日暮しの種 

経済やら芸能やらスポーツやら
お勉強いたします

黙々とすするソバ食い芸

2021-08-19 07:18:15 | 編集手帳

2021年7月16日 読売新聞「編集手帳」


昭和の名人の一人、
柳家小さん師匠はソバをすするまねがうまかった。
片手にダシつゆを持って、
おいしそうに食べる芸を楽しみにした客は少なくない。

あるとき、
ソバ屋で盛りそばを注文した。
運ばれてくると、
少し店の雰囲気がおかしいことに気づいた。
本物のソバならどんなにおいしそうにすするのかと、
他の客に興味津々に見つめられたという。
「味わった気がしないよ」とこぼしたとされる。

桂歌丸さんに沈黙のソバ食い芸があった。
黒紋付きに羽織という正装で高座に上がり、
黙々と盛りそばをたぐる。
食べ終わったら、
手ぬぐいで口をぬぐって一言、
「おソバつさまでした」

信用調査会社の方から先日、
立ち食いなど個人の小さなソバ屋さんの閉店が続いていると聞いた。
もともと薄利多売の商売ほど外食抑制の影響を受けやすいそうだ。
朝早くからダシを仕込んだり、
天ぷらを揚げたりしてきた人たちが泣く泣く店をたたんでいるという。

両師匠が手本を示したように、
ソバは黙々とすするもので、
酒を飲んではしゃいだり、
大声を出しながら食したりするものではない。
コロナ禍の不条理だろう。

 

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がまんの継続のあと秋は来るのか 

2021-08-15 08:44:26 | 編集手帳

2021年7月9日 


 今年のカレンダーに信号機にならって線を引いてみた。
東京に緊急事態宣言が出ていた期間に赤い線を、
まん延防止措置となっていた期間に黄色の線を。

すると、
インクがいらなかったのは1月の最初の7日間と、
3月22日から4月11日までの21日間しかなかった。
合計28日。
日本の首都は約半年のうちのほとんどを、
赤信号と黄信号を しながら過ごした。
もはや「緊急」が「緊急」に聞こえないほどだろう。

4回目の緊急事態宣言が発令されることになった。
来月22日までの6週間と長い。
色々ぼやきたくなることはあるものの、
感染力の強い変異型への対処だとする政府の説明には反論が浮かばない。

東京に赤信号が灯ると、
全国に影響する。
親やきょうだいの顔を見たい。
友人と誘い合って旅行に行きたい。
どれほどの「たい」をがまんしてきただろう。
6週間となれば、
夏がほぼ消えてしまうとカレンダーにペンを滑らせながら思った。
「緊急事態だ」と気持ちを入れ直すのはなかなか容易ではないにしても、
がまんの継続は自分や家族の健康を守ることではある。

秋は来るのか。
青い線を引けるだろうか。

 

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クイズ番組と児玉清さん ガッツ石松さん

2021-08-09 07:17:03 | 編集手帳

2021年7月3日 読売新聞「編集手帳」


あるクイズ番組で、
ガッツ石松さんにこんな問題が出た。
「太陽はどこから出るでしょう?」。
ガッツさんは間髪入れず答えた。
「右!」

放送作家の高田文夫さんがエッセーに書き留めている。
この出来事を深夜のラジオ番組で取り上げたところ、
ガッツさんのタレントとしての人気に火が付いたという。
昭和のテレビが生んだジャンルのなかで、
時代が移っても陰りがないのがクイズ番組である。

次々に現れる新番組と選手交代というわけだろうか。
「パネルクイズ アタック25」(朝日放送)が今秋で終了すると発表された。

俳優の児玉清さんの司会で、
1975年に放送を開始した視聴者参加型の長寿番組である。
日曜日の午後、
児玉さんの柔らかな語り口で進行する番組に休日のゆったりした時間を預けた方は多かろう。10年前の5月に児玉さんが亡くなったとき、
本紙歌壇に次の作品が載った。
<「アタック」という声耳に残りおり青葉の季節に散りゆきし人>

