えくぼ

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🍂 枯れ木を見た時

2018-12-10 16:06:08 | 歌う
整理整頓が苦手な私だが新しい年のために部屋を片付けた。が20年も前の「未来」を開いてこんな記事、私が書いたのに全く記憶のない文に出くわした。

「枯れ木を見た時」
二年ぶりだろうか、五月の東京歌会に出席した。遅れて入室したとき何人もの知らない方々の視線にとまどい、緊張した。
☁ 雲が来て枯れ木にさくらさくら咲き吉野の山がわたくしを待つ

私の出詠歌である。三人の評者から「軽い」「軽い」「さくらさくら咲き」は賛成できないと言われ、不評だった。
この歌は、すべての葉を失った桜の木を見ながら作った。枯れ木の梢の上にひろがる雲をさくらに見たて、吉野山に咲き盛るさくらを想う、青春への回帰を夢みる私のせつない気持ち、軽いどころか重い重い一首の筈である。

血汐の流れが渋滞しがちな私の体は、真冬に外出すれば凍りそうになる。枯れ木は冬ごとに老化してゆく私をクロ一ズアップしているように見えてしまう。しかし、評者たちの共感を得ることができなかったのは、おそらく表現の稚拙さゆえであろう。
1998年 8月号「未来」より

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