軽井沢からの通信ときどき3D

移住して10年目に入りました、ここでの生活と自然を写真と動画で発信しています

花粉症

2024-04-05 00:00:00 | 日記
 子どもの頃からアレルギーには縁がないと思っていて、成人後も、周囲で花粉症を発症する人が出てきても、自分には関係のないことだと思っていたが、違っていた。

 広島・三次での単身赴任生活を終え、再び神奈川県の自宅に戻り、東京への電車通勤が始まったのは、1997年のことであった。

 自宅からはバスで最寄り駅まで行くのであったが、ある朝、混雑するバスの車内で吊革につかまっていると、突然水のようなサラサラの鼻水がドッと出てきた。それまでに経験したことの無いような感覚であったが、これが花粉症の始まりであった。

 勤務先の飯田橋のオフィスに着いてからも、この鼻水は止まらず、瞬く間にティッシュペーパーの箱が空になってしまい、その頃には鼻が赤くなり、ヒリヒリしてきていた。

 近くの薬局にティッシュペーパーを買いに行ったが、店員は私の赤くなった鼻に気づいたのか、少し高級なカシミヤタッチのティッシュペーパーを勧めてくれた。

 こうして、その後現在まで続く花粉症との戦いが始まった。この最初の日のことは今でもよく覚えているが、その後どのように推移し、対処してきたのか、今ではよく思い出せない。とにかくこの花粉症で医者に行って相談するということはなかった。医者嫌いということではないのだが。

 飯田橋での勤務はそう長く続かず、翌1998年には新潟・上越に再び転勤になって、それまでとは全く異質な仕事をすることになった。目まぐるしく環境が変化していたからだと思うが、この後上越で過ごした12年間ほどについても、花粉症症状にどう対処してきたのか記憶はない。症状が軽減していたのかもしれない。

 花粉症のことで医者に相談に出かけたのは、ずっと後になってからで、上越から、東京・浅草橋に転勤してからのことで2010年頃のことであった。症状が強くなり、我慢できなくなってきたからだろうと思う。

 ここで、初めて花粉症の治療薬を処方されて飲み始めた。しかし、この薬の影響は強く、飲んでしばらくすると朦朧となり、全くと言っていいほど仕事にならないことが判った。

 余りのことに、再び医師に相談に行き、その結果、薬の種類を変えていただいた。

 新しい薬は眠気も起きず、花粉症の症状も抑えることができたので、その後ずっとこの薬を処方してもらうことにした。浅草橋の勤務先で定年を迎え、軽井沢に定住するようになってからも、現在まで同種の薬を飲み続けている。

 ここ数年は、それまでは春先からゴールデンウィーク頃まで飲んでいた薬だが、秋にも症状が出るようになったので、年に2回、数か月間づつ、薬のお世話になるようになった。飲み薬に加えて、目薬・喉スプレー・鼻スプレーも常備して対応している。 

 この花粉症の主原因はスギ花粉とされていて、TVの報道番組などでもスギ花粉の飛散情報が出されていることは、ご承知の通りかと思うが、一向に有効な対策が打たれていないと感じていた。

 我が家のお茶の間会談では、これは国と製薬会社の陰謀に違いなく、国会議員には全員花粉症の人を選出して、この苦しみを知った上で、国として有効な対策を打ってもらわなければならないのではないか、といった過激な意見が出るようになった。妻ももちろん花粉症を発症している。

 そうした中、我々の秘密会談が盗聴されていたのか、昨年からだったと思うが、購読紙のニュースにも、政府が花粉症対策に乗り出したという記事が出るようになった。

 内閣官房ホームページを見ると、「花粉症に関する関係閣僚会議」のページがあり、次のように書かれている。

 「花粉症について、適切な実態把握を行うとともに、発生源対策や飛散対策、予防・治療法の充実等に、関係行政機関の緊密な連携の下、政府一体となって取り組むため、『花粉症に関する関係閣僚会議』を開催しています。 」

 とあり、いよいよ政府も本格的に花粉症対策に乗り出したようで、この閣僚会議は令和5年4月14日に第1回を開催し、現在令和6年2月1日の第4回会議を終えたところである。

 出席者は第1回が:岸田内閣総理大臣、松野内閣官房長官、野村農林水産大臣、西村環境大臣、永岡文部科学大臣、加藤厚生労働大臣、西村経済産業大臣、斉藤国土交通大臣、木原内閣官房副長官、磯﨑内閣官房副長官、栗生内閣官房副長官、藤井内閣官房副長官補