教養あり、
笑いあり。
高田さんによると、
真偽は不明ながらクイズ番組のガッツ伝説に傑作がある。
「亀を英語で何と言う?」
「スッポン!」


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希望と不安が交錯する五輪

2021-07-19 18:58:11 | 編集手帳

2021年6月18日 読売新聞「編集手帳」


 メアリー・シェリーの小説「フランケンシュタイン」は、
天才科学者が作り出した醜悪な人造人間の悲しみを描く。
何度も映画化された。

中でも1994年公開の「フランケンシュタイン」は名優ロバート・デ・ニーロが人造人間役を演じ、
過去の映像作品には見られない“よくしゃべる怪物”が話題になった。
熱演シーンは数々あれど、
最近ちょくちょく思い出すセリフがある。
「おれには感情があるが、
 使い方を教わっていない」

東京五輪の代表選手が次々に決まっていく。
その報に接するたび、
心がふわっと浮き立ったかと思えば、
次の瞬間には心配がよぎる。

こんなオリンピックは過去になかった。
感情の使い方がよくわからず、
戸惑う人は多いことだろう。
そもそも五輪の期間中、
どんなふうに過ごせばいいのか想像がつかない。
感染症の広がりの程度にもよる。
先が見通せないなか、
希望と不安を交錯させながらスポーツの祭典を待つ状態にこの国はある。

今回の東京五輪で記録映画が作られていることをふと思った。
未曽有の苦しみと混迷のなかで祭典を待つ人々の感情も、
主題の一つになるだろう。

 

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楽しく生きることを、調べにのせ・・・小林亜星さん

2021-07-13 07:01:58 | 編集手帳

2021年6月16日 読売新聞「編集手帳」


永六輔さんが5年前に亡くなったとき、
小林亜星さんは本紙の取材に盟友の残した歌の詞を口ずさんだ。
誰もが永さんの代表作とはみなさない歌である。
♪ババンババン バン バン いい湯だな

永さんとは戦時中の疎開先が近かったため思い出を語り合った。
「僕は親の差し入れを教師が食べるのを見た。
 ひもじさ、
 理不尽さ、
 終戦の解放感。
 それが僕らの世代の原点です」

「いい湯だな」(作曲・いずみたく)は人気番組「8時だョ!全員集合」に使われた。
「楽しく生きることを肯定している。
 戦争で心の傷を受けた僕たちにとって、
 子供たちを幸せに育てることは切実な願いでした」

「寺内貫太郎一家」の貫太郎役が印象的な亜星さんだが、
人生の比重は大きく作曲活動にあった。
♪この木なんの木 
 気になる木~。
♪レナウン娘がワンサカ 
 ワンサ~。
アニメの主題歌では「魔法使いサリー」や「ひみつのアッコちゃん」だろうか。
かつて耳になじんだメロディーを次々浮かべながら、
悲報に触れた方は多かろう。

亜星さんが88歳で亡くなった。
楽しく生きることを調べに乗せ、
ささやいた人だろう。

 

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梅雨明けのころが待ち遠しい

2021-07-10 23:26:49 | 編集手帳

2021年6月15日 読売新聞「編集手帳」


じめじめと雨の降る日に思い出す本紙俳壇の入選作がある。
<全身が精神力のなめくじり>(栃木・あらゐひとし)

選者の矢島渚男さんが生物学の視点を交えて絶賛していた。
<ナメクジはカタツムリが進化して殻を無くした。
 目も触角も肺もある。
 無防備だから、
 全身に神経が張りつめているのだろう。
 それを「全身が精神力」と表現した。
 面白い>

疲れたりしないのだろうかと、
その生き物に妙な共感を抱いてしまう。
エレベーターのボタンに触れるかどうか迷ったり、
人混みを注意深く避けて歩いたり…
手足の指先まで神経を使う日々はけっこうな精神力がいる。

バーベキューのグリルのそばで「密」になって談笑する人たちをテレビで見た。
英コーンウォールで開かれた先進7か国首脳会議(G7サミット)である。
ワクチンの効果を背景に、
ウイルスに打ち勝った後の世界を見せる演出が所々にあった。

国内では医療従事者、
高齢者に続き、
職場接種が緒についた。
効果の出る日が待ち遠しい。
梅雨明けの頃には、
と期待するのはせっかちだろうか。
ナメクジを見かけなくなる季節がふさわしいような。

