芥川賞の『コンビニ人間』
7月19日、村田沙耶香の『コンビニ人間』が芥川賞に選ばれた。「コンビニは私の聖域、コンビニというものへの愛情を作品にできたのはよかった」と語る沙耶香は大学生の頃からコンビニでアルバイトをしているらしい。受賞作の主人公はコンビニでアルバイトをしている時だけ自身の存在意識を感じられる30代の女性。世間の基準に照らして普通とみなされないものを疎外してしまう社会の偏狭さを、独特のユーモアを包んで描いた。
村田沙耶香は36歳、短歌でも30代前後の人びとにコンビニの歌が多い。昨年末に刊行の山田航・『桜前線開架宣言』のなかのコンビニの歌を4首抄出する。
♦ コンビニは安心できる絶対に「ほんもの」だけは置いてないから
松木秀(短歌人)
♦ コンビニに買うおにぎりを吟味せりかなしみはただの速度にすぎず
内山晶太(短歌人)
♦ コンビニの蛍光灯は休みなく働かされて殺されました
木下龍也(投稿家)
♦ コンヴィニに買ったペットボトルの水飲み切る音がレクイエムだと
藪内亮輔(塔)
コンビニは私たちの近くにあり必需品を売っている、夜中まで私たちと関わる。現代の世相に密着している場は小説に書かれ、短歌にも詠まれ読者は共感しやすいのだ。
コンビニはいつ眠るのか真夜中もあかりのなかに動くにんげん
7月22日 松井多絵子
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