月面着陸を果したアポロ11号の月面の映像は、倉庫内のスタジオで撮影していたのかもしれないという発想で作り上げた映画『フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン』を見ました。懐かしくなるくらいアメリカ映画の伝統が生かされたおもしろい作品でした。
昔『カプリコン1』という映画があり、実は宇宙の映像はスタジオ内で作ったのかもしれないという疑いが多くの人の頭の中に植え付けられていたと思います。『フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン』の中でも冷戦の中で国家の威信が最優先される姿が描かれていました。しかし、やはり人類の夢は国家の威信に優るという作品の描き方は、アメリカ映画の王道です。爽快感があります。
誰もが知っているアポロ11号の月面着陸という歴史を描きながら、そこの国家戦略もからませると同時に、恋愛を描き、そして個人の成長をも描いていきます。うまく構成されていました。作品の落ちも、その伏線の張り方も、見え透いていて安直ではあるのですが、それもまたほほえましい。
ただし、主人公の女性がうそしかつけないという人物造型が、ちょっと安直すぎるのかなという気はしました。人物造型は作品の肝なので、ここは丁寧につくりあげてほしかったという気がしました。
エンタテイメント性の高い、誰が見ても楽しめる良質のアメリカ映画でした。