軽井沢からの通信ときどき3D

移住して10年目に入りました、ここでの生活と自然を写真と動画で発信しています

ジャコウアゲハ(3)前蛹・蛹化

2022-07-22 00:00:00 | 
 入手時に2齢と3齢が混じった状態であったジャコウアゲハの幼虫は、それぞれ脱皮を繰り返して、10日目には4齢と終齢になった。食草のウマノスズクサをよく食べて、1日に1回の葉の補充では追いつかず、葉を食べつくして、飼育箱の中を這いまわるものも出てくる。

 2齢から4齢の幼虫は、黒色→茶色→黒色と変化し、脱皮が近くなると、それと判るようになっていたのであったが、終齢幼虫の体色は脱皮後成長してもほとんど黒いままで変化しないようである。

 7月2日の朝、一番早く終齢になっていた1頭が、餌の葉がある瓶を離れて、飼育箱の側面に止まっていた。瓶に挿したウマノスズクサの葉には食べた形跡がなくて、見ると瓶の傍らには水分を多く含んだ便のかたまりのようなものがある。これは、以前キアゲハを飼育した時にも経験したことで、終齢幼虫が蛹化する時の行動と同じである。

 一般にアゲハチョウの仲間は終齢幼虫になるとそれまでの黒褐色から緑色に変化して、それと判るものが多いが、今回のジャコウアゲハの場合は、終齢になっても大きな変化がないので、脱皮の様子を見てきたものの本当に終齢幼虫かどうか、今一つ確信が持てないでいたが、これで確認ができたことになる。
 
 終齢幼虫は餌を離れて長い距離を移動すると言われる。瓶を離れて徘徊し、飼育ケースの側面や蓋部に移動してそこに糸をかけて前蛹になると、もう撮影のために移動させることは難しくなる。そこで一計を案じて、幼虫用の無限軌道を作ることにした。といっても、らせん状に針金を巻いたものを作って割りばしに固定し、これまでのウマノスズクサの葉に替えて餌用の瓶に刺しただけであるが、これを伝って移動することで、幼虫が長い距離を這ったと感じることを期待したのである。

 それでも脱走をするかもしれず、2Lのペットボトルにこの螺旋軌道を挿した瓶と、念のためにこれまでの餌用のウマノスズクサの葉を挿した瓶の両方を入れて、他の幼虫から隔離して様子を見ることにした。再び餌を食べ始めればまだ蛹化には早いし、針金の上で移動を繰り返してどこかに静止してしまえば、そこで蛹化の可能性がある。初めてのジャコウアゲハ幼虫の飼育であり、ビデオ撮影が主目的なので、前蛹になる場所にも気を遣う。果たしてどちらだろうか。

 次の映像は2番目と3番目に、液状便をして徘徊しはじめた別の終齢幼虫を、同じような螺旋状の針金に止まらせて撮影したものだが、これと同様のものを最初の終齢幼虫①にも用意した。

 
ジャコウアゲハの終齢幼虫が螺旋状の針金を移動する様子(2022.7.3, 8:05AM~8:55AM 30倍タイムラプスで撮影)

 夕方帰宅してみると、期待通りこの幼虫①は螺旋に巻いた針金の途中に静止し、この場所で前蛹になることを決めたようであった。支柱の周りに巡らせていたこの針金を外して、撮影しやすいようにセットしなおして、ビデオ撮影を開始した。
 
 針金上に位置を定めて静止してからしばらくすると、幼虫は反転してしっぽの位置に念入りに糸を吐き始めた。これは蛹化後にしっぽの部分をしっかりと固定し、落下を防ぐための重要な作業である。しっぽの位置が決まると、次は糸かけの行動に移る。丁度胸のあたりに糸をかけて、からだを支えるのである。

 
ジャコウアゲハ終齢幼虫の糸かけ(2022.7.2 19:03PM~20:33PM 30倍タイムラプスで撮影後編集)

 チョウが蛹になる時には、帯蛹と垂蛹の二通りの形態がある。アゲハチョウやシロチョウの仲間は帯蛹に、タテハチョウの仲間は垂蛹になるのだが、ジャコウアゲハは帯蛹であり、しっぽの先と体の胸部付近に輪を描くように糸を吐いてこれで体を支える。

 一方、オオムラサキやツマグロヒョウモンなどは垂蛹で、まず前蛹になった時にしっぽの先だけでぶら下がり、そのまま脱皮して蛹になるが、前蛹時に丹念に糸を吐いて、これに上手にしっぽの先をひっかけてぶら下がる。蛹になる時に落下しないかと心配になるが、たいていはうまくこれをやり遂げる。しかし、中には失敗して落下するものもいるのだという。

 さて、これまで何回もナミアゲハやキアゲハの蛹化を見てきたが、この糸掛けの行動は共通している。撮影したビデオ映像を後で確認すると、このジャコウアゲハの終齢幼虫①の場合には23本の糸をかけていた。11.5往復である。ちなみにキタキチョウでは2往復、4本、キアゲハでは約10往復、20本であった。

 最後の糸をかけ終わると、からだをくねらせて、上手にこの糸の輪の中にからだを収め、次いでしばらくして腹足を針金から離す。こうして前蛹はしっぽの先と、糸でささえられた形になる。

 体の位置を安定させてからしばらくして蛹化が迫ると、前蛹の体形は次第に細くなって行き、勾玉のように湾曲したものとなり、やがてこれまでの黒い皮膚をしっぽの先で手繰るようにして脱いで、黄色みをおびた蛹になった。

 
ジャコウアゲハ終齢幼虫①の蛹化(2022.7.2 19:00PM~7.3 21:50PM 30倍タイムラプスで撮影後編集)

 蛹化は次々と続き、最初の1匹が蛹になってから10日間で、12匹すべてが蛹化し、内10匹は螺旋針金か支柱の割りばしにとまって蛹になった。残る2匹の内1匹は螺旋針金を脱走してケースの壁面で、もう1匹はケースの底に敷いてあった紙の上で蛹になってしまった。

 次の映像は、割りばしの支柱に止まって蛹化した例である。この幼虫②の場合の糸掛け本数は25本であった。しっぽを固定する糸球作りから、蛹化までを通して見ていただく。

前蛹から蛹化までの様子(2022.7.9, 8:19~7.10, 15:53 30倍タイムラプス撮影後編集) 


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 安倍晋三元首相襲撃事件(7/1... | トップ | ウクライナ情勢(7/19~7/25)  »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

」カテゴリの最新記事