 

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人は鶴を折る 

2021-07-07 07:09:52 | 編集手帳

2021年6月13日 読売新聞「編集手帳」


ここ何か月かの間、
本紙の地方版に載る千羽鶴の話題に目が留まる。
埼玉県川越市にお住まいの小高トメ子さん(92)は6000羽を折って、
生活を支えてくれるボランティアにプレゼントした。

千葉県袖ケ浦市役所ロビーの壁は、
滝の流れのような2万羽に彩られた。
中止のウォークラリー大会の代わりに小学生が汗をかいて折った。
鹿児島県鹿屋市のJA直売所は買い物客たちに色紙を配り、
折り鶴にして戻すよう頼んだところ、
10万羽が集まった。

なぜ人は鶴を折るのか。
まもなく地方予選が始まる高校野球のベンチや、
広島の原爆忌を待たなくても分かることだろう。
「折る」という字は「祈る」によく似ている。

スマホに<折り紙>と打ち込んでみた。
紙ふうせんに飛行機に…。
「おうち時間」の使い方を教える動画が次々にヒットする。
文具メーカーによると、
折り紙の売れ行きは例年の1割増しだという。

俳人の高橋修宏さんに、
鶴に変身する紙をいたわるかのような一句がある。
<折鶴は紙に戻りて眠りけり>。
声をかけるなら、
ありがとうだろうか。
いつもいつも、
祈りを手伝ってもらっている。

 

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その場所で旅をする

2021-06-29 07:52:36 | 編集手帳

2021年6月7日 読売新聞「編集手帳」


 絵にしたいと感じた情景はあるのでしょうか? 
ダンサーの田中泯さんが質問を受けた。
描くのではなく体の中に記憶として残したい、
と答え、
言葉を継いだ。
「大きな木を見るのが好きです」

映画「HOKUSAI」の封切りに合わせたテレビのインタビューだった。
田中さんは老年期の葛飾北斎を演じている。

さっそく映画館に行った。
全身で喜びを表す北斎がスクリーンに映し出された。
一瞬、
たしかに老木のようにも見えた。
年齢が刻まれた皮膚から、
生命力がほとばしる。
帰宅後、
ものの本で植物について復習した。
動物と違い、
食物を求めて移動することはしない。
その生きる場所で、
葉から二酸化炭素を、
根から水を取り込む。
光のエネルギーを使って栄養を作り出す。

長田弘さんは「空と土のあいだで」という詩の中で〈白い雲〉と〈黒い〉に対話させている。
雲が問う。
なぜ自由に旅をしようとしないのか。
樹は答える。
〈三百年、
 わたしはここに立っている。
 そうやって、
 わたしは時間を旅してきた。〉

手元の手帳を見る。
旅行の予定はまだ書き込めない。
今は詩をかみしめて暮らそう。

 

 

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ぜいたく品の線引き

2021-06-28 08:07:59 | 編集手帳

2021年6月6日 読売新聞「編集手帳」


1989年の消費税導入まで、
ぜいたく品に課された物品税は線引きが悩ましかった。
「コーヒーと紅茶」
「ゴルフ用具とテニス用具」
「扇風機と電気こたつ」。
いずれも前者は課税、
後者が非課税だ。

奇妙な区分である。
ぜいたくの感覚は時とともに移ろい、
豊かになれば価値観も多様化していく。
何が奢侈(しゃし)かと論争が絶えなかったのは当然で、
一律に線を引くのは難しい。

コロナ禍の3回目の緊急事態宣言でも、
生活必需品とぜいたく品の区分で混乱があった。
東京都が「高級ブランドは『豪奢品』なので休業に協力してほしい」と百貨店に要請したためだ。

豪奢品が何か問われても戸惑いは大きいだろう。
百貨店は頭を痛めながら受け入れたが、
「高級品の線引きは、
 お客様の心の中にある」とぼやいた。
今月に入り平日の販売は戻ったものの、
都が無理を頼むにしては丁寧さを欠き、
後味の悪さが残った。

