えくぼ

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佐藤弓生さんの雨

2015-07-15 08:35:14 | 歌う

            ☂ 佐藤弓生さんの雨 ☂

 6月の小雨の昼の郵便受けに歌集『モーヴ色のあめふる』。あじさいの咲き始めた頃だった。淡い明るい青のカバーに包まれた歌集。若い紫陽花をいただいたような気がした。

 現代歌人シリーズ4.佐藤弓生第4歌集を開く。2001年に角川短歌賞を受賞したのち詩集や短歌の入門書を刊行し、歌人集団「かばん」の会員としても活躍されている。読みながら私の好きな歌につけた水色の付箋がまるで紫陽花が次々に咲くのようである。

     ◉ 手で包むこどものあたまあたたかい種がいっぱい詰まってそうな

 まず、「種がいっぱい詰まってそうな」に感服する。可能性を信じて期待するお子さんへの愛情が伝わってくる。自身の手で包んだ子供の頭のあたたかさを読者に伝える

     ◉ 乾くよう乾かないよう洗い髪つめたい月にさらして歩く

     ◉ 青空 よくよく嵌めておかないとこのまま抜けてゆきそうな首

     ◉ ふくらはぎに陽射しひくくふれてくるプラットホームもう脚ばかり

 洗い髪が乾くまでも一首にしてしまう、青空を見上げていたら首が空に引き抜かれるそうになると体で詠う、陽射しにふれる「ふくらはぎ」、 柔らかい表現だが感覚は鋭い。

     ◉ 玉砂利のひとつがひょんと飛び出して草にまぎれる雨あがりです

     ◉ 歌声・・・・・・と思えば窓を喉ほそくながくななめに奔りゆく雨

     ◉ 雨ん中はだしで行きたいな散歩 恋をしらない仔猫みたいに

 4日前から猛暑、矢のような光線が怖くて私は夜スーパーへ行く。草取りも水遣りも夜の仕事。小雨が降ってほしい、佐藤弓生さんのモーヴ色のあめが降ってほしい。

                     7月15日   松井多絵子


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