ブログ「教育の広場」(第2マキペディア)

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教員人事の真実

2008年10月29日 | カ行
   教員人事のあり方を見直せ

              千葉県富里市民生児童委員 土屋 茂喜

 最近の教育改革の議論で教員人事のあり方をめぐる検討がなされていない。30年余り公立中学校の教員をしていた者として、次の点を指摘し、改善を求める。

 第1は、行政職に絡む問題だ。多くの教師が教職を志す初心は、教育が「子供の幸福と人間形成に携わる尊い仕事」だからである。将来、行政職に転身して出世したいためではない。

 しかし10年以上、学校現場の経験を積んで35歳を過ぎるころになると、教師を続けるか、行政職に転身して、「より上に立つ」機会を得るかの選択を迫られる。

 ここでいう行政職とは、教育委員会や社会教育施設などの職員である。これらの職は公募されているわけではなく、当人と人事権者以外は知らないところで話が進み、まとまれば表向きは退職という形をとって学校現場から去る。

 そして、いったん出ると、よほどのことがない限り将来のポストはもとより、退職後も公民館長になるなど、優遇措置が約束される。そこに教師の上ばかりを見る体質や選良意識が生じる。

 実際、教育長や指導主事らの学校訪問があると、現場では校長を中心に全校をあげて準備にかかり、前日は大掃除をして、仕事で来るというのに特別の昼食を用意、中には土産を渡す学校まであった。

 また、退職の形で出たはずが、その後たいていは、校長・教頭といった管理職として「天下」ってくる。それが普通のこととして何の疑問も持たれず慣例化している。

 第2は、主として文部科学者主催の研修や海外視察、研究指定校の経験に対する偏重である。教員は様々な研究・研修を通じて優れた教師となるよう努力しているが、前述した経験は異動の際、特に有利に働く。それ故、それらに参加しようと躍起になり始めるのも35歳ごろからである。

 これに推薦されるための準備などを優先して出張なども増え、残りの教師たちにしわ寄せがくる。多忙な現場はさらに忙しくなり、子らと触れあう余裕を失う。

 第3は、教職員組合との関係である。組合幹部の多くは、組合活動を終えた後に行政職へ転身、管理職へと駆けのばる。組合幹部になる教師の本音は、組合員のためにというより、自分の出世のための手段という傾向が否めない。

 私は教育で最も尊いのは壷井栄の小説「二十四の瞳」の大石先生や、今年開設40年を迎えた「ねむの木学園」の宮城まり子さんのように、日々子供に接し共に笑い泣き、時には厳しく、共に成長していこうとする姿にあると信じる。

 現場を離れ、直接は責任をとらなくて済む評論家的立場や、管理職試験の準備に専念できる特権を得た者が、社会的な地位や評価を得るのはおかしいと思う。

 教員をめぐる現行の人事異動のあり方を、たとえば行政職を公募制にして天下りはやめさせ、民間の研修経験も重視するなどして改めていかない限り、他のどんな施策を講じても真の教育改革は実現しない。
   (2007年07月10日、朝日、私の視点)

     感想

 この投稿は、教育制度の内部事情を熟知する人がその実情を教えてくれた点で貴重だと思います。

 しかし、行政職のあり方の決定的な重要性を指摘した点では正しいにせよ、具体的な改善策としては行政職の公募制とか、民間での研修経験の重視だけで、不十分だと思います。

 まず、どんな組織にも現場と管理(マネジメント)の2つの仕事があるということです。もちろん選手兼任監督がいるように(この方の尊敬している宮城まり子さんもその1人)、両者を1人の人が兼ねてもいいのですが、普通はそれは無理でしょう。従って、マネージャーが必要になります。

 すると問題は、マネージャーの人事をどうするか、それが本当により良い現場のためのマネージャーになるようにするにはどうしたら好いかだと思います。マネージャーにも大きく2段階あり、教育長レベルと校長レベルがあります。プロ野球で言えば、フロントと監督です。

 とても難しい問題だと思います。現実には、愛知県犬山市のように、前市長が立派な教育長を任命したために大きな成果をあげている所もありますが、これは例外です。制度的に行政職が堕落しないようにする保証となると、私にも好い案がありません。

 少し問題点を指摘することしか出来ません。

 1、校長や教頭などの給与を現場より高くせず、同一の基準で決めること(これは実施している学校もほんの一部にあるようです。イギリスのニールとか)。

 教師を著書数によって、著書ゼロ教師、著書1~2冊教師、著書3冊以上教師の3段階に分けて、給与はこれだけで決める。年功序列は止める。

 ともかく今は教員の給与が高すぎ、勤務時間は長すぎます。給与を下げて、週に3日勤務にすると好い。

 2、教員数の5%にあたる教師を常に研修中にしておくようにする。今でも何人かの現職教員が大学などで勉強しているようですが、各教委が主催する研修方式を持つべきだと思います。

 新人教師もまずこの「研修教師」になり、どこかから呼ばれるのを待つようにする。3年間、研修教師のままの人は退職する。

 3、校長は公募で決める(現在でも校長には資格は要らない)。

 校長には教員の選択権を与える。校長は自分の学校の不適当な教員をこの研修中の人と取り替える権限を持つ。つまりスポーツの監督と選手の関係です。

 毎学期末に 360度評価を行い、一定点以下の場合は更迭し、(希望者は)現場に復帰させること。

 市民が学校のホームページの批評をするように奨励する。

 4、教育長と教育委員はなくす。市町村役場に担当部署を作る。