新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

アメリカの新旧の大統領について正直な感想

2017-01-21 08:50:47 | コラム
少し内心忸怩たるものがあるオバマ全体頭領の実績:

遂にアメリカの大統領が変わってしまった。L氏は見ないと言っていた就任式のテレビ中継(録画?)も一寸は見た。トランプ大統領の就任演説も聴いたが、同時通訳がうるさかった。

良く考えるまでもなかったが、あれほど貶し続けてきたオバマだ前大統領だったが、6,000万人も恐らく低層の移民の人たちが増えたのだっただろうアメリカの人口を抱え、誰がやっても上手く行くまいと言われたリーマンショック後のアメリカ経済を抱えて、8年間にアメリカをあれほど弱体化させたにも拘わらず、恐らく世界でただ一ヶ国経済が安定的に回復し、失業率を4%台にまで低下させていたのは、立派な功績であり、我が国の野党が懸命にくさし続けるアベノミクスを超える実績だったのだと感じている今日この頃だ。即ち、「オバマ様、失礼致しました」とお詫びせねばならないかと、忸怩たるものがあるという意味だ。

次は新大統領:

そのトランプ大統領の就任演説である。簡単に言えば「簡にして要を得ていた」とでも形容したいほどL氏も彼を形容したくて使った言葉の“narcissist”に徹していた感もあったが、「自分が自分たちの国を再度偉大にしてみせる」と語りかけていた点は極めて解りやすかった。その限りにおいては彼を熱心に支持する層には強烈に訴えるだろうと思って聞いた。一層支持されるだろうと聞こえた。

だが、私には要するに「折角我がアメリカが世界の諸国をここまで良くしてやりとませてやったにも拘わらず、彼らは我が国の職を奪い富を収奪し、繁栄を妨げた。今こそ我々はそこから脱してアメリカ第一に徹し、雇用(英語は“job”なのでこの訳語は不適切だと思うが)を増加させ仕事を取り戻す」という点を強調したのは何となく被害妄想的かなとも聞こえたし、アメリカ経済、就中製造業が弱体化し空洞化していった実態を知ってか知らずか、叫んでいたように思えてならなかった。

何処かのテレビ局にゲスト出演した大学教授だったかが、私と同じ見方で「アメリカの労働力の質の向上と改善を図らねば、相変わらず世界市場で競争力を持たない製品を作り続ける結果に終わることに対する認識がない」と指摘したのだが、私はトランプ大統領がこの重大な問題点を認識して改善することに本気で取り組まない限り、幾ら“job”を増やしても賽の河原だと密かに危惧するのだ。

より具体的に言えば「アメリカの製品が致命的に世界市場で競争力がない(competitiveという言葉が当たるだろう)のではなく、自分たちの国内市場の需要と要望と受け入れ基準(何故我が国では「ニーズ」とカタカナ語にするのか?)にだけ合わせただけの世界最高と信じる製品を押しつけてきただけで、海外市場のニーズに合わせる姿勢に乏しかっただけのこと」なのだ。もっと簡単に言えば、左ハンドルの車を右ハンドル車の国に「さー、世界最高だから買え」と押しつけたような販売政策とすれば解り良いかな。忌憚なく言えば、後難を恐れて言えば「善意に溢れた単純な自己過信商法」が通用しなくなったのだ。

私には既にTPP離脱を公式に言明したトランプ大統領がこの先何処まで「アメリカファースト」を基調にする政治・経済・軍事・外交・安全保障政策を採って行かれるのだろうかなどは解る由もない。彼は怖い物なしに見えるほど“unpredictable”であり、諸外国との多少の軋轢や摩擦を恐れることなく突き進むかのか知れないかとも思う。WTOがある以上、いきなり35だの45だのという高率の関税を恣意的に輸入品の賦課することが出来ないくらいご承知だろうと推察している。

だが、そういう国際市場の入り組み且つ微妙な仕組みを経験してこなかった以上、“OJT”(=on-the-job-training)のような試行錯誤の覚悟で進んで行く気なのかとすらも思えてくる。その過程で何が起きるかは経験して初めて解ることで、他国との文化の違いをOJTで大統領が学習していこうという考え方だったら怖いなという気もする。

私は上司の副社長に「貴方の行く手には文化の違いという凸凹道が待っている。それを渡りきるのは容易ではない。だが、私の"job”はその道を極限まで平らにならしてボスが平坦な道を歩けるようにすることと認識している」と言ったことがあった。これは自慢話ではない。トランプ大統領の参謀や閣僚に与えられた課題の一つが「世界各国への道を可及的速やかに最善の舗装道路に仕上げることだろう」と考えているから言うのだ。今はキャタピラー付き装甲車で押していく計画のように見えるのだが。



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