球際で競らない日本
雨でボールが走らない上に、対戦相手に退場者が出るーー。評価が難しいゲームだった。それらの要素を差っ引いても、日本は立ち上がりから内容が最悪だった。
球際で競らない。パスコースを作る動きがない。ゆえにパスが繋がらない。ないないづくしだった。前半終了間際に韓国に退場者が出るまでは、明らかに勝者にふさわしいのは韓国だった。
だが43分に韓国が1人退場になり風向きが変わる。日本は得た直接FKを直後の45分にゴールして先制。その後、2点を加えて試合を終えた。
これで日本は大会史上初の連覇で4度目の優勝だ。肩書だけは立派である。だが日本は単に優勝した「だけ」の試合だ。特に11対11で戦った前半の内容はひどかった。
U-17日本代表は、デキ不出来の差が非常に激しいチームだ。決勝とは5人スタメンが違う、ひとつ前の準決勝・イラン戦では(何でもかんでも遅攻にしてしまう以外は)文句のつけようがないデキだった。その次の試合が「これ」である。
球際で激しく競らない。パスが繋がらない。パスコースを作る動きをしない。1人多かったから3点取れた、というだけの試合だ。10人になるまでは、明らかに韓国が演じるプレッシング・フットボールの方が優れていた。
ちなみにフリーライターの川端暁彦氏はこの記事のなかで、「終わってみれば、このデュエルの勝率は日本59.3%、韓国40.7%と約20%上回ることに」と記述され、「デュエルは日本が勝っていた」とする。
だがこの数字は「一試合を通して」のものだ。後半は韓国が1人少ないのだから、1試合通してならデュエルで劣勢にもなるだろう。これに対して私が「日本は球際で激しく競らない」と書いているのは、まだ11対11のイーブンだった「前半の話」だ。
韓国は退場者を出す44分までは日本を圧倒していた。だが退場のほんの2分後に日本が先制点を取り、事実上、これで試合が決まった。あとは11人対10人なので「参考外」だ。
日本のフォーメーションは4-4-2。スタメンはGKが後藤亘。最終ラインは右から柴田翔太郎、本多康太郎、土屋櫂大、小杉啓太。セントラルMFは中島洋太朗と矢田龍之介。右SHは佐藤龍之介、左SHは吉永夢希。2トップは道脇豊と名和田我空。韓国のフォーメーションは4-3-3だ。
10人相手に取った3点の重みは?
44分、左SBの小杉が出したダイアゴナルなパスを前線で道脇がキープしたが、そのときチャージした韓国CBコ・ジョンヒョンが2枚目のイエローカードを受け退場になる。
この局面で得た直接FKを名和田が右足で蹴る。ボールは美しい曲線を描きながら、韓国GKホン・ソンミンの手を弾きゴール左スミに飛び込んだ。
66分、佐藤がきれいな縦パスを入れる。密集の中で受けた望月が絵に描いたような密着ワントラップから、ボールを前に送る。最後は飛び込んだ名和田がGKを見ながらきっちり決めた。
そして試合終了間際の96分だ。佐藤が送ったライン裏へのスルーパスを受けた道脇が、ワンフェイク入れて右足でシュートを決めた。これで3-0だ。
MVPと得点王に輝いたFW名和田我空が2ゴール。1ゴールしたFW道脇豊のパフォーマンスも光っていた。
日本は欠点だらけだが、決定力だけはあるのが救いだ。
ただし日本の全得点は退場を受けてのFKと、後半に韓国が10人になりスペースができてからの2点だ。絵に描いたように、11対11では無得点だった前半の日本はデキが悪かったことを示している。
世間は、1人少ない韓国を相手に躍動した「後半の日本」を見て錯覚しているのだ。
韓国に前プレを受けてタジタジの日本
日本は立ち上がりから、最終ライン発のビルドアップや中盤での要所など、「ここ」というところでボールが繋がらない。あるいは前にパスコースがあるのにバックパスしている。見えてない。「バックパス症候群」だ。
前半の日本は韓国に前からプレスをかけられ、最終ラインからビルドアップできない。パスコースがなく、ロングボールを放り込んでばかりいた(これは雨中のゲームでのセオリーという側面もあるが)。日本の最終ラインに対するプレッシングは、明らかに韓国の方が優れていた。
それに対し、韓国の最終ラインがボールを保持した時の日本のプレスは効いてない。ただ立ってるだけだ。意図を持ち、どのコースを切るのかの判断ができてない。日本は内容では劣っているので、あとは求めるのは「結果」だけだ。
