☀ 法橋ひらく歌集をひらく ☀
郵便受けをひらいたら歌集が。この2月に初めて会った法橋ひらく青年の第一歌集。
新鋭短歌シリーズNO21.彼が「かばん」に入会したのは2008年。新人なのに自在に詠んでいる。◆それはとても速くて永い が歌集名だ。それとは何か。光ではないか。
♦ どれだけ覚えておけるんやろう真夜中の砂丘を駆けて花火を上げた
この歌から歌集は始まっている。標準語で話していた法橋青年が関西の人であることを初めて知る。夢のなかでの花火か。光の速さ。花火は消えたのちに爆音が響く。
♦ なれていくことが強さじゃない あたらしく傷つきながら光に向え
やさしく楽しい法橋青年、それだけじゃない、パワーがある。まだ32歳の鋭い感性。
♦ 寂しさを集めて光るネオン街ざわめきはみな異国語めいて
人間が造った夜を飾るネオンは偽りの光だ。太陽の光には消されてしまう儚い光だ。
♦ 光るものすべてを窓と思うときみんなどこかへ帰るひとたち
光は陰を生む。鮮やかな光には濃い陰が。近頃わたしは陰ばかり気になるが、、。
♦ 光、ってつぶやきながら目を閉じるいつでも凪いだ海が広がる
光は正視できない。目を閉じれば穏やかな海が広がる、どこの海原だろうか。
♦ 届くものだけが光じゃないけれど届かなかった光のことは
わたしも気になる。わたしを逸れてしまった光の行方を。行方不明の光をおもう。ひらく様、歳月はとても速く過ぎますよ。光陰矢の如し、1日、1日を大切になさいますように。
4月6日 松井多絵子