えくぼ

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居場所ない人

2014-05-22 09:15:56 | 歌う

            「居場所ない人」

❤炊き出しのカレーをもとめる人びとの列は左へ左へと曲がる  松井多絵子

 『JR上野駅公園口』という小説を柳美里が刊行した。構想から12年というホームレスの苦痛と原発事故の被災者の苦痛がテーマらしい。上野駅公園口はクラブツーリズムの集合場所、ここから旅がはじまる、わくわくする場所。私には天国への入り口だが、この小説では地獄への入り口なのか。5月20日朝日夕刊の40何歳かの作家・柳美里の視線がコワイ。

 長い出稼ぎの末に家を出てホームレスになった男は昭和8年、天皇と同じ年に生まれた。73年後、日本学士院から帰る天皇皇后の車を上野公園で見送る。その日は、ホームレスの「山狩り」と呼ばれる「特別清掃」の日で、コヤをたたんで公園の外に出た。 そのとき。
目の前を過ぎる天皇の車。 まるで自分の人生を見送るように車を見送くるホームレス。

 柳美里はなぜホームレスを描こうとしたのか。♠ 「私に一貫しているのは居場所のない人のために書くこと。自分自身、家にも学校にも居場所がなかったし、日本人でも韓国人でもないという部分もある。3・11後に構想が大きく変わり福島県に通い住民と語り合う番組♠ふたりとひとり を始めて先週の放送で108回になる」 そうである。

 「上野にはいろんな歴史の地層が重なっているので、これをめくっていきたかった。ホームレスと、天皇がすれ違うのは一瞬だが、日本の歴史は天皇の生きた時代でもあるので、正面から取り組んだ」。柳美里の腹の底からの声が私に迫る。

 ❤住むところあれど心の住処なきわれを羽毛のコートが包む 
                         歌集 『厚着の王さま』より

        5月22日  柳美里さんの熱気で朝から暑い。 松井多絵子                            

          



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