・・・ セーラー服歌人・鳥居さん ・・・
♦ 公田耕一投稿歌のなき朝刊にわれの知人の死亡記事あり 松井多絵子
昨日の☀朝刊にオカッパで大きな瞳の女の子が、「初の歌集を出すセーラー服の歌人」として取り上げられていた。「鳥居 さん」という姓だけ。年齢も本名も明かさず、不登校や夜の街で働く人と歌会を開く 誰とも先入観なく向き合いたいから。1首1行。すっくと立つ短歌に一目ぼれした。短歌があるから私はひとりぼっちじゃない」。その鳥居さんについて少し調べてみた。
鳥井さんが2歳のときに両親が離婚。母の実家で暮すが不仲で夜逃げして東京へ、母が自殺、何歳の頃か書いていない。新宿の児童相談所に保護され、養護施設に入所し虐待の中で数年間を過ごし、里親に引き取られたが追い出されホームレス生活を数か月、、。
❤ 揃えられ主人の帰りを待っている飛び降りたことを知らぬ革靴
❤ 刃は肉を斬るものだった肌色の足に刺さった刺身包丁
この2首は2012年の現代歌人協会全国短歌大会で佳作になった鳥居さんの歌。
鳥井さんは中学はあまり出席していない。施設にあった新聞を辞書を引きながら読み、字を覚えた。勉強させられている子供より、知りたくて本を読んでいる子の方が優秀だ。図書館で読む歌集は穂村弘や吉川宏志、もし不幸な女性歌人の歌集ばかり読んでいたら、彼女は自身を悲劇のヒロインにしてしまったかもしれない。掲出の歌は冷静に母の自死を詠んでいる。刺身包丁も若い女性の歌らしくない。穂村弘や吉川宏志のシャープな感性が彼女に伝わっているのだ。「育つ環境で義務教育もままならない人がいるよ、と伝えたい」 だから成人した今も、学ぶことの象徴としてセーラー服を着る。鳥居さんは。
鳥居さん 私もセーラー服を着たくなりました。 2月4日 松井多絵子
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