要になってくる。
これまでは二酸化炭素を吸収するものとしては森林などがよく知られているが
いま注目されているのが
ブルーカーボン
海の植物が二酸化炭素を吸収することで海底に蓄えた炭素のことである。
海の植物による二酸化炭素の吸収量は森林の20倍以上とも言われ
各国で取り組みが加速している。
沿岸部にマングローブなど豊かな生態系を誇るオーストラリア。
一方で発電の約8割を石炭など化石燃料に依存するなど
国民1人当たりの温室効果ガスの排出量は先進国の中でもワーストクラスである。
そうしたなか政府が目をつけたのがブルーカーボンだった。
(オーストラリア政府の公式YouTubeより オーストラリア環境相)
「オーストラリアには6万キロの海岸線があります。
世界のマングローブや海草などの1割がここに集まっているのです。」
海の植物がどれぐらいの二酸化炭素を吸収しているかを調べるため
6年前 国が主導して本格的な実態調査が始まった。
中心となって調査を始めたディーキン大学のマクレディ―教授。
調査では
海草などの根元の土を採取し
特別な装置を使って土に含まれた炭素の量を分析した。
海の植物の場合
吸収された炭素は根を通して土の中に蓄積される。
幹に炭素を蓄積する森林などと異なり
数千年にもわたって炭素が残り続けるのである。
オーストラリアでは
1年間に約5,000万トンの二酸化炭素が森林で吸収されていると言われているが
専門家によると
この他にも
海の植物によって最大で約2,000万トンの二酸化炭素が吸収されることが分かったという。
オーストラリアはこうした調査結果を示したことで
国連から“海の植物を二酸化炭素を吸収するものとする”ことを認められた。
(ディーキン大学 マクレディ―教授)
「ブルーカーボンは世界の温暖化対策の取り組みの中でまだ十分に活用されていません。
温暖化対策の新たな切り札となるのです。」
一方
日本は企業を巻き込みブルーカーボンを活用する仕組み作りに動き始めている。
ブルーカーボンに特化したオフセット制度である。
制度の運営機関が
海の植物が吸収した二酸化炭素の量を認定。
一方 企業は
排出した二酸化炭素のうち自ら削減できない量について
運営機関に料金を支払い「排出枠」を購入する。
企業は購入した枠の分だけ排出した二酸化炭素の量を削減したことにできるというのである。
その先行事例として国が注目する取り組みが福岡市で始まっている。
福岡市は独自の調査で
博多湾の一部の植物が二酸化炭素を年間43,4トン吸収すると算出。
去年10月
「排出枠」として1トン当たり8,000円で販売したところ
購入希望が殺到しすぐに完売した。
(福岡市港湾空港局 みなと環境政策課)
「ブルーカーボンがまだなじみがない中で興味を持っていただいて
申し込んでいただいたことは
非常に関心の高さがうかがえる。」
購入した住宅会社エコワークス。
太陽光発電や省エネなど環境に配慮した住まいづくりに力を入れるこの会社。
2030年に二酸化炭素の排出量を実質ゼロにするという目標を掲げ
事業所の電力を全て再生可能エネルギーに切り替えた。
しかしなかなか減らないのが営業車の排気ガスだった。
そこでその分を少しでも補おうと
今回10トンの「排出枠」を購入したのである。
(エコワークス株式会社 小山社長)
「取り組みが必ず将来の顧客からの評価
社員のモチベーションにつながる。
確信を持って取り組んでいる。」
販売によって得られた収益は
博多湾の環境保全のために使われることになっている。
博多湾に海洋植物を植えるなど生態系の維持に取り組んできた団体は
オフセット制度が今後の活動の後押しになると期待している。
(一般社団法人ふくおかFUN代表)
「制度を通し
いろんな方が参入し
博多湾の生き物が住みやすい場所になるよう目指せるといい。」
国は今後
オフセット制度を全国に普及させた上で
海外にも広げ
気候変動対策の分野で主導的な役割を果たしていきたいとしている。
(国土交通省港湾局 海洋・環境課)
「オフセット制度の意義など
日本から国際的に発信する。
そのリーダーシップを日本が取っていく取り組みを進めていきたい。」
2021年4月22日 NHKBS1「キャッチ!世界のトップニュース」
ベトナムでは海外で働きたい人の渡航先として日本の人気が高まっていて
2019年には全体の半数を超える約8万人が日本に渡った。
しかしいま新型コロナウィルスの感染拡大の影響によって
渡航先を別の場所に帰る“日本離れ”が進んでいるという。
ベトナムの首都ハノイ。
3月 日本の新たな在留資格を取得するための試験が初めてベトナムで実施された。
この日は学科試験に加え鉄筋の加工などを行う実技の試験が行われた。
日本政府が一昨年
人手不足の解消につなげようと始めた新たな制度。
これまで技能実習生も含め多くの人材を日本に送り出してきたベトナムは
その重点国のひとつである。
(受験者)
「しっかり準備してきたので合格できると思います。
生活を良くしたいです。」
しかしいま新型コロナウィルスの感染拡大の影響が日に日に深刻になっている。
首都ハノイにある日本に技能実習生を送り出している企業。
ベトナム各地から集まった若者が日本で働くことを希望し
日本語の習得に励んでいる。
しかし日本とベトナムとの行き来が制限されているため
