【感想1】
この作品は本来、万俵大介が主人公で鉄平が反抗者であるはずなのだが、30年の時を経て製作されたリメイク版は木村拓哉演じる鉄平が主人公で父・万俵大介や高須相子が「悪」として描かれている。そのためか、回を追うごとに追い詰められていく阪神特殊製鋼や鉄平たちに、ほとんど絶望の色はなく、むしろ「希望」という夢物語が語られていて、その辺りが「今どきのドラマ」なのかなと思う。個人的には、こういう言わば現代のドラマではありがちな「楽観的」過ぎる人間模様が描かれていることで「日曜日の午後9時」という時間帯の放送でも視聴率を取ることが出来た由縁なのかもしれないと思ったりもする。本来ならば、この暗さや人としての陰湿さ、それに救いようのない悲劇は金曜日や土曜日の夜に放送される類のものであるはずだと私は思っている。前置きはこのくらいにしておこう。
【設定1】
実はこのドラマ、放映開始早々から様々なツッコミを浴びせられているらしいのだけど、個人的には「それもまた良し」と思っている。逆に「関西弁でない」ことが「時代考証や土地の位置関係がおかしい」ことも含めて「ドラマ『華麗なる一族』の独自の世界」として成り立たせているような気がするのだ。実社会の中でも、既に我々がかつて生きていた「昭和」の「臭い」は表面的には存在していないのだから。むしろ、舞台設定が大正や明治だったのであれば、それはそれで時代考証等を整理したものができていたであろうと思ったりもする。そんな中で個人的に「いい感じだったもの」と「イマイチだったもの」をそれぞれ挙げてみることにしよう。
<良かったもの>
・銀平の髪型
まさに「昭和臭」というクシでとかされたようだ。
・敬介の肖像
まるで小磯良平が書いたかのようなタッチが素晴らしい。
狙って描いたかどうかは不明。
・早苗の風格
昭和のいいとこのお母さんって感じがした。
・銭高氏自邸
ああいう家は西宮によくあるので良い感じだった。
<イマイチだったもの>
・万俵家の庭
バックに六甲山が無いのも海の景色も全くデタラメ。
・西宮のバス
銭高家の近くを走るバス。戦前のバスみたいだった?
・万俵家の鯉
エンドロールで死んでいたのは鉄平の投げた石のせい?
【設定2】
上記の様々なツッコミを全くなかったことにできる素晴らしいものがこのドラマでは3つある。一つは北大路欣也氏の絶妙な「目ヂカラ」。これには参った、本当に参った。いいねえ、この人。ブラウン管に顔が長い間、セリフが無いままアップで映されてもまったく耐えうる風格を呈している。
二つ目はエンドロールに流される「昭和とおぼしき」モノクロの空撮映像である。『本当にコレが昭和40年代か?』と考えればもっと昔の映像なのではないかと思う。空撮映像のリアルさだけで語るならドラマ「特捜最前線」のエンドロールのバックで流れる映像の方があっているかもしれないのだが、このモノクロ映像はサントラの曲調と妙にマッチングしているので個人的には気に入っている。
そして三つ目が音楽である。
【音楽1】
いいねえ。「華麗」と「一族」から連想される淫靡的なイメージとこれから展開されていくであろう壮大な人間模様への期待をこのメインテーマは感じさせてくれる。一ドラマのためのサウンドトラックとしてはあまりにも手が込みすぎているが、かつて千住明氏が作ったドラマ「砂の器」のメインテーマが野村芳太郎監督の同名の映画のサントラへのオマージュとして作られた前例があることを考えれば、先代に対するリメイク版としての力の注ぎようも、わからなくもないのかなと思ってみたり。
【音楽2】
リッスンジャパンというサイトでこのCDのサウンドトラックの視聴と購入が出来るのだけれど、トラック1の「メインテーマ・オブ・華麗なる一族」という曲がなんと10分超の大曲なのである。おそらく男性声楽版はこの中に組み込まれていくのではないかと思う。全21曲収録されているのである。メインの旋律が明確過ぎる分、若干このメロディーに頼りすぎている感も否めないが、逆に言えば、サウンドトラックの鉄則とも言うべき循環主題の採用で一つの世界観を完結させようとしているからなのだと私は思っている。これは是非近いうちにCD店に購入しに行こうと思っている。
