新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

今昔物語

2022-09-08 08:07:53 | コラム
アメリカの住宅着工と自動車の生産・販売高:

今は昔の、GAFAMなど影も形もなかった頃のアメリカを回顧してみようと思う。一昨6日に取り上げた「高田馬場駅前にVESSEL HOTELが新規参入」の中で一寸触れた、往年のアメリカにおける景気の動向のバロメーターをあらためて振り返ってみたい。

ウエアーハウザーにはMarketing and Economic Research(M&ER、経済調査部と訳されていた)があり、そこにはアメリカ中に名が知られていたエコノミストのリン・マイケリスがいた。彼は90年代に我が国の経済団体に招かれて来日し、方々でアメリカ経済についての講演をしたこともあった。

また、彼が率いるM&ERが発行するアメリカ全体を論じていた「経済四季報」(勿論、英語である)は、我が国の取引先以外においても好評で予約が殺到していた。余談になるが、この四季報は各方面で広く読まれていても著作権の問題があり、我が社の了解なしには和訳すると著作権侵害になるという問題点もあった。

マイケリスが我々に説いて聞かせてくれた事柄の中で最も印象に残っているのが「アメリカの景気のバロメーターは住宅着工(housing starts)と自動車の生産・販売高である。それは、この両産業が好調になれば、関連する数多くの業界の需要も大いに喚起されるのだから」だった。言うまでもない事で、住宅着工の動向はアメリカ最大の林産物メーカーであるウエアーハウザーにとっては重大な経営上の要素だった。

だが、参考までに振り返っておくと、住宅着工は未だ何とか無事に推移してきたが、事が自動車となるとそうとは行かない。トランプ前大統領が輸入車を再三厳しく非難していたように、デトロイトは衰退の一途を辿ってきたのだった。現在では少しは盛り返しては来たが、アメリカ国内を歩いて観察してみれば「アメリカでも未だ4ドアのセダンを製造していたのか」と感じてしまうほど国産車は少ない。即ち、自動車は最早アメリカ国内の景気のバロメーターとはなり得ないだろう。

マイケリスが在籍していたウエアーハウザーも、5年ほど前に紙パルプ産業界から完全に撤退して、今や1900年に法人化された当時の木材だけの会社に戻ってしまっている。あの本社ビルも売却したし、株式会社でもない形態になってしまったと聞いた。このような流れが象徴しているのが「アメリカにおける印刷(紙)媒体の止まるところを知らない衰退」である。これ即ち、「今は昔」の物語なのだ。些か感傷的になってしまった、



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