そもそも豪奢とは古めかしい。
文豪の書で探すと「侏儒(しゅじゅ)の言葉」(芥川龍之介)に、
「クレオパトラは豪奢と神秘とに充(み)ち満ちたエジプトの最後の女王ではないか?」とある。
並のぜいたくではなさそうだ。

 

 

 

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スタンド・バイ・ミー

2021-06-26 21:35:52 | 編集手帳

2021年6月3日 読売新聞「編集手帳」


 一夏の子供たちの冒険を描く米映画『スタンド・バイ・ミー』(1986年)が先週、
地上波で放送された。
また見てしまった。
大人になった主人公が冒険の旅で心を開いて打ち解け合った友の訃報に接し、
思い出と共に悼む場面が有名だ。
心の中でつぶやく。
「12歳だったあの時のような友達はそれからできなかった。
 誰でもそうなのではないだろうか?」

この問いは何も、
「12歳」という年齢に狭くかかるものではあるまい。
少年期には大なり小なり、
人生に影響する友達との出会いが「誰でも」あるということだろう。

3人組の人気バンド「いきものがかり」のうち水野良樹さん(38)と山下穂尊さん(38)は小学生の頃、
金魚にエサをやる「生き物係」をしていた。
バンド名はそこから来ている。
『ありがとう』などのヒット曲の向こうに、
「スタンド・バイ・ミー(そばにいて)」を地でいく友情を浮かべてきたファンにはさみしいニュースだろう。

2人がそれぞれの道を歩むことになった。
山下さんが脱退し作曲などの活動に専念するという。
いい別れになってほしい。
出会いのまぶしさが消えないように。

 

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絵本『二平方メートルの世界で』 

2021-06-22 07:13:46 | 編集手帳

2021年6月2日 読売新聞「編集手帳」


 病院のベッドの広さは約2平方メートルだという。
脳神経の難病を患う札幌市の小学5年、
前田海音(みおん)さんの闘病記が絵本『二平方メートルの世界で』(小学館)になった。

3歳から大学病院への入退院を繰り返している。
「もういや」
「一日でいいから薬を飲まなくていい日をください」…
多くの言葉をベッドの上でのみこんできた。

<入院のため休みをもらわなければならない母も、
 仕事であまり面会に来られない父も、
 一人ですごさなければいけない兄も言葉をのみこんでいる。
 本当の気持ちを言ってしまったら…
 もうがんばれなくなる気がして>

絵本作家・はたこうしろうさんとの作業は去年秋に始まった。
3年生時の作文が原案となる。
それを読んだ編集者が出版を依頼したところ、
「病と生きる仲間がいること、
  いたこと、
 を代表して伝えられるなら」と手紙が届いたという。
感染の猛威のなかの病院で、
人助けに奔走したのは医師や看護師ばかりではなかったらしい。

巻末近くに花にとまるチョウを見つめ、
つぶやく場面がある。
<生きていることのすばらしさは気づきにくいということを、
 私は知っている>

 

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本棚には「あおむし」がいた

2021-06-16 09:48:15 | 編集手帳

2021年5月28日 読売新聞「編集手帳」


かわいい大きな目をした青虫がリンゴやケーキをどんどん食べて育っていく。
サナギになり、
やがては美しいチョウへ――。
エリック・カールさんの絵本『はらぺこあおむし』である。

世界的なロングセラーとなるこの本は1969年、
じつは日本で初版本が印刷された。
子供たちが触れて喜ぶようにと、
絵のところどころに穴を開ける凝った仕掛けに当時の米国の出版社は尻込みした。

困ったすえに印刷技術の高い日本の出版社に企画を持ち込み、
世に出たという経緯がある。
「色彩の魔術師」と呼ばれたカールさんが91歳で亡くなった。

本棚に「あおむし」のいた思い出のある方は多かろう。
『パパ、お月さまとって!』や『くまさん くまさん なにみてるの?』も息長く読まれている名作だ。
飛行機が苦手なのに「日本のすべてが好き」と語り、
何度も来日したカールさんは4年前、
読者への手紙を本紙に寄せた。

<長年、
 私の本と絵を子供たちと大切に分かち合ってくれていること、
 そして親から子へ、
 希望とともに絵本を受け継いでくれていることに感謝の気持ちをげます。
 ありがとう>。
こちらこそ。