36分。韓国がチャンスで前がかりになり、日本のゴール前に殺到した。そこで日本がボールを取り返す。韓国の選手は前にかかっているため、韓国陣はスカスカで人がいない。日本は速いカウンターを打つ絶好のチャンスだ。
この場面で、日本はなんと横にボールを繋いだ。その間に上がっていた韓国の選手がすべて自陣に戻りチャンスは潰えた。U-17日本は典型的な遅攻のチームであり、遅攻しかできない。勝負の勘所をわかってない。ただ漫然と10人の相手から点を取っただけだ。
数多い日本の課題はこれだ
前半の韓国が伸び伸びやっているのに対し、日本は「受けて立って」しまっていた。メンタルが弱い。韓国のプレッシングに圧倒され、気圧されて縮んでしまっていた。少なくとも相手が10人に減るまでは。
そして44分に韓国のDFコ・ジョンヒョンに2枚目のイエローカードが出て退場になる。これで名和田が直接FKをゴール左スミに決めて先制。日本は1人多い上に先制できた。この時点で勝負は決まった。あとは「どういう勝ち方をするか?」だけだ。
そんな問いかけに応えるように、日本は10人を相手に後半2点を追加した。そして優勝だ。
この優勝で日本の御用メディアはハデに日本賛美を報じるだろう。そして私がこの記事に書いたような日本の深刻な問題点は覆い隠され、戦勝ムードのなか消えて行くのだ。
最後にもう一度、日本の課題を書く。
球際での激しい競りのなさ。守備の粘りの欠如。判断ミスの多さ。プレーのミスの多さ。インテンシティ高く闘うことの欠如。敵のパスコースを切るポジショニングのなさ。味方のパスコースを作る動きと受けるための動きがない。
遅攻ばかりになる体質を改善すること。速いカウンターが効く場面では、素早いポジティブ・トランジションから速攻を打つこと。常に「自分たちのサッカー」をするのでなく、局面に応じた臨機応変なプレーをすること。
日本は得点力だけはあるように見えるが、足りない部分が実に多い。
U-17日本代表はこれらの問題点を改善しない限り、11月にインドネシアで開かれるU-17ワールドカップでの健闘は期待できないだろう。
雨でボールが走らない上に、対戦相手に退場者が出るーー。評価が難しいゲームだった。それらの要素を差っ引いても、日本は立ち上がりから内容が最悪だった。
球際で競らない。パスコースを作る動きがない。ゆえにパスが繋がらない。ないないづくしだった。前半終了間際に韓国に退場者が出るまでは、明らかに勝者にふさわしいのは韓国だった。
だが43分に韓国が1人退場になり風向きが変わる。日本は得た直接FKを直後の45分にゴールして先制。その後、2点を加えて試合を終えた。
これで日本は大会史上初の連覇で4度目の優勝だ。肩書だけは立派である。だが日本は単に優勝した「だけ」の試合だ。特に11対11で戦った前半の内容はひどかった。
U-17日本代表は、デキ不出来の差が非常に激しいチームだ。決勝とは5人スタメンが違う、ひとつ前の準決勝・イラン戦では(何でもかんでも遅攻にしてしまう以外は)文句のつけようがないデキだった。その次の試合が「これ」である。
球際で激しく競らない。パスが繋がらない。パスコースを作る動きをしない。1人多かったから3点取れた、というだけの試合だ。10人になるまでは、明らかに韓国が演じるプレッシング・フットボールの方が優れていた。
ちなみにフリーライターの川端暁彦氏はこの記事のなかで、「終わってみれば、このデュエルの勝率は日本59.3%、韓国40.7%と約20%上回ることに」と記述され、「デュエルは日本が勝っていた」とする。
だがこの数字は「一試合を通して」のものだ。後半は韓国が1人少ないのだから、1試合通してならデュエルで劣勢にもなるだろう。これに対して私が「日本は球際で激しく競らない」と書いているのは、まだ11対11のイーブンだった「前半の話」だ。
韓国は退場者を出す44分までは日本を圧倒していた。だが退場のほんの2分後に日本が先制点を取り、事実上、これで試合が決まった。あとは11人対10人なので「参考外」だ。
日本のフォーメーションは4-4-2。スタメンはGKが後藤亘。最終ラインは右から柴田翔太郎、本多康太郎、土屋櫂大、小杉啓太。セントラルMFは中島洋太朗と矢田龍之介。右SHは佐藤龍之介、左SHは吉永夢希。2トップは道脇豊と名和田我空。韓国のフォーメーションは4-3-3だ。
10人相手に取った3点の重みは?
