- 松永史談会 -

   こんにちは。ご機嫌如何ですか。

加藤一夫『本然生活』、洛陽堂、大正4、338P.

2014年01月27日 | 断想および雑談
加藤の筋金の入らない変節の人生は、人一番つよかった自分=理論家としての自惚れとともにわれわれ読者を戸惑わせる・・・・・・。否、加藤の中では思想などは人生の荒波を航海するうえで装う「観念の衣裳」であって、人生のその折々において着かえてもなんら道徳的お咎めを受けるような性格のものではないとでも考えていたのだろうか。
わたしなどは「み前に斎つく」というわざとらしい神道風のタイトルの懺悔録(自伝小説)の後半部(Ⅴ 「天皇信仰者 現代日本に与ふ」)には首をかしげてしまった。この辺の加藤の変装の巧みさ、精神状態の異様さは国粋(皇道)主義者と行動を共にした晩年の西川光二郎以上かもしれない。
それはそうと彼はトルストイの翻訳書を複数出しているが、すべて英訳本をベースにしたものであり、加藤のトルストイ研究や理解には方法論的にいって疑問符をつけざるを得ないだろ。


本書は加藤一夫の最初の詩集&評論集だ。中々思い(過剰ともいえる自意識)の詰まった力んだ文体。今日では殆ど顧みられることのない加藤だが、彼にはかなりの文才があり、「心境小説」としては中々読みごたえがある。
その前年に加藤は白樺同人の小泉鐡(雑誌「白樺」編集者)からロマンロランの「ベートーベンとミレー」の英訳本の翻訳書を洛陽堂から刊行。加藤はこの翻訳書は誤りが多く絶版にしたとか。それより不可解なのはロマンロランにはベートーベン評伝ミレー評伝はあるが、小泉から借りたのは2冊の英語版でそれを加藤が”ベートーベン並にミレー”といった形に再編集したもの
ベートーベンは聾唖者になってからの作曲活動をミレーは目を患ってからの画家活動を行い、後世の人間に大きな教訓をもたらした。その辺が加藤の再編集上の着眼点だったらしい。



本然生活

加藤一夫 著




[目次]
標題
目次
本然の生活と創造の悲哀 / 1
本然即実在 / 32
「真実」の解放 本然の開発 / 50
「死の力」に面したる刹那に / 64
種族的精神の支配と本然の生活 / 91
本然と人情 / 112
夜のうた(詩) / 138
いのちの河(詩) / 140
労働の歌(詩) / 144
わが胸の血は君に贈る(詩) / 148
ああその日(詩) / 150
反抗(詩) / 153
頽廃裡の光明と力と / 156
霊肉の一致と主客未分の境 / 166
現実の行進 / 177
現在の価値 / 186
「自我の研究」に表はれたる思想 / 192
虐げられたるものよ(詩) / 202
哀れなる坑夫よ(詩) / 208
宗教の生活化 / 212
生命中心の宗教及文芸 / 217
ある神学生へ / 231
トルストイの宗教及宗教観 / 241
戦闘曲(詩) / 272
生命の数学(詩) / 277
東勝寺跡にて(詩) / 280
残虐の讚美(詩) / 282
感想(一) / 286
感想(二) / 292
感想(三) / 298
那智の滝にて(詩) / 304
力を求めて / 311
萎れた朝顔に(詩) / 322
深夜(詩) / 326
真実と恋と / 328
















『本然生活』を出した後、加藤はトルストイの『我​等​何​を​為​す​べ​き​乎』の翻訳に取り掛かる。

印税を加藤に払わなかったことがよほど癪に障っていたのだろうか、常に赤字続きであった河本亀之助経営の東京洛陽堂と・・・、この翻訳書はある程度損得抜きで商売を行っていたらしい洛陽堂からの刊行。
わたしが首をかしげるのは同じ著者の本を多種類出すわけだが河本側では編集要員不在のためか営業上の観点から踏み込んだ中味のチェックを殆どしていない点だ。
河本はキリスト教信仰者だったので、加藤一夫風にいえば「どんなに貧乏していても、一切を神にささげて生活するものには真の平和がある」と言うような自分自身を納得させる術を身に着けていたのかもしれないが、この時期柳宗悦の「イリアム・ブレーク」などの出版を引き受けていることなどを見るにつけ、自社にて出版される本の中味や売れるか売れないかの強かな予測には長けていなかったように思われるのだ。