 

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今夜は天体ショー

2021-06-14 07:03:22 | 編集手帳

2021年5月26日 読売新聞「編集手帳」

 

なぞなぞを一つ。
太陽とお月さまが寄り添うと、
世界はどうなる? 
二つの星がくっつくことはありえない。
なぞなぞ本を開いたまま、
うんうんって答えをのぞくと、
ほおがゆるんだ。

太陽を「日」に換えて「月」を横に並べると、
世界は「明」るくなるとか。
今晩の天体ショーには太陽と月に加え、
地球も参加する。
よりいっそう明るい催しになるといい。
三つの星が一列に並ぶことで起こる皆既月食は、
午後8時9分ごろにはじまる。

しかも今晩の主役は普通のお月さまではない。
一年のうち最も地球に近づき、
大きく見える「スーパームーン」である。

国立天文台によると、
皆既食の間は月が地球の影のなかに完全に入り込む。
だが月は真っ暗になって見えなくなるわけではなく、
「赤銅色」に見える。
太陽の波長の長い赤い光だけが届くためで、
朝焼けや夕焼けと同じ原理とされる。
もう一つ、
地球が間にあるのに月が照る不思議もある。
これは赤い光が地球の大気に触れて、屈折して届く現象だという。

<抱き上げて子に鼓動あり月赤し>(山口優夢)。
ベランダの情景も、
明るい夜になりそうである。

 
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敵を倒すつもりなら、縦パスを

2021-06-13 07:02:47 | 編集手帳

2021年5月25日 読売新聞「編集手帳」


20世紀を代表するサッカー選手の一人、
オランダのヨハン・クライフ氏は指導者としても名をはせた。
名門バルセロナの監督に招かれ、
現在もチームが受け継ぐ攻撃サッカーの基礎を築いたといわれる。

日本のプロ野球でいえば、
野村克也さんのような人で至言にこと欠かない。
その一つに<横パスは問題の解決にならない>がある。
要は、
敵を倒すつもりならなぜ縦パスを蹴らないのかと、
皮肉と鼓舞の両方を短いことばに込めたらしい。

縦パスを早いうちに蹴っていたかどうか。
英国をはじめ、
ワクチン接種の進む国から届く映像にうらやましいと思わない日はない。

ロックダウンから解放され、
カフェで口元を気にせず談笑したり、
夕暮れのバーで祝杯を上げたり…。
日本とは対照的な光景だろう。
他の先進国に比べて調達が遅れたうえ、
市町村の集団接種がなかなか加速しない。
東京、大阪で自衛隊を活用した大規模な接種が始まったほか、
宮城、群馬、愛知では県が特設会場を設けるなど市町村任せにしない動きも広がる。

現状は何とか縦パスを蹴った段階だろう。
次はどう効率よくゴールを決めていくか。

 

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大谷!場外弾を!

2021-06-10 09:30:21 | 編集手帳

2021年5月21日 読売新聞「編集手帳」


 ベーブ・ルースの伝記映画『夢を生きた男/ザ・ベーブ』は1992年に公開された。
映画通のイラストレーター、
和田誠さんが次のセリフを著書に書き留めている。

「守備の甘い所へ打つのがコツだ
 だから俺は場外へ打つ」
(『お楽しみはこれからだpart7』文芸春秋)。
プロに入って早々、
先輩に向かって言ったという。
こんな豪快なヒーローと比べられながら、
エンゼルスの大谷翔平選手の活躍が止まらない。

本塁打数1位で先発登板し、
ルース以来100年ぶりと騒がれたのは4月下旬のこと。
きのうのゲームはその日と少し違って、
タイではなく本塁打数単独1位で先発のマウンドに立った。

着実に、
野球の神様に近づいているように思える。
今のペースで打てばシーズンの終了時には50本を超える。
妙な言い方だが、
ただの二刀流ではなくなってきた。
力量のレベルでルースに遜色ないのは目下、
疑いのないところだろう。

きのうの試合に、
先の映画のセリフを体現するかのような場面があった。
第3打席、
変則守備でがら空きの三塁前にバント安打を転がした。
「守備の甘い所へ…」。
次は場外弾を。

 

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