【感想2】
最近はエンタメ本やテレビガイド等の雑誌を全く読まないのだけれども、唯一今回のドラマのために読んだのが「文芸春秋四月特別号」に寄稿されている『「華麗なる一族」華麗なる鑑賞法』なんだけど、この際なのでどういうことが書かれているのか紹介してみる。
前半は昭和48年という時代とその前後の時代に起きた出来事の羅列である。ここで語られている内容は、例えば三島由紀夫の自決に関して様々な識者が「昭和」という時代について語っていることとさして変わり栄えのするものはなく大して面白いものでもない。ただ、「ああ!そんなこともあったなあ」と回想できるくらいの楽しみ方くらいしかないのかなあと思う。
しかし、後半はなかなか興味深い。小説での登場人物の命名の由来を書いているのである。なるほどこれはなかなか面白い。興味の有る人は書店で読むべし。
【最後に】
生まれてきたこと自体が罪であるかのようなことを父に告げられ、絶望し自殺する鉄平。このあたりのくだりを見ている最中に私は三浦綾子氏の「氷点」をおもむろに思い出してしまった。そして自殺後にわかる真の血液型。それを知った大介の「なんと残酷な・・・」という言葉。一瞬「これはコントか?」とすら思った。しかし何と言うか、あまりにも残酷な結末なことか!更に、特殊製鋼の倒産を餌に成し得た今回の銀行合併も実は、次の銀行再編のための足掛かりだったとは、つくづく恐ろしいドラマである。今読んでいる本が終わったら小説「華麗なる一族」を読んでみようかなと思った。
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この作品は本来、万俵大介が主人公で鉄平が反抗者であるはずなのだが、30年の時を経て製作されたリメイク版は木村拓哉演じる鉄平が主人公で父・万俵大介や高須相子が「悪」として描かれている。そのためか、回を追うごとに追い詰められていく阪神特殊製鋼や鉄平たちに、ほとんど絶望の色はなく、むしろ「希望」という夢物語が語られていて、その辺りが「今どきのドラマ」なのかなと思う。個人的には、こういう言わば現代のドラマではありがちな「楽観的」過ぎる人間模様が描かれていることで「日曜日の午後9時」という時間帯の放送でも視聴率を取ることが出来た由縁なのかもしれないと思ったりもする。本来ならば、この暗さや人としての陰湿さ、それに救いようのない悲劇は金曜日や土曜日の夜に放送される類のものであるはずだと私は思っている。前置きはこのくらいにしておこう。
【設定1】
実はこのドラマ、放映開始早々から様々なツッコミを浴びせられているらしいのだけど、個人的には「それもまた良し」と思っている。逆に「関西弁でない」ことが「時代考証や土地の位置関係がおかしい」ことも含めて「ドラマ『華麗なる一族』の独自の世界」として成り立たせているような気がするのだ。実社会の中でも、既に我々がかつて生きていた「昭和」の「臭い」は表面的には存在していないのだから。むしろ、舞台設定が大正や明治だったのであれば、それはそれで時代考証等を整理したものができていたであろうと思ったりもする。そんな中で個人的に「いい感じだったもの」と「イマイチだったもの」をそれぞれ挙げてみることにしよう。
<良かったもの>
・銀平の髪型
まさに「昭和臭」というクシでとかされたようだ。
・敬介の肖像
まるで小磯良平が書いたかのようなタッチが素晴らしい。
狙って描いたかどうかは不明。
・早苗の風格
昭和のいいとこのお母さんって感じがした。
・銭高氏自邸
ああいう家は西宮によくあるので良い感じだった。
<イマイチだったもの>
・万俵家の庭
バックに六甲山が無いのも海の景色も全くデタラメ。
・西宮のバス
銭高家の近くを走るバス。戦前のバスみたいだった?
・万俵家の鯉
エンドロールで死んでいたのは鉄平の投げた石のせい?