参考文献

鈴木貞美編『大正生命主義と現代』 河出書房新社、1995
  目次内容
Ⅰ 大正生命主義と現代
  鈴木貞美「大正生命主義」とは何か
  鈴木貞美 大正生命主義研究のいま
  中村雄二郎 哲学における生命主義
  山折哲雄 大正期の宗教と生命観
Ⅱ 大正生命主義の諸相
  鈴木貞美 大正生命主義、その前提・前史・前夜
  稲垣直樹 「近代スピリチュアリズム」の受容
  関井光夫 性愛と生命のエクリチュール
  紅野謙介 透谷の「生命(ライフ)」、藤村の「生命(いのち)」
  金子 務 藤村における生命主義と科学主義
  永野基綱 朦朧たる現代 生命(ライフ)の哲学
  日高昭二 大杉栄再考
  岩見照代 一九一一年・〈太陽〉・らいてう誕生
  正木 晃 大正生命主義と仏教
  石崎 等 夏目漱石の生命観
  江中直紀 女、生、文字
  中島国彦 内的生命としての自然
  今村忠純 メーテルリンクの季節
  阿毛久芳 〈円球の中心から放射する〉思想 萩原朔太郎の〈生命〉の直観的認識について
  竹内清巳 室生犀星の「生命」 昭和文学への賜物
  藤本寿彦 大正生命主義と〈農〉のイメージ
  大和田茂 民衆芸術論と生命主義 加藤一夫を中心に
  漆田和代 「いのち」の作家への道程 岡本かの子「散華抄」を中心に
  鎌田東二 宮澤賢治における食と生命
  百川敬仁 日本主義者・倉田百三
Ⅲ 一九八〇年代の生命主義
  森岡正博 八〇年代生命主義とは何であったか
  座談会 八〇年代生命主義の行方
   森岡正博・上田紀行・戸田清・立岩真也・佐倉統 鈴木貞美

鈴木貞美には長編『生命観の探究 : 重層する危機のなかで』、作品社、2007、914ページ

われわれは「生命」をどのように捉えてきたか。古今東西の哲学・宗教から最先端の分子生物学に至る人類の精神的営為を渉猟しつつ、多様な危機に混迷する現代に新たな生命原理主義を樹立する画期的労作。

「BOOKデータベース」より

[目次]
新たな生命観が問われている
人権思想と進化論受容
生物学の生命観-二〇世紀へ
二〇世紀前半-欧米の生命主義
前近代東アジアの生命観
自然の「生命」、人間の「本能」
生命主義哲学の誕生
大正生命主義-その理念の諸相
大正生命主義の文芸
生命主義の変容
第二次大戦後の生命観
二〇世紀の武道と神秘体験
新しい生命観を求めて


詳しくは

『生命観の探究―重層する危機のなかで』目次細目

はしがき

凡例



序説 新たな生命観が問われている……17

一、なぜ、生命観なのか…18/ 1生命の時代/2バイオポリティクス/3文化と倫理/

4方向が見えない/5いのちの尊厳の危機

二、地球環境問題…24/ 1世界自然憲章/2持続可能な開発/3様ざまな環境保護思想/

4叡智を分けあう

三、生命観の揺らぎ…29/ 1根本の傾向をさぐる/2細胞説から遺伝子説へ?/

3文化も遺伝する?/4生物の多様性とは?/5文化の多様性とは?/6種とは?  

