- 松永史談会 -

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笹山さんありがとう

2013年10月07日 | 教養(Culture)
笹山登生「田園環境創造論ーグリーン・ルネッサンスの時代」、1992が天野藤男を「田園を勇気づけた人々」の一人として紹介している。

天野藤男「都会から田園へ」、大正4
[目次]
標題
目次
序章
第一章 汽車と電車と人生
第二章 田園より都市へ
第三章 地主と小作人と官吏
第四章 貧民窟より下宿生活迄
第五章 生活と自覚
第六章 青年と自覚
第七章 寄席と縁日と浅草
第八章 道路より気質談
第九章 都市対田園実際問題
第十章 都市より田園へ
第十一章 文学対社会対田園
結章


都会人向けに田園への誘いを目的に書かれた、天野曰く「米麦小説」。20世紀初頭の興味深い田園論だ。









そういえばNHK広島は今なお藻谷浩介を登場させて「里山資本主義」などという幻想をふりまいている。
そういう流れは1970年代には存在したが、笹山登生「田園環境創造論ーグリーン・ルネッサンスの時代」、1992はその1990年代版。著者の兄貴は東大名誉教授(古代史)の笹山某。本書からは打つ手もなくすでに見捨てられつつある田園に対する熱いまなざしを熱く語ってはいるが、「野生生物の生息できる田園環境を取り戻そう」(本書18頁)と言われても毎日野生のサルの群れと悪戦苦闘を続ける大津市途中地区の高齢者たちにとっては迷惑なだけだし、イノシシの出没で神経をすり減らしている北海道を除く我が国の山間部の住民たちにとって冗談にしか聞こえまい。
わたしも本書が刊行された1990年代初頭にeco-feminism,deep ecology,geocentricismとかいったカタカナ言語を使ってbio-regionalismの大切さを説いたものだが、今から考えると気恥ずかしい限りだ。
本書の存在は最近静岡県出身のある人物(天野藤男 1887-1921)をgoogleしていてたまたま知ったもので、著者の笹山登生は、案の定、2000年(平成12年)6月25日 - 第42回衆議院議員総選挙において秋田県第3区から自由党公認で出馬し、落選(37,876票)。
本書の趣旨のようなややロマンティックで現実離れした政策提言が命取りにでもなったのだろか。
わたしは明治末期の農村の疲弊を目の当たりにして、その再建のために田園の魅力を思いっきり熱く語り続けた天野と里山資本主義の藻谷浩介の中に同じ類型の人間の哀しい性(さが)が感じられてならないのだが・・・。
天野は、宮沢賢治(1896-1933)より12歳年上だが、賢治同様に若死をした。その35年間の短い生涯の中で実にたくさんの著書(10数冊の単行本)を残している。話がややこしくなってきたが、それらの著書との出合いのきっかけを作ってくれたのが本書だった。笹山さんありがとう。
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