ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

天津池

2017-04-18 23:52:00 | 岡山県
2017年4月11日 天津池
 
天津池は岡山県真庭市日名の旭川水系当摩川にある灌漑用アースダムで、1942年(昭和17年)に建設されました。
 
天津池は県道390号線沿いにありアプローチは簡単、県道を西進すると左手に天津池が見えてきます。
堤体左岸は土が盛られています
右岸に洪水吐があり取水設備からの水路が洪水吐と立体交差しています。
 
天端左岸に竣工記念碑と災害復旧の碑が立っています。
 
天端と下流面
左岸側が盛土されているのがわかります。
 
総貯水容量6万9000立米の小さな溜池。
 
右岸から下流面
対岸のガードレールは県道390号線。
 
右岸の洪水吐。
 
越流面は逆S字の珍しい形状。
 
導流部
このまま1枚目の写真に続きます。
 
取水設備を探したら洪水吐の奥に見つかりました
しかし水位が高いと操作に行けない・・・。
 
3511 天津池(0940)
ため池コード
岡山県真庭市日名
北緯度分秒,東経度分秒
DamMaps
旭川水系当摩川
20メートル
67メートル
千㎥/千㎥
管理者未確認
1942年


深山池

2017-04-18 16:42:53 | 岡山県
2017年4月10日 深山池
 
深山池は岡山県真庭市西河内にある灌漑用アースダムで、ダム便覧によれば1911年(明治44年)に建設されました。ダム便覧ではダム事業者は西河内土地改良区となっていますが明治時代には土地改良区はありませんので、これは戦後の改修の事業者ではないかと思います。
 
中国道落合インターから市街地を西に抜け西河内川に沿って市道を西進、最後の集落を抜けると製材所の先で道路がダートになります。
路面がよくないことや木材搬出のトラックが行き交っていることからここから徒歩で深山池に向かいました。
片道3キロ、標高差200メートルの林道を歩くこと1時間でようやく深山池の堤体が見えてきます。
 
下流面はきれいに刈り払われています。
 
天端。
 
溜池の総貯水容量14万7000立米。
 
上流面には木が茂り詳細はわかりません。
 
右岸洪水吐手前に斜樋らしきものがあります。
壊れているようにも見えますが他に取水設備が見当たらないので現役なんでしょう。
 
洪水吐。
 
深山池の名前の通り、山中奥深くに佇む溜池です。
周辺は昔から林業が盛んな土地柄のようで、林業に影響がないように貯水池をつくるには水源近い山中しか適地がなかったのかもしれません。
 
1833 深山池(0939)
ため池コード
岡山県真庭市西河内
北緯度分秒,東経度分秒
DamMaps
旭川水系西河内川
22メートル
85.8メートル
千㎥/千㎥
土地改良区
1911年


千屋ダム

2017-04-18 14:46:22 | 岡山県
2017年4月10日 千屋ダム
 
千屋ダムは岡山県新見市の高梁川本流上流部にある岡山県営の多目的重力式コンクリートダムです。
高梁川中上流部は岡山県により早くから河川改修が行われてきましたが、河川沿いに住宅地が広がる新見では豪雨のたびに洪水被害が発生してきました。1964年(昭和39年)に主要支流の西川に河本ダムが完成しますが、高梁川本流は手つかずで1972年(昭和47年)7月豪雨では新見市街地や伯備線で大きな被害が発生しました。
一方1967年(昭和42年)をはじめ異常渇水による水不足も頻発し、さらに水島臨海工業地帯での工業用水の新規需要や高速道路の整備に伴う新見市での上水道の需要拡大から安定した水源の確保が課題となりました。
これらの諸課題に対処するために岡山県は高梁川総合開発事業の一環として高梁川本流での多目的ダムの建設に着手、1998年(平成10年)に千屋ダムが竣工しました。
千屋ダムは高梁川の洪水調節、既得取水権への補給及び河川流量の保持、新見市への上水道用水の供給、水島地域への工業用水の供給を目的とするほか岡山県企業局千屋発電所で最大3000キロワットの発電を行っています。
 
