とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

映画『アプローズ・アプローズ』を見ました。

2022-10-08 07:07:56 | どう思いますか
 映画『アプローズ・アプローズ』を見ました。刑務所の囚人たちがパリのオデオン座で講演をするという大人のメルヘンのような物語。しかしその結末も「大人のメルヘン」になっています。人生の機微を感じる佳作です。

 売れない俳優エチエンヌは、刑務所の囚人たちを対象とした演技ワークショップの講師を依頼されます。彼はなんとサミュエル・ベケットの戯曲「ゴドーを待ちながら」を演目に選びます。囚人たちがいつまでたっても現れない「出獄」を待ち望む姿と、ゴドーを待つ男たちとを重ねたからです。

 それにしても難しい戯曲を選びました。実際の舞台はドタバタになってしまいますが、それもまた観客に受けてしまいます。意外にも高い評価を得ることになります。

 彼らの活躍はパリにまでも届き、とうとう大劇場パリ・オデオン座に出演することになります。しかし囚人たちは逃げ出してしまいます。もう待つことをやめてしまったのです。

 エチエンヌは悲嘆にくれながらも囚人たちの心によりそったスピーチを行います。そのスピーチは私にはきれいごとに聞こえましたが、そうでもしなければ救われないものでした。

 私たち人間は無理な希望でも、希望さえあれば待ち続けます。一生待ち続けるのです。しかしいつの間にか待ち続けることのむなしさもわかるようになります。希望とむなしさが同居した心を抱えながら生きていくのです。

 「人生の意味」が心に落ちてくるようないい映画でした。
コメント (1)
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