であったが、その後昨年末に発覚した派閥パーティー券収入の「キックバック問題」により、閣僚が次々と交替しており、第4回では、一堂に会することが困難になったためか、持ち回り開催となっている。

 第1回会議(2023.4.14)では、加藤厚生労働大臣から、次のような現状報告があった。

 「花粉症の現状について、関係学会の調査によると、花粉症の有病率は、2019年時点では、花粉症全体で42.5%、スギ花粉症で38.8%である。いずれも 10年間で10%以上増加している。 また、花粉症を含むアレルギー性鼻炎に係る医療費の推計は、保険診療で約3,600億円、市販薬で約400 億円となっている。・・・」

 また、野村農林水産大臣からは、次の発言があった。

 「我が国のスギ人工林の現状について、スギ花粉の発生源となるスギ人工林の面積は、全国で約440万ha であり、伐採の対象となる50年生を超えるものが5割以上を占 めている。これまでの花粉発生源対策について、花粉の少ない多様で健全な森林に転換するため、スギ人工林等の伐採・利用、花粉の少ない苗木等による植替えなどを行うとともに、スギ花粉の発生を抑えるため、スギ花粉飛散防止剤の開発支援 を行っている。・・・」

 他の大臣からの発言の後、最後に岸田首相から次の発言があった。

 「花粉症は、これまで長い間、各省庁で取組が行われて来たが、いまだ多くの国民を悩ませ続けている、我が国の社会問題と言えるもの。・・・ 以下の取組を対策の3本柱として、来年の飛散期を見据えた施策から今後10年を視野に入れた施策まで、対策の全体像を取りまとめてほしい。
 第1に、官民を通じたスギの伐採加速化計画の策定・実行、外国材から国内材への転換による
  需要拡大、花粉 の少ない健全な森林への転換などの発生源対策
 第2に、スーパーコンピュータやAIを活用した花粉飛散予報の抜本的改善や予報内容の充実、
  飛散防止剤の実用化などの飛散対策
 第3に、舌下免疫療法など根治療法の普及に向けた環境整備、花粉症対策製品等の開発・普及
  などの曝露(ばくろ)発症対策。 ・・・ 」

 第2回会議(2023.5.30)では、前回の会議で岸田首相が指示した3つの対策について各大臣から対応案が示された。
 野村農林水産大臣からは、
 1.発生源対策として、10年後の令和15年度には花粉発生源となるスギ人工林の431万 ha
   を約2割減少させることを目指して、取組を集中的に 推進する。・・・将来的には花粉発生
   量の半減を目指し、「花粉発生源スギ人工林減少推進計画」を速やかに策定し、着実に
   実行していく。・・・
   スギ苗木全体に占める花粉の少ない苗木の生産割合を現状の5割から9割以上に引 き上
   げる。・・・
 2.飛散対策としては、スギ花粉飛散防止剤の開発を促進し、5年後に実用化の目処を立て、
   速やかに実行することを目指していく。
 3.発症・曝露対策としては、花粉症の症状緩和を目指し、農研機構が開発したスギ花粉米に
   ついて、今後、医薬品としての実用化に向け、更なる臨床研究等を実施していく。

 加藤厚生労働大臣からは、
 1.発症・曝露対策として、花粉症の治療法のうち、特に対症療法では効果が不十分な方に
   対して根治が期待できるアレルゲン免疫療法に関する適切な情報提供を推進す る。
   また、アレルゲン免疫療法のうち、多くの方が選択されている舌下免疫療法について、
   年間の治療薬供給量を、現時点で同治療法を活用することが見込まれる患者の数も見越し
   て、今後5年以内に、現在の約25万人分から約100万人分へと増加させるべく、 治療薬
   の増産に向けた要請を行うとともに、体制整備への支援を実施していく。

 といった発言があり、これに対して岸田首相が、最後に次のように締めくくった。

 「花粉症は、これまで長い間、課題は指摘されて来たが、実効的な対策が行われず、未だ多くの国民を悩ませ続けている、我が国の社会問題と言えるもの。一朝一夕で解決す るものではなく、しっかりと将来を見据えて取組を着実に実行することが必要。 
 この社会問題に対応するため、まず第一に、発生源対策を強力に進める。我が国は、戦 時中に荒廃した森林について、国土保全や戦後の旺盛な木材需要に応える観点から、スギ人工林を造成して来たが、現在は花粉発生源の一つとなってしまっている。野村大臣においては、このスギ人工林について、林野庁の総力を挙げて、伐採・植え替え・利用の取組を抜本的・集中的に、加速してほしい。
 第二に、飛散対策として、林野庁・環境省で全国調査を実施しつつ、気象庁においてス ーパーコンピューターやAIを活用し、民間事業者による花粉飛散量の予測の精度向 上を支援する。
 そして第三に、発症・曝露対策として、アレルゲン免疫療法の治療薬の増産・治療環境 整備を進めるとともに、日々の予防行動について国民の皆様にしっかりと伝えていく。」

