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『辞書で読むドイツ語』(増補版)

2009年05月30日 | サ行
 牧野 紀之著、未知谷、2005年11月(初版)、2009年05月(増補版)
 四六判上製、 274頁、定価2730円(本体2600円+税 130円)
 ISBN978-4-89642-270-2

 日本における外国語教育(学習)については、「中学高校と9年間も英語を習ったのに話せない」といったことが言われます。これはその通りだと思います。ヨーロッパでは大学に入る段階でほとんどの人が英語は話せるようです。

 この点はよく知られていますので繰り返しません。対策として、小学校時代から英語を教えるのが正しいかには疑念があります。しかし、これは論じません。

 ここで言いたい事は、そのほかの大きな欠点として、「日本の」と言わず、多分、世界の言語学習に共通しているだろうと推定される点として、①文法が初等文法しか教えないこと、②言葉を研究する方法を教えておらず、その練習が為されていないこと、③母語との比較、ないし母語の文法的反省が少ないこと、の3点があると思います。

 なぜそうなるかと考えて見ますと、文法を研究している教師が少なく、水準の低いことが考えられます。例えば、相対的にはレベルの高いと言えるNHKのラジオドイツ語講座の中級(応用)篇の「中級文法」とされていることでも、実際は初等文法の上でしかありません。

 真の意味で中級文法以上のことを教えているのは、私の知る限りでは、関口文法だけです。これが言いすぎなら、「中級文法以上」ではなく、「高等文法以上」としてもいいです。

 本書も内容的には関口文法の受け売りです。ただ、その整理の仕方を変えて使い易くしただけです。文法を「理解文法」と「表現文法」に分けたものは初めてかもしれません。

 今回の増補版では、「第3部・読本」を入れて、2編の独文を載せました。1はシラーの「人質」を関口氏がリライトしたものです。シラーの原詩から太宰治が「走れメロス」を創作したのは有名です。

 2は「電話ボックスの中で」です。これには「文法的読解のためのヒント」をかなり書きました。文字通り、テキストを文法的に読むとはどういうことかを考えるのに役立つでしょう。

 そのほかに、母語の文法的知識の必要性の具体例も挙げています。

       目次

まえがき
 プロローグ・日本語になったドイツ語

        第1部 理 解 文 法

第1章 声に出して読む
第2章 格変化は英語にもある
第3章 「3単現」とは人称変化のことだった
第4章 名詞の変化はやさしい
第5章 呼吸を整える
 付録1・ドイツ語の位置
付録2・ドイツ語の歴史

第6章 動詞の原理は英語と同じ
第7章 ドイツ語を分析して読む
第8章 形容詞の格変化は「無し強・定弱・不定混合」
第9章 英語の前置詞も格支配している
第10章 副詞は形容詞と同形
 付録3・言葉の研究は用例集めから始まる

第11章 ドイツ語では werden 動詞が大活躍
第12章 分離動詞がドイツ文の骨格をなす
第13章 接続詞は定形の位置に影響する
第14章 関係代名詞も英語と同じ
第15章 文章を読んでみよう
第16章 es と dasの用法
 付録4・教科通信とメーリケの詩

第17章 冠詞と冠飾句
 付録5・「山のあなた」
第18章 接続法第1式の形と用法
第19章 接続法第2式の形と用法

        第2部 表 現 文 法

第20章 疑問文
第21章 伝達文
第22章 直前の過去の表現

        第3部 読  本

1、Die Buergschaft(人質)
2、In der Telefonzelle(電話ボックスの中で)

 エピローグ・ドイツ語における「指向性」と日本語における「響き」
   第1節 ソシュールの言語論
  第2節 言語による対象分割は完全に自由か
  第3節 言語表現と考え方

          関連項目

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コメント (1)
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