国道180号を北上すると左手に千屋ダムが見えてきます。
クレストには自由越流式洪水吐が11門、中央にローラーゲートが4門並びます。
さらにオリフィスゲートが2門、コンジットゲートとして堤体下部にジェットフローゲートが2門あります。
この日はオリフィスから放流が行われていました。
ダム右岸(向かって左手)下部に千屋発電所があります。
 
ゲートをズームアップ
クレストの4門のゲートが視認できます。
赤いとんがり棒の建物は展望台で建屋下部の一部が石積風です。
 
ダム下も整備され堤体を見上げることができます
桜が満開ならもっと絵になるんですがちょっと早すぎたようです。
 
ダム下には試験湛水用のゲートと放流管が展示されています。
 
左岸から
やはり赤い屋根の展望台に目が行きます。
 
ズームアップ
程よい石積み風の装飾がいい按配です。
福島のどっかのダムとは大違い。
 
減勢工
右岸の赤い丸屋根の建屋が千屋発電所です。
 
左岸の艇庫とインクライン。
 
天端は車両通行可能。
 
減勢工。
 
上流から見るとゲートの並びがわかりやすい
4門のローラーゲートの間にオリフィスの2門の予備ゲートがあります
右手は取水設備 左手は艇庫と管理事務所。
 
ゲート周りは複雑ですが、複雑がゆえに見学が楽しくなります。
ダム下も整備されているうえに県営ダムでは珍しく展示室まで用意されている非常に快適な千屋ダムでした。
 
(追記)
千屋ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
1905 千屋ダム(0938)
岡山県新見市菅生
北緯度分秒,東経度分秒
DamMaps
高梁川水系高梁川
FNWIP
97.5メートル
259メートル
千㎥/千㎥
岡山県土木部
1998年
◎治水協定が締結されたダム

吉川池

2017-04-18 13:20:35 | 岡山県
2017年4月10日 吉川池
 
吉川池は岡山県新見市足立字上吉川にあった灌漑用アースダムで、ダム便覧にれば1930年(昭和5年)に建設されました。
ダム便覧には現在も掲載されていますが、過疎化や高齢化による受益農家の離農に加えて、堤体の老朽化により決壊被害を防止するために県の農村地域防災減災事業により2014年(平成27年)に廃止工事が行われ現在は廃ダムとなっています。
きちんとした廃止工事により廃ダムとなった溜池は今のところ珍しいケースと言えますが限界集落の増加や中山間地の人口減少などにより、今後も同様のケースが増えると思われます。
 
県道8号の足立石灰工場の先を右折、隘路を進むと下吉川ついで上吉川の集落を抜けます。芋原への分岐を分けると最後の一軒家がありこの先に車を置きます。
ここから林道を1.5キロほど歩くと吉川池の貯水池跡に飛び出します。
中央部が切除された吉川池の堤体。
 
堤体跡に登ってみます
中央に水路がつくられています。
 
 
堤体切除で出た土砂は貯水池の埋め立てに使われたようです。
 
貯水池跡左岸側に吉川の流路があります。
 
水路は石篭で護岸されています。
 
 
 
今回の広島・岡山のダム巡りの旅において重要文化財の本庄ダムや日本最大の重力式アーチの新成羽川ダムなどお目当てはいろいろありましたが、実はこの吉川池もそのうちの一つでした。
離農による受益者の消滅や耐久性を理由にした溜池の廃止は今後も続々と出てくるでしょうが先駆的ケースとしての吉川池の廃止事業は溜池マニアとしては見逃せない事例の一つでした。
 
1856 吉川池(0937)
岡山県新見市足立
北緯度分秒,東経度分秒
DamMaps
高梁川水系吉川
1928年竣工
2014年廃止


高瀬川ダム

2017-04-18 11:50:18 | 岡山県
2017年4月10日 高瀬川ダム
 
高瀬川ダムは岡山県新見市神郷釜村の高梁川水系高瀬川にある岡山県土木部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
高梁川主要右支流である西川では1972年(昭和47年7月豪雨による洪水被害を受け、県はダム建設を軸とした流域の抜本的な治水対策に乗り出します。 
そして1982年(昭和57年)に西川最上流部の高瀬川に建設されたのが高瀬川ダムです  
高瀬川ダムは岡山県土木部所管ダムとしては最初のゲートレスダムで、さらに全国で初めてダム管理用の小水力発電設備が設置されたダムとなっています。
高瀬川ダムは建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、高瀬川及び西川の洪水調節(最大210立米/秒の洪水カット)、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、新見市への上水道用水の供給を目的とするほか河川維持放流を利用した最大260キロワットのダム管理用発電を行っています。
その後2005年(平成17年)に西川右支流三室川に三室川ダムが建設され、西川流域の治水能力は大きく向上しました。