/7自然循環論の意味/8地球規模で考える

四、ポスト冷戦…37/ 1イスラーム主義‐対‐資本主義/2向上もひとつの価値観/

五、生存の権利とは何か…41/ 1価値観を問いなおす/2「家」の思想/

3かけがえのない個人

六、人のいのちは地球より重いか?…45/ 1格言はどこからきたか?/

2なぜ、ご都合主義がまかりとおるのか



第一章 人権思想と進化論受容……50

一、日本国憲法十一条…51/ 1基本的人権を与えるのは誰か?/

2自然権の思想/3理神論/4リセプター

二、「生命」ということば…57/ 1性命と生命/2いのちと生命/3「生命」と”life”

三、キリスト教と自然科学の受容…63/ 1キリスト教の受けとめ方/2ふたつの理学

四、自由と平等の受容…68/ 1天賦人権論/2福沢諭吉と西周の場合/3社会平権論/

4平等思想のリセプター

五、自由民権思想の展開…82/  1大井憲太郎と小野梓/2植木枝盛/

3加藤弘之-対‐馬場辰猪/4社会進化論の対立/5中江兆民の唯物論哲学

六、加藤弘之の転向…92/  1人権論から進化論へ/2国法汎論/3スペンサーの影/

4天則/5万邦無比の国体論/6家族国家論の展開



第二章 生物学の生命観―二〇世紀へ……106

一、生物学的生命観…107/ 1生物の属性/2ギリシア哲学/3細胞説/

4細胞説のゆらぎ/5ダーウィニズム/6ダーウィニズムへの反応

二、ダーウィニズムとスペンサー哲学…115/ 1最適者生存/

2ダーウィニズムと社会思想

三、ハクスリーの相互扶助論…120/ 1厳密な科学/2相互扶助論

四、創造説の根強さ…124/  1宗教から科学へ/2ダーウィンとキリスト教/

3ダーウィニズムの失墜/4科学から宗教へ?/

五、中国での進化論受容…130/  1天演論/2天と勝ちを争う

六、進化論受容の日本的特徴…133/ 1進化論の浸透/2人生論として/

3進化論受容のゆがみ/4社会観との相互浸透の問題/5国家観の生存闘争/

6原理把握の弱さ

七、機械論をめぐって…142/ 1生気論/2動物‐機械論/3カンギレムの見解/

4人間機械論

八、機械論-対-生気論の図式…147/ 1新生気論/2図式の転換/

3システム論は第三の道か

九、ヘッケルの生命一元論…152/  1エコロジーの考案/2万有生物論

一〇、生命一元論の哲学的基盤…156/  1カント/2ドイツ観念論/3生の哲学へ

一一、国家、社会と生命観…162/  1カンギレムの思いこみ/2国家と身体/

3社会と生物/4文化圏の盛衰

第三章 欧米の生命主義―二〇世紀前半……169

一、感覚、知覚、意識…170/  1感覚への注目/2意識の哲学/

3フランスにおける「感覚」

二、レーニン―唯物論の変容…174/  1マッハ批判/2唯物論のレーニン的段階

三、ベルクソン―生命の跳躍…177/  1突然変異説の応用/2断えざる生成/3反響

四、ドイツにおける「生の哲学」…181/  1生の全体性/2テクノクラートの思想/

3近代を超えるユートピア

五、ショーペンハウアー―生の苦悩…185/ 1厭世哲学の流行/2音楽/3無意識の哲学

六、トルストイの生命主義…190/ 1神は生命である/2生命の無限性と普遍性

七、生命の文芸…196/ 1アメリカ/2イギリス/3フランス語圏

八、自然主義からモダニズムへ…200/ 1ラスキン/2文芸における自然主義/

3象徴主義/4意識の流れ

九、前衛美術の生命観…/ 1絵画の冒険/2前衛美術/3生命の表現

一〇、生命主義の影…216/  1ロマンティシズムの呼びかえし/2日本への影響



第四章 前近代東アジアの生命観……219

一、自然崇拝…220/ 1その普遍性/2ギルガメシュ神話の教え/3スサノオ/

4スピリチュアリズムとアニミズム5天道思想

二、日本の古代神話…227/ 1神話と歴史/2編纂方法/3神仏習合

