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知事選の争点(その10、教育改革)

2009年05月31日 | タ行
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     知事選の争点(その10、教育改革)

 最後に教育改革を取り上げます。しかし、これはとても難しい問題です。現に、多くの改革派首長も教育改革はやっていません。一部で、見識のある人を教育長に据えることで或る程度の改革をしているくらいでしょう。

 なぜ難しいかと言いますと、根本的には、文科省が決めている枠組みは変えられないからです。政権交代でもして、新政権がその枠組みを変えてくれれば、可能性は出てきます。教育と文化には中央集権は似合わないと言って、国レベルの文科省を廃止して、県に任せてくれれば最高です。そうすれば、東大の独り勝ち状態も改めることができるようになるでしょう。各藩校のレベルがほぼ等しかった江戸時代のような状態を目指すべきでしょう。

 県レベルでの問題を指摘しましょう。

 1つは、高校は今や事実上義務教育ですが、建前はそうでないために、公立に行きたい人でも私立に行かなければならない状態になっています。静岡県では、公立高校の入学定員は中卒者数の3分の2に設定することになっています。3分の1は私立に行かなければならないのです。そして、高い授業料を払わなければならないのです(そのほかに、高校では「輪切り」の問題もあります)。

 ドイツのように、私立学校でも人件費は自治体が負担し、それ以外の経費(建物とか用具とか)は設立母体(ドイツでは多くは修道会)が負担するようにするべきだと思います。つまり、教育を金もうけの手段にすることを許さないことです。しかし、このように改革するのは大変でしょう。

 根本的な改革が難しいこともあって、また認識の間違いもあって、教師の質を高める方策(教師塾など)をやっている所もあります。たしかに教師の質の向上は大切です。それは、根本的には、大卒後5年間は民間で働いてから、どうしても教師になりたいという人が2年間の教職大学院で学んでから教員になるようにするといいでしょう。今の4年間の大学を出てすぐに教員になるのは無理です。

 しかし、このように変えるのは大変です。現状のままで教師塾などをするのは間違いでしょう。学校教育は個々の教師が行うものではなくて、「校長を中心とする教師集団」が行うものなのです。このことを知らなすぎます。

 今、多くの、特に公立学校が堕落しているのは、個々の教師の堕落によるものではありません。それは結果にすぎません。根本原因は、消化試合教育長と消化試合校長がグルになって消化試合をやっていることです。そして、学校全体にダランとした雰囲気を蔓延させているからです。「毒にも薬にもならない」という言葉があります。消化試合教育長と消化試合校長がまさにそういう人間です。

 教師たちが勉強しやすいように、雑用を少なくするとか、互いに協力するような校風を作るとかするのは、教育長と校長の仕事です。これがなされていないと思います。そもそも2~3念で校長が代わるのも問題です。5年間は1つの学校にとどまって、自分の理想の学校作りをするようにするべきでしょう。

 従って、解決策は教育長と校長に消化試合をさせないことです。東京都品川区の若槻教育長が「学校選択制」でその1つの方法を提示しました。これは参考になります。しかし、こういう教育長はどこにでもいるわけではありません。

今でもすぐに効果の出る方法としては、教育長と全校長に「ブログでの週間活動報告」を義務付けることです。更に、学校のホームページを本当のホームページにさせることです。

 もう1つは、住民サポーター制度を作り、その中に「オンブズ」を作って、職員と教員(特に教育長と校長)の活動を監視させることです。しかし、これは議会で通るかな、難しいです。

 最後の手段は、住民が自発的に学校のカウンターホームページを作って意見を言うことです。これも難しいでしょう。現状を知っている親は、「子供を人質に取られて」いますから。

 知事にやる気があるならば、鹿児島県阿久根市のように、教師たちの給与を完全に公開することも可能でしょう。これをすれば、実態を知らせる効果はあるでしょう。校長は、みな、1000万を超える年俸をとっていることすら知らない人もいるようですから。

 正規の教師の給与は高すぎます。特に管理職の給与は高すぎます。逆に、今や全教師の4分の1くらいを占めるようになったと言われている非正規教師の待遇は悪すぎます。これを平等にして、教師の数を増やすべきでしょう。

 まあ、教育改革は難しいです。誰が知事になったとしても、改革するには「本当の情報公開」が第1の仕事でしょう。しかし、その「本当の情報公開」とは何か、これが理解されていないようです。事態はかくも深刻なのです。

付記

教育行政の世界がどれほど腐っているかを知りたい方は、「教員人事の真実」をどうぞ。大分県で教員採用試験や幹部人事で不正があったとして、刑事事件にまでなりましたが、あれで逮捕された人たちは、多分、「どこでもやってるのに、自分は運が悪かったな」と思っていることでしょう。

     関連項目

文部官僚
小中高の生徒数
学校HPに載せるべき事項
教育長は何をしているか
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