44分、左SBの小杉が出したダイアゴナルなパスを前線で道脇がキープしたが、そのときチャージした韓国CBコ・ジョンヒョンが2枚目のイエローカードを受け退場になる。
この局面で得た直接FKを名和田が右足で蹴る。ボールは美しい曲線を描きながら、韓国GKホン・ソンミンの手を弾きゴール左スミに飛び込んだ。
66分、佐藤がきれいな縦パスを入れる。密集の中で受けた望月が絵に描いたような密着ワントラップから、ボールを前に送る。最後は飛び込んだ名和田がGKを見ながらきっちり決めた。
そして試合終了間際の96分だ。佐藤が送ったライン裏へのスルーパスを受けた道脇が、ワンフェイク入れて右足でシュートを決めた。これで3-0だ。
MVPと得点王に輝いたFW名和田我空が2ゴール。1ゴールしたFW道脇豊のパフォーマンスも光っていた。
日本は欠点だらけだが、決定力だけはあるのが救いだ。
ただし日本の全得点は退場を受けてのFKと、後半に韓国が10人になりスペースができてからの2点だ。絵に描いたように、11対11では無得点だった前半の日本はデキが悪かったことを示している。
世間は、1人少ない韓国を相手に躍動した「後半の日本」を見て錯覚しているのだ。
韓国に前プレを受けてタジタジの日本
日本は立ち上がりから、最終ライン発のビルドアップや中盤での要所など、「ここ」というところでボールが繋がらない。あるいは前にパスコースがあるのにバックパスしている。見えてない。「バックパス症候群」だ。
前半の日本は韓国に前からプレスをかけられ、最終ラインからビルドアップできない。パスコースがなく、ロングボールを放り込んでばかりいた(これは雨中のゲームでのセオリーという側面もあるが)。日本の最終ラインに対するプレッシングは、明らかに韓国の方が優れていた。
それに対し、韓国の最終ラインがボールを保持した時の日本のプレスは効いてない。ただ立ってるだけだ。意図を持ち、どのコースを切るのかの判断ができてない。日本は内容では劣っているので、あとは求めるのは「結果」だけだ。
36分。韓国がチャンスで前がかりになり、日本のゴール前に殺到した。そこで日本がボールを取り返す。韓国の選手は前にかかっているため、韓国陣はスカスカで人がいない。日本は速いカウンターを打つ絶好のチャンスだ。
この場面で、日本はなんと横にボールを繋いだ。その間に上がっていた韓国の選手がすべて自陣に戻りチャンスは潰えた。U-17日本は典型的な遅攻のチームであり、遅攻しかできない。勝負の勘所をわかってない。ただ漫然と10人の相手から点を取っただけだ。
数多い日本の課題はこれだ
前半の韓国が伸び伸びやっているのに対し、日本は「受けて立って」しまっていた。メンタルが弱い。韓国のプレッシングに圧倒され、気圧されて縮んでしまっていた。少なくとも相手が10人に減るまでは。
そして44分に韓国のDFコ・ジョンヒョンに2枚目のイエローカードが出て退場になる。これで名和田が直接FKをゴール左スミに決めて先制。日本は1人多い上に先制できた。この時点で勝負は決まった。あとは「どういう勝ち方をするか?」だけだ。
そんな問いかけに応えるように、日本は10人を相手に後半2点を追加した。そして優勝だ。
この優勝で日本の御用メディアはハデに日本賛美を報じるだろう。そして私がこの記事に書いたような日本の深刻な問題点は覆い隠され、戦勝ムードのなか消えて行くのだ。
最後にもう一度、日本の課題を書く。
球際での激しい競りのなさ。守備の粘りの欠如。判断ミスの多さ。プレーのミスの多さ。インテンシティ高く闘うことの欠如。敵のパスコースを切るポジショニングのなさ。味方のパスコースを作る動きと受けるための動きがない。
遅攻ばかりになる体質を改善すること。速いカウンターが効く場面では、素早いポジティブ・トランジションから速攻を打つこと。常に「自分たちのサッカー」をするのでなく、局面に応じた臨機応変なプレーをすること。
日本は得点力だけはあるように見えるが、足りない部分が実に多い。
U-17日本代表はこれらの問題点を改善しない限り、11月にインドネシアで開かれるU-17ワールドカップでの健闘は期待できないだろう。