【設定2】
上記の様々なツッコミを全くなかったことにできる素晴らしいものがこのドラマでは3つある。一つは北大路欣也氏の絶妙な「目ヂカラ」。これには参った、本当に参った。いいねえ、この人。ブラウン管に顔が長い間、セリフが無いままアップで映されてもまったく耐えうる風格を呈している。
二つ目はエンドロールに流される「昭和とおぼしき」モノクロの空撮映像である。『本当にコレが昭和40年代か?』と考えればもっと昔の映像なのではないかと思う。空撮映像のリアルさだけで語るならドラマ「特捜最前線」のエンドロールのバックで流れる映像の方があっているかもしれないのだが、このモノクロ映像はサントラの曲調と妙にマッチングしているので個人的には気に入っている。
そして三つ目が音楽である。
【音楽1】
いいねえ。「華麗」と「一族」から連想される淫靡的なイメージとこれから展開されていくであろう壮大な人間模様への期待をこのメインテーマは感じさせてくれる。一ドラマのためのサウンドトラックとしてはあまりにも手が込みすぎているが、かつて千住明氏が作ったドラマ「砂の器」のメインテーマが野村芳太郎監督の同名の映画のサントラへのオマージュとして作られた前例があることを考えれば、先代に対するリメイク版としての力の注ぎようも、わからなくもないのかなと思ってみたり。
【音楽2】
リッスンジャパンというサイトでこのCDのサウンドトラックの視聴と購入が出来るのだけれど、トラック1の「メインテーマ・オブ・華麗なる一族」という曲がなんと10分超の大曲なのである。おそらく男性声楽版はこの中に組み込まれていくのではないかと思う。全21曲収録されているのである。メインの旋律が明確過ぎる分、若干このメロディーに頼りすぎている感も否めないが、逆に言えば、サウンドトラックの鉄則とも言うべき循環主題の採用で一つの世界観を完結させようとしているからなのだと私は思っている。これは是非近いうちにCD店に購入しに行こうと思っている。
【感想2】
最近はエンタメ本やテレビガイド等の雑誌を全く読まないのだけれども、唯一今回のドラマのために読んだのが「文芸春秋四月特別号」に寄稿されている『「華麗なる一族」華麗なる鑑賞法』なんだけど、この際なのでどういうことが書かれているのか紹介してみる。
前半は昭和48年という時代とその前後の時代に起きた出来事の羅列である。ここで語られている内容は、例えば三島由紀夫の自決に関して様々な識者が「昭和」という時代について語っていることとさして変わり栄えのするものはなく大して面白いものでもない。ただ、「ああ!そんなこともあったなあ」と回想できるくらいの楽しみ方くらいしかないのかなあと思う。
しかし、後半はなかなか興味深い。小説での登場人物の命名の由来を書いているのである。なるほどこれはなかなか面白い。興味の有る人は書店で読むべし。
【最後に】
生まれてきたこと自体が罪であるかのようなことを父に告げられ、絶望し自殺する鉄平。このあたりのくだりを見ている最中に私は三浦綾子氏の「氷点」をおもむろに思い出してしまった。そして自殺後にわかる真の血液型。それを知った大介の「なんと残酷な・・・」という言葉。一瞬「これはコントか?」とすら思った。しかし何と言うか、あまりにも残酷な結末なことか!更に、特殊製鋼の倒産を餌に成し得た今回の銀行合併も実は、次の銀行再編のための足掛かりだったとは、つくづく恐ろしいドラマである。今読んでいる本が終わったら小説「華麗なる一族」を読んでみようかなと思った。
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欣也氏の苦虫を噛み潰したような口元が
残像となって脳裏に焼き付いて離れません。
フツーの(たぶん)女の子・・じゃないOL の感想を聞いてあげてください。視聴率40%のヒミツがわかるような気がします。
モモ&YOU☆の声日記
「華麗なる北大路さん」
http://www.voiceblog.jp/girls/283277.html
ゴリモンさにも聴いてもらいましょう。
ちょい役の人間も有名芸能人で固めるところ
が映画っぽい作りを意識しているのかなあと
思いました。
そこで板東英二かよ!
そこで前田吟かよ!
と豪華キャストに驚きまくりのドラマでした。
うちでも記事を書いたんでトラバさせていただきました。
映画版を見たくなってきました(^^;)
それにしても千住三兄弟って凄いですよね。
Keikoさん
DVDも出るらしいことですし・・・。
k@ttiさん
おそらくドラマ中盤で三雲頭取と狩に行ったときに
遭遇したイノシシとの対決シーンとの対比でしょう。
対するイノシシの挙動で、戦意(生きる意思)を
喪失した鉄平の心情を暗喩しているものと思われます。
まだPCがなかったころ(あっても200万とか・・)、千住鎮雄(だったと思う)KO大教授の『経済性工学』をバイブルのようにしていた時期がありましたが、たしか、千住明氏のお父さんでしたかね・・・
見た気になりました。
比較すること自体ムリがあると思いますが、なんといっても美しいハイビジョン映像とサウンドは今回の最大の魅力、キムタクファンならずとも、映画版のように引き込まれはしませんが楽しく観れたのではないでしょうか。
まっしゅさんの写真で見た、岩崎邸などを思うと、財閥といっても所詮播州の田舎からの成り上がり・・「華麗なる」には、ちょっとそんな皮肉もこめられているような気がしました。