三、中国古代の思想…230/  1気と生/2陰陽五行/3性善説、性悪説/4道家思想

四、古代の仏教…236/  1転生からの解脱/2ヴェータンダ聖典群/3大乗仏教/

 4中国と日本のちがい/5即身成仏

五、永遠の生命…243/ 1不老長寿の願い/2死後の永生/3生まれかわり

六、中世の神道思想…248/ 1神道の自立/2様ざまな神道

七、中世の仏教思想…251/ 1無常観/2現世主義への傾き/3キリスト教の興隆

八、宋学ないし朱子学…255/ 1宇宙論/2理気二元論/3自己陶冶

九、陽明学および陽明学左派…261/ 1心即理/2知行合一/3陽明学派/

4李卓吾の思想/5性命の道

一〇、日本近世-現世主義の蔓延…266/ 1諸学の並立/2陽明学の影/3伊藤仁斎/

4人情を尊ぶ/5普遍主義/6朱王学の復興

一一、「元気」の拡散と変容…272/ 1貝原益軒『養生訓』/2日・中・韓の「元気」/

3原理離れ/4山水画の気の道/5北越雪譜/6「元気」の転換

一二、本居宣長―エロスの表現…263/ 1「和」の独自性/2もののあはれの説/

3伝統の発明

一三、平田篤胤の幽冥界…290/ 1幽明界への関心/2日本のパンテオン/3敵は仏教/

4死後の裁可/5歿後の篤胤



第五章 自然の「生命」、人間の「本能」……299

一、スピリチュアリスト、北村透谷…300/ 1国民の元気/2押川方義/

3スピリチュアリズム

二、リセプターとしての陽明学…307/ 1独歩の由来/2リセプターとしての陽明学

三、明治の陽明学…311/ 1内村鑑三/2天と我/3知識青年の煩悶と修養ブーム/

4修養の展開

四、藤村・蘆花・独歩―自然の「生命」…330/ 1科学的観察/2スケッチの意味/

3光景の変化を書く/4自然の生命/5自然との合一

五、岡倉天心―宇宙の「生命」…336/ 1東洋の理想/2芸術三段階論/

3東洋的ロマン主義

六、高山樗牛―本能満足主義…344/ 1人生の目的は幸福に/2美的生活を論ず/3波紋

七、性欲というテーマ…348/ 1ゾライズム/2旧主人

八、自然志向と宗教感情の高まり…353/ 1日露戦争後/2美しき天然/3宗教新時代

九、田園趣味のひろがり…360/  1田園都市構想/2貸家で解決/3「元気」の回復/

4三宅雪嶺『宇宙』/5幸田露伴『努力論』



第六章 生命主義哲学の誕生……373

一、西田幾多郎『善の研究』を読む…374/ 1純粋経験を唯一の実在として/

2初版への反応/3倉田百三の賞賛

二、lifeの研究者…378/ 1禅とテニス/2学問はlifeのためなり/

3人生、いかに生きるべきか

三、「我」の思想…385/  1独我論を超える/2東洋の我、西洋の我

四、愛と宗教…389/ 1浄土真宗/2真宗改革派/3宗教観の特徴/4真の自己を知る

五、宗教の本質…395/ 1真の自己として再生/2キリスト教神秘主義/

3東洋思想に立脚/4諸宗の根は同じ/5トルストイ

六、論理のしくみ…401/ 1意識/2循環論法/3/直覚

七、近代哲学を超える…405/ 1近代の不幸/2認識の出発点/

3近代‐対‐反近代の対立を超える

八、純粋経験…410/ 1純粋経験とは何か/2空/3統一性/4概念と真理

九、生命…415/ 1純粋経験の多様性/2生命の捕捉/3真生命/

4ヘーゲル論理学の換骨奪胎/5生物学/6整合性/7課題



第七章 大正生命主義の諸相……425

一、岩野泡鳴『神秘的半獣主義』…426/ 1メーテルランクの兄弟分/2刹那主義/

3泡鳴の批判の性格/4詩人、泡鳴/5恋愛論、国家論

三、人生観上の自然主義…433/ 1危険思想/2新自然主義へ/3片上天弦/

4夏目漱石『虞美人草』

四、島村抱月とその周辺…439/  1囚われたる文芸/2金子筑水/3純粋自然主義/

4生命主義の渦

五、木下尚江『懺悔』と白樺派…447/  1懺悔の流行/2バクテリアから人間まで/