 また、この第2回会議では3本柱について、政府一丸となって取り組むとして、それぞれに対する工程表が示された。次のようである。



    
花粉症対策の3本柱の工程表(内閣官房 「花粉症に関する関係閣僚会議(第2回)」資料2から引用)

 花粉症への対策は、我々国民としてできることは、すでに取り組んできている。政府に最も期待したいのは、こうした対処をしなくてもよい環境づくりで、発生源対策ではないかと思う。これは国民レベルや民間レベルでは対処できないからである。

 その点について見ると、発生源対策には2つあって、1つは現在あるスギ人工林の伐採である。要は発生源を直ちに断ち切る方策である。我々としてはまずこれを望みたい。
 2つ目は長期的な展望に立ち、花粉の少ないスギに植え替える方策である。

 しかし、2本目と3本目の柱の工程表が3年計画であるのに対し、1本目の柱である発生源対策は令和15年度までと、10年計画になっていて、その目標を見ると、伐採によりスギ人工林を約2割減少させるとあり、将来的には花粉発生量の半減を目指すとなっている。

 改めて、この部分の対策について見ると、<現状>と<今後の取り組み>についての解説は次のようであり、伐採と花粉の少ないスギへの植え替えを合わせて、約30年後に花粉発生量を半減させると言う計画である。

 「<現状> これまでも、花粉発生源対策として、スギ人工林を伐採し、花粉の少ないスギ苗木や他樹種による植替え等を進めてきた。 花粉の少ないスギ苗木の生産量は10年前の約140万本から10 倍の約1,500万本へと飛躍的に伸び、全スギ苗木の生産本数のうち約5割を占めるまでに増加している。しかしながら、花粉の少ないスギ苗木による植替えは、これまでの累計でも約4万 haと、未だ全スギ人工林面積の1%以下の水準である。このため、花粉の少ないスギ苗木の更なる生産拡大が必要である。 また、人口がさらに減少していく中で、伐採や植替えを行うために は、生産性の向上とともに林業労働力の確保が課題である。 加えて、木材需要の約4割を占める建築分野において、建築基準の合理化、中・大規模の木造建築物プロジェクトや地域材を活用した住 宅整備の促進、輸出の促進などに取り組んで来たところであるが、スギ材需要の一層の拡大に向けた環境整備が必要である。 
<今後の取組> 10年後の令和15年度(2033年度)には花粉の発生源となるスギ人工林を前述の431万haから約2割減少させることを目指して、以下に掲げる取組を集中的に推進する。これらの取組により、スギ人工林由来の花粉が約2割減少すれば、例えば、花粉量の多かった今シー ズンであっても平年並みの水準まで花粉量を減少させる効果が期待できる。また、将来的(約30年後)には、継続した取組により花粉発 生量の半減を目指す。 」

 もっと花粉症に苦しんでいる国会議員の比率を増やさなければならないのではと感じる今回の「政府一体となった取り組み」である。

 この中でも取り上げられているが、花粉の少ないスギというものが見いだされて、植林されている。これは、平成4年に富山県の神社に植わっていたスギの中から初めて発見されたものだという。その後の研究で、スギの中には無花粉に関連する遺伝子を持つものが自然の中で一定の割合で存在することが分かり、また、その遺伝子を持つもの同士を人工交配させると、無花粉スギが生まれることがわかったという。


 上の写真では、明らかに花粉の少ない様子がわかる。こうしたスギ品種の割合を増やしていくことで、スギ花粉症の発生を根本から改善することを期待したいが、こうした遺伝子をもつスギ苗木の生産量は次図のようであり、急速に増えているように見えるが、絶対量でみると、全国のスギを置き換えるにはまだまだ時間を要するというのが実態である。先の説明の通りである。

 
 
 

 



  

 
 

 

  

 

 


 
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 突然死? | トップ | 確定申告と会計責任者 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

日記」カテゴリの最新記事