{ 徘徊する言葉たち }
7月8日朝日夕刊 ✿「あるきだす言葉たち」は私には「徘徊する言葉たち」である。作者の望月裕二郎は1986年生まれ。認知症には関わりのない年齢である。短歌をはじめたのは何歳頃か。誰に師事したのかも私は知らない。結社には所属していないらしい。掲載された 「また」 は十首の連作。「なんだろう、この言葉たちは」 と思う。不思議だなあと。
♠ あしたは夜に夜はきのうに背おわれて(もういいかい) 空にはのぼるなよ
♠ ふつうならあるいてむかうところだがふつうがわたしをとおりぬけてく
※ この一首はすべて平仮名である。「ふつう」が2度詠まれている。「普通」なのか。
♠ 手のとどくはんいにわたしの足がある足は手をのばし夜につづいた
※ 結句の飛躍に驚く。このひとは年をとるほど幼くなるかもしれない。
♠ あしたは夜に夜はきのうに背おわれてなんだまたここかさっきとおった
※ この一連には昼がない。ほとんど夜だ。昼も夜のように茫々としているのか。
♠ 棒はふるもんだろ (ぶらぶら) さんぽしてこの世を棒にふってどうする
※ 望月裕二郎サマ この世を棒にふらないでくださいね。
夜型のわたしはこの夏から朝型になります。 7月10日 松井多絵子