3神聖なる生殖/4キリストやブッダを超える/5地球的本能/6自然派後の主観

六、上田敏と徳冨蘆花―生物の本能…454/ 1新道徳説/2ふたつの生命派/

3みゝずのたはごと/4生命主義のひろがり

七、押川方義と筧克彦―「宇宙の生命」への信仰…459/ 1諸派を超える宗教/

2大川周明訳『永遠の智慧』/3神道は世界の普遍思想/4日本民族一心同体の基礎  

/5「あらひとがみ」の観念/6伝統の組みかえ/7岩野泡鳴『古神道大義』

八、自然科学、文化主義、社会運動…468/ 1大正生命主義の多彩さ/

2二〇世紀初頭の自然科学/3人格主義と文化主義/4大杉栄と賀川豊彦/

5大本教の隆盛/6田辺元「文化の概念」

九、女性解放と自由恋愛の思想…477/ 1『青鞜』の創刊/2平塚らいてうと伊藤野枝/

3恋愛と結婚/4厨川白村『近代の恋愛観』/5日本の色恋/6恋愛思想のひろがり



第八章 大正生命主義の文芸とその周辺……488

一、にがい酸っぱい生の味…488/ 1日本象徴詩の出発/2煩悶とデカダンス/

3惨劇嗜好/4江戸懐古/5永井荷風「帰朝者の日記」/6近代的弊害への呪詛

二、北原白秋―叛逆と童心…498/ 1都会の憂愁/2谷崎潤一郎「刺青」/3文化批判/

4宗教的陶酔/5エロ・グロ、ファンタジー

三、牧水と夕暮―寂しい生命…509/ 1象徴論の導入/2若山牧水/3前田夕暮/

4生命の流動

四、斎藤茂吉―いのちの歌人…515/ 1いのちのあらはれ/2融合と乖離/3童馬慢語/

4短歌における写生の説/5太田水穂の批判

五、太田水穂―芭蕉再発見…522/ 1文芸批評家として/2歌論の展開/

3万有愛の思想/4芭蕉研究会/5それまでの芭蕉評価/6芭蕉評価の画期/

7生命主義歌論の展開

六、文壇の芭蕉ブーム…533/ 1芭蕉再評価のひろがり/2佐藤春夫「『風流』論」/

3心境小説/4萩原朔太郎「象徴の本質」

七、モダニズムへ…522/ 1『アララギ』/2釈迢空「歌の円寂するとき/3新感覚派/

 4「美の本質」と「檸檬」/5梶井基次郎―リアリスティック・シンボリズム/

 6前衛短歌の脈動/7生命の象徴表現/8その後の展開

八、与謝野晶子―踊る肉体…550/ 1自我の解放/2実感主義/3自我の正体/

4肉体の思想/5古い衣装/

九、宮沢賢治―小さな博物館…557/ 1汎生命のヴィジョン/2歌稿群/3春と修羅/

4ヘッケル受容/5童話世界/6自然征服観と生存闘争/7全体主義



第九章 生命主義の変容……567

一、志賀直哉―自我の空虚…568/ 1強い自我と弱い自我/2『和解』/3命のつながり  

  /4空虚を埋めるもの/5マルクス主義の台頭/

二、島崎藤村―家と血の幻想…576/ 1遺伝/2半封建的な家族制度/

3前近代の家族制度/4家の近代化/5家族の解体/6悪い血の物語/

7『新生』以降

三、建部遯吾と永井潜―民族優生学の思想…589/1人種・民族・国民/

2社会学から優生学へ/3永井潜『人性論』/4民族意識の転換/5国民優生法

四、文化相対主義から多文化主義へ…597/ 1文化相対主義/2文化相対主義の構図/

3多文化主義の季節/4対中国戦争の戦略転換/5皇民化政策/6アジアはひとつ

五、多文化主義から日本主義へ…609/ 1高群逸枝の遍歴/2恋愛創生/

3唯物論、唯心論の対立を超える/4和辻哲郎―「日本の使命」/

5タウトの天皇芸術論/6西田幾多郎『日本文化の問題』

七、皇国ファナティズムへ…616/ 1思想の分水嶺/2「日本精神」をめぐるせめぎあい/

3大乗的生命主義/4岡本かの子『仏教読本』/5滅私奉公の合唱へ

八、「大東亜共栄圏」の思想…629/ 1互助連携のタテマエ/2『世界史的立場と日本』/

3世界史的立場の破綻/4「近代の超克」座談会/5滅私奉公の哲学



第一〇章 第二次大戦後の生命観……641

一、戦後の再出発…642/ 1生きることが全部/2滅私奉公の裏がえし/

