新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

東芝が売られてしまうのか

2021-04-15 08:49:44 | コラム
「東芝は買収されるのか」とすべきだったか:

私にとっては、これほど時代の急激な変化を思い知らされた事案はなかったような気がしてならないのだ。CVCキャピタル・パートナーズが東芝にTOBを仕掛けるとの報道があって騒ぎになったかと思えば、社長の車谷暢昭氏が辞任の意向を表明したとの事だった。私はこういう事案に疎いので報道だけを見ていると、車谷氏は元はと言えばこのファンドの日本法人の会長だったという事が解った。このその前は三井住友銀行の役員だった方は、CVCが買収を仕掛けたのでは利益相反の疑惑が生じるというのも辞任の理由の一つのようだった。

このような一連の経過は私にとってはどうでも良いのだと言えば語弊があるかも知れないが、私にとっては我が国を代表するような優良企業が色々と問題を起こしてしまった結果で、事業の切り売りをしたかと思えば、外国資本に買い取られるかも知れないとあっては、何となく世界第3位とやらの経済大国であった我が国がそこまで落ちてしまったかの如くに感じられてならないのだ。東芝一社だけの例を挙げて言うのではなく、過去にシャープが台湾の大手企業に買い取られた例もあったではないか。尤も、東芝の場合は一昨日のPrime Newsで古森義久氏は「中国や韓国の資本に買い取られるよりはマシではないか」と言っていたが、そうではあっても気落ちさせられる話題だ。

専門家の解説では「東芝の事業には原子力もあるし国防関連の分野もあるので、むざむざと外資の手に落ちる事は好ましくない」との事だった。それも尤もだが、私は在職中に1度か2度ほどしか接触した事がなかった東芝がどれほどキチンとした大会社であるかを感じていた。経営の危機に陥る会社の臭いなど全くなかった。大して意味がない事だが、2003年の私が70歳の時に諸般の事情により、止むなく最初に導入したPCは東芝製品だった。そのPCで仕事をお引き受けした出版社は全員が東芝を使っていた。

もう何年前の事だったか記憶は定かではないが、財界が毎年開催する「財界賞」の会合に元日本興業銀行常務だった上田正臣氏の言わば名代のようか形で参加した時に表彰されたのが、東芝の西田厚聡社長(故人)だった。記憶に誤りがなければ、西田氏は「選択と集中」で東芝の体質を大きく変えて規模を拡大された名経営者として評判だったと思う。東芝が活躍してきた業界は日進月歩で変化してきたし、続々と新製品が登場するし、新興国が着々と地盤を確立してくるなど、私のような素材産業というか一次産品に近い物を造る業界が長かった者には「どうなっているのだろうか」と思って見ているだけだ。その真っ只中にあって世界的な企業だったはずの東芝が、ファンドのTOBに遭うとは将に今昔の感に堪えないのだ。

東芝を政府が守らないのかとか、国内から白馬の騎士は現れないのか等々の意見もあるが、「技術立国だったはずの我が国は何処に行ってしまったのかな」と、何となく以上に虚しい思いをさせられている東芝の現状だ。尤も、嘗ては世界の紙パルプ・林産物業界で最有力企業の一角を占めていたウエアーハウザーは、とっくの昔に紙パルプ業界から撤退してしまっている。それと言うのもICT化の急激な浸透に圧されて、印刷(紙)媒体は衰退の一途であると、早い時点で見切っていたのだった。時代の変化についていくのは容易ではない時代だ。



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