→ 荻原朔太郎賞は →
優れた現代詩に贈られる第23回荻原朔太郎賞はイタリア在住の詩人・川田絢音(74)の詩集✿「雁」(思潮社)が選ばれた。最年長の受賞である。ポーランドのアウシュビッツなど欧州に残る第二次大戦の傷痕やその背景を、「悲惨な言葉を使わず、丁寧に選ばれた言葉で表現した」などと評価された。川田絢音については今のところ情報不足なので、後日のブログで書きたい。今日は2004年11月に私が訪れた▲アウシュビッツの10首を、、。
有刺鉄線 九首 松井多絵子
車窓より三度も見たりクラクフの民家の庭の黄菊の群れを
この路を戦車も走ったことだろう並木の枝葉をゆさぶりながら
いま我は地球で最もおぞましい所へ近づくアウシュビッツへ
二十八の囚人棟はおおいなる団地ぞ無念の死者たちが住む
虐殺の行われし棟そのなかへ入りゆく我を我は怖れる
世にあらばわれと等しき老人か集団虐殺されしおさなご
おさなごの遺品の服あり靴もあり囚人棟はいま博物館
アウシュビッツを去りゆくわれの背後には有刺鉄線有刺鉄線
わたくしの歌ではないというような一首が浮かび沈みてゆけり
歌集『厚着の王さま』より
人間の敵は人間なんて、やりきれませんね。
9月1日 松井多絵子
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