SAHARA「砂漠の思い出」SABAKU 松井多絵子
この冬も変わりなく居間の出窓を飾っているサボテンは、チュニジアから持ち帰った二枚のサボテンが繁殖したものである。10年前、私は格安ツアーでチュニジアを一周した。あの楽しかった8日間が夢ではなかった証のようにサボテンは私のそばにいてくれる。
サハラ砂漠の近くの道端のサボテンの親指ほどの葉を取り、ビニール袋に入れ、化粧ポーチに入れ、バッグの底に入れて日本に持ち帰った。空港でのチェックをくぐりぬけた盗品の二枚のサボテンの葉は、我が家で根づき繁殖し5つの鉢植えになったのである。大好きな国チュニジアのお隣のアルジェリアが恐ろしい国になってしまったなんて。 歌集『えくぼ』より思い出の10首をご紹介いたします。
★ 「足あと」 ★ 松井多絵子
サングラスかければ砂漠はあの冬の東尋坊の荒海となる
ラクダの背に跨り二階のベランダの手すりに跨りゆれるがごとし
われの乗るラクダよお前は何歳か贅肉のなきこの背この首
風が来て砂が飛びかい目つむれば風のいさかう音のみとなる
まなうらよサハラ砂漠の風紋をこの線描を忘れてはならぬ
のぼりゆく最後のひとりとなり我は砂丘を見上げ空を見上げる
あえぎつつ砂丘を登りのぼるとき遠き夕日に見られていたり
どうしたらいいのだろうというような砂丘斜面のわれの足あと
オアシスの店にてバラの花を買う風の作りし砂岩のバラを
「孤独とは砂漠のことだと思います」サハラより日本へ葉書
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