日本への入国ができない人が相次いでいる。
(去年10月に日本へ入国する予定だった女性)
「私の渡航のために家族がお金を借りているので
日本に行けない状態っが続き心配です。」
この企業で日本への送り出しを担当しているグーさん。
日本への渡航を諦めないようサポートを続けている。
(グーさん)
「日本のお客さんと連絡を取っているので
情報が入り次第お伝えしますね。」
さらに日本で働きたいという人を見つけるのも難しくなっている。
渡航の見込みが立たないだけでなく
感染が拡大する日本で生活をするのjが怖いという感情が広がっているためである。
(担当者)
「先週 申込者がいたと言っていたけど
どうなった?」
(リクルーター)
「検討すると言っていたけれどたぶん無理ですね。」
「今は誰も紹介できない?」
「厳しいですね。」
(リクルーター)
「日本はいま感染者が多く
行くことに不安を感じています。
コロナの影響は本当に大きいですよ。」
一方 感染を抑え込んだことで海外で働きたいという人たちをひきつけているところが台湾。
3月 グーさんの企業で台湾で働くための説明会が行われた。
集まったのは若者約50人。
このところの台湾の新たな感染者は1日数人程度である。
(参加者)
「台湾の感染状況は安定しているので台湾に行きたいです。」
もともとは日本で働きたいと考えていた男性。
しかし父親を亡くし
家族を支えるためにも
少しでも早く渡航できる台湾に行くことにしたという。
「日本の感染状況は悪化していて
いつ行けるか分かりません。」
海外で働こうというベトナム人の間で広がり始めた日本離れ。
グーさんは焦りを感じている。
(海外に人材を送り出す企業 グーさん)
「海外で働きたい多くの人は
なるべく早くお金を稼ぎ技術を学びたいと思っています。
日本政府が入国緩和のような政策を実施し
ベトナムから出国できない人たちの問題を解決するために注力してほしい。」
感染が抑え込めているかどうかがベトナムの労働者に影響を与え始めている。
ベトナムの人たちが感染拡大のリスクも重視している背景には
ベトナムで感染拡大の抑え込みを実感できていることがある。
4月にホーチミンで開かれたイベントでは大勢の人が飲食などを楽しんだ。
ベトナム国内の感染者数は累計で約2,800人。
ベトナムでもこの1年の間に市中感染が広がったことはあるが
当局などはそのたびに感染者の行動を洗い出し
接触した人やさらにその接触した人と接触した人にも連絡を取り
PCR検査の実施や隔離を行うなど徹底した対策を一貫して続けてきた。
こうしたことで拡大を抑え込んだ日常を維持しているベトナムの人たちからすれば
感染拡大が続く日本に行くのをためらう気持ちが強くなっているのである。
海外にベトナムの労働者などを送っている関係者は
日本は引き続き有望な派遣先であり続けるだろうとみている。
それは日本はまだ比較的高い稼ぎが期待できると受け止められていて
その魅力自体が失われているわけではないからである。
2021年4月22日 NHK「おはよう日本」
銀座の一等地にある老舗デパート。
紳士服売り場に新たにオープンしたのは中国のブランドである。
8年前 広州で生まれ中国国内で100店舗以上展開するこのブランド。
ITエンジニアはアーティストなど
ファッションにこだわりを持つ人の人気を集めている。
最大の特徴が品質。
それを支えているのが日本製の素材である。
たとえば2万4,000円のジャケット。
愛知県の会社が開発した
横糸に和紙を使った素材が使われている。
このデパートはコロナ禍でスーツの売り上げが落ち込むなか
カジュアルを強化して販売増を図りたいと考えていた。
(松屋 営業4部)
「この洗練された感じとか
日本の素材を多く使っているというところで
この商品であれば私どものお客様にきっと高い評価をいただけるんじゃないのかなと。」
このブランドが日本に進出したのは去年。
店を構えたのは高級ブランドが集まる東京南青山である。
シンプルでこだわりの素材を使うコンセプトが日本人にも受け入れられると考えたからである。
(ダンノン 季さん)
「我々のコンセプトが実は日本市場にぴったり合うのです。
多くの日本人が店舗を訪れたとき
中国発のブランドだと知ったら驚きました。
これからもチャンスがあれば店舗の数を増やしたいと考えています。」
このブランドの存在が地方の企業の飛躍にもつながっている。
石川県にある繊維メーカー。
3年前に初めて中国ブランドと取引を始めた。
この会社はポリエステル生地の生産を得意とし
これまで製品のほとんどを国内メーカーに卸してきた。
しかし国内のアパレル市場が縮小するなか
会社の将来に危機感を持っていたという。
そこで軽くて速乾性があり
こうした機能が長く続く生地を開発。
その機能性に興味を示してきたのが中国ブランドだった。
取引量は年々増加。
この3年間で5倍以上に伸びている。
今後ほかの新しい中国ブランドにも生地を売り込んでいきたいと考えている。
(丸井織物)
「中国との商売は日本と1桁違う。
ここからスタートのつもりで
中国への展開をしていきたいなと思っています。」
紹介した中国ブランドは
静岡県や和歌山県の企業からも素材を仕入れていて
商品の半数以上が日本製の素材を採用しているという。