「白がふるえる」
❤この秋の旅の予定の記されぬ手帳の空白、白がふるえる
歌集『厚着の王さま』より
四年前の今ごろ、妹の死が迫っていた。癌の手術後、6年に及ぶ闘病生活の末に死ななければならなかった。終戦の年に生まれた妹が癌と戦い癌に負けてしまった。無念である。旅が大好きな私は旅行できなかった。とくに最後の一年はせいぜい日帰りの旅。それを気にしていたのは妹、死が迫る妹のこころの重荷になったことをおもうと辛い。
今日は8月最後の日曜日だ。朝刊をひらいて、又ひらいたら空白の1頁。しかしこの空白はふるえてはいない。ゆったりひろがる空白。ぎっしり詰まった記事を見たり読んだりした後の空間である。しばしこの白い空間に寛ぐ。毎日が日曜日の私でもしばし寛ぐのだから、仕事から解放された人々は更にくつろげるか、いや折角の日曜を充実させたい人々にはもの足りないかもしれない この大いなる空白は。しかしこの頁の左下には三行の手書きの言葉が横たわっている。
ゆっくり自分と、話してください。
何時間悩んだって
ペンは怒りませんから。
8月25日 これからゆっくり私と話します。ペンを持たないで。 松井多絵子
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