3「堕落論」再考/4自我の葛藤/5生命観/6天皇制論

二、出なおし史観…651/ 1近代化主義/2明治以来の天皇制イデオロギー/

3ダブル・スタンダード/4生命への畏敬/5様ざまな旅立ち

三、岡本太郎―民族の伝統…661/ 1岡本太郎と坂口安吾/2生命主義/

3国際前衛画家の出発/4縄文賛美の根方/5伝統の創造/6複合文化論

四、高見順―生命主義の末路…672/ 1生命賛歌/2生命からの疎隔/

3『この神のへど』/4『生命の樹』/5『いやな感じ』/6読まれそこないの傑作  

/7デカダンスの極み

五、丸山真男の転向…687/ 1古層という発想/2つぎつぎになりゆくいきほい/

3進化論受容をめぐって/4歴史意識の貧困/5歴史意識と生命観/6生命観の貧困

六、復活する生命主義…699/ 1戦後思想へのリアクション/2三島事件と大江健三郎/

  3石牟礼道子『苦海浄土』/4井伏鱒二『黒い雨』/

5大庭みな子―大きな生命の物語

八、生命というテーマ…709 1大きな生命の浮上/2癒しをめぐって/

3「私小説」伝統の評価を変える



第一一章 日本武道と神秘体験……717

一、武道の国際化…718/ 1武術から武道へ/2東洋の神秘への関心

二、柔道、その近代化…721/ 1柔術から柔道へ/2弓術の近代化

三、阿波研造の弓道思想…724/ 1宇宙と合一/2出発期/3禅と陽明学/

4宇宙との合一/5宗教新時代のなかで

四、武道のおける神秘体験…732/ 1植芝盛平/2阿波研造の神道思想/3神ながらの道/

4平和のための武道

五、戦前世代の生命観…738/ 1土着の自然法?/2自然の大生命という思想



第一二章 新しい生命観を求めて……743

一、人類生存の危機―モノーと野間宏…744/1西洋近代への告発/2野間宏の哲学/

  3漱石「現代日本の開化」/4なぜ、漱石だったか/5人間中心主義の検討/

6モノー『偶然と必然』/7野間宏の批判/8知の編成のちがい/

9総合化の道を問いなおす/ 10科学コンプレックス

二、自然保護と生態系の思想…762/ 1公害先進国、日本/2日本文化の問題として/

3生態系の思想/4エコロジー/5日本の環境保護思想/

6「自然との一体化」の功罪/7近代の超克史観/8環境保護の現在

三、生物学の現在…776/ 1分子生物学―変わる進化論/2サイバネティックス/

3情報理論/4遺伝的プログラム/5言語プログラム?/6特定集団のルール/

7動物行動学/8環世界/9現象学的世界

四、学の総合化…785/ 1有機体の哲学/2進化の頂点に立って/3システム理論/

  4一般システム論/5システム論の展開/6ニューサイエンス/7複雑系

五、解決に向けて…812/ 1人間生存の危機の拡大/2近現代史の編みかえ/

3生命主義の諸傾向/ 4伝統思想との関係/5生命観の探究/6生物の合目的性/

7擬人化

六、解決のための原理…824/ 1人間の超越性/2生命観中心法/3原理主義の廃棄


近代作家研究ツール案内
加藤一夫(詩人)
【1・2】加藤一夫著書目録 上・下 参考文献目録(戦後編)・補遺1・2→「加藤一夫研究」1-3 同研究会1987・89


その他(宮沢賢治の農民芸術・・・宮澤賢治〈農民芸術概論〉の地平)

加藤一夫に関しては紅野敏郎(文学vol28、1960-4、岩波)、『科学と文芸』解説・総目次・索引、不二出版1987、解説が参考になる。
東京洛陽堂が、雑誌白樺から撤退した後、一時雑誌「科学と文芸」発行(1918年1~6月号)を請け負っている。

東京洛陽堂発の大正生命主義関係文献。無関係のものもある?


堺利彦が笑ったというが、加藤一夫の思想というのはたった一年半の農業体験から得られたものらしい。わたしも堺と同感。




















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