まずは下流から
県土木部所管ダムとしては初のゲートレスダムで、非常用洪水吐のクレスト自由越流頂4門、常用洪水吐の自然調節式オリフィス1門を備えています。
僅かにカーブを描く漸縮型堤体導流壁と湾曲する堤体右岸が柔和な印象を与えます。
 
左岸から。
 
僅かにオリフィスの赤い予備ゲートが見えます。
 
右岸は湾曲したカーブとフーチングの組み合わせが独特。
 
減勢工。
 
天端は車両通行可能
対岸は管理事務所。
管理事務所の下には繋留設備があります。
 
ダム湖は総貯水容量453万立米
ダム湖の奥にはキャンプ場などのレクリエーション設備が整備されています。
 
利水放流設備
ジェットフロートゲートを備え、左手には管理用発電所と放流設備に通じる鉄管が見えます。
 
右岸から
放流設備は堤体左岸側に寄っているのがわかります。
 
管理事務所下の県流設備のほかに、右岸にも浮き桟橋があります。
 
(追記)
高瀬川ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
1902 高瀬川ダム(0936)
岡山県新見市神郷釜村
高梁川水系高瀬川
FNW
 
67メートル
273.6メートル
4530千㎥/4080千㎥
岡山県土木部
1982年
◎治水協定が締結されたダム

三室川ダム

2017-04-18 10:47:04 | 岡山県
2017年4月10日 三室川ダム
 
三室川ダムは岡山県新見市神郷油野の一級河川高梁川水系西川右支流三室川にある岡山県土木部が管理する目的重力式コンクリートダムです。
高梁川主要右支流である西川では1972年(昭和47年7月豪雨による洪水被害を受け、県はダム建設を軸とした流域の抜本的な治水対策に乗り出します。 
そして1982年(昭和57年)に西川最上流部に建設された高瀬川ダムに次いで2005年(平成17年)に竣工したのが三室川ダムです。 
三室川ダムは国交省の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、三室川及び西川の洪水調節(最大200立米/秒の洪水カット)、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、新見市への上水道用水の供給、河川維持放流を利用した岡山県企業局三室発電所での小水力発電(最大出力460キロワット)を目的としています。
訪問時点では岡山県内では最も新しい補助ダムとなっています。
 
まずは下流から
クレスト自由越流頂8門、自然調節式オリフィス1門を備えたゲートレスダムです。
このほか低水放流設備としてジェットフロートゲート2門を装備
訪問時はオリフィスから越流中。
 
県道でダムサイトに上がります
左岸ダムサイトに駐車場と竣工記念碑があります。
 
下流面。
 
導流壁がフーチングを跨いでおり、上部は堤体導流壁、中段以下は堤趾導流壁となっています。 
 
上流面
クレスト自由越流頂が8門
中央に取水設備、取水設備の右にオリフィスゲートがあります。
 
天端は徒歩のみ開放
2000年代のダムらしく余計な装飾のない簡素なデザイン。
 
減勢工と放流設備
減勢工左手の四角い建物が三室発電所。
 
右岸のインクライン。
 
ダム湖は総貯水容量820万立米
三室峡がシャクナゲの名所であることからシャクナゲ湖と命名されています。
 
右岸から
赤い屋根は管理事務所ですが、普段は巡回のみで職員の常駐はありません。
 
(追記)
三室川ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

1915 三室川ダム(0935)
岡山県新見市神郷油野
高梁川水系三室川
FNWP
 
74.5メートル
231メートル
8200千㎥/7700千㎥
岡山県土木部
2005年
◎治水協定が締結されたダム