♦️1169『自然と人間の歴史・世界篇』ベーシックインカムへの動き(アメリカ、2020~2021)

2021-10-27 23:04:57 | Weblog

1169『自然と人間の歴史・世界篇』ベーシックインカムへの動き(アメリカ、2020~2021)

 はじめに、アメリカで議会事務局に提出されたという、ある法案について、報道されている中から、抜粋して紹介しよう。

 「多くのアメリカ国民が、新型コロナウイルスに対抗する経済刺激策としてアメリカ政府から1200ドル(約13万円)の給付金を受け取り始めた。だが銀行口座を持たない国民にとって、この給付手続きは合理化されているとは言えない。(中略)

 そして低迷している経済を活性化するためにはたった一度の給付では不十分ではないかという懸念の中で、2人の民主党議員がさらなる給付金の法案を提出した。

 ティム・ライアン(Tim Ryan)とロー・カンナ(Ro Khanna)両議員が4月14日に発表した緊急資金法案は、16歳以上で年間所得が13万ドル(約1400万円)未満のすべてのアメリカ国民に、毎月2000ドル(約21万5000円)を、少なくとも6カ月間給付するものだ。

 この法案には、最初の給付金で生じた混乱を軽減するための対策が含まれている。それが、電子決済だ。(中略)

 「この法案では給付金を、銀行口座振込や小切手、プリペイド型デビットカードのほか、Venmo、Zelle、PayPalなどの電子決済サービスで受け取れるようにする。」(ビジネス・インサイダー・ジャパンの日本語版、2020年4月19日電子版より引用)

 これによって、アメリカ全世帯の4分の1が該当するとみられる、銀行口座を持っていない人にも、小切手換金サービスの高額の手数料支払いを介することなく、現金が受け取ることができると考えた。
 この法案、結果としては、大方の陽の目を見なかったようなのだが、一石を投じたであろうことはいえるのではないだろうか。


(続く)

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♦️1168『自然と人間の歴史・世界篇』アメリカの金融政策(その行方)

2021-10-27 10:07:57 | Weblog

1168『自然と人間の歴史・世界篇』アメリカの金融政策(その行方)

 新型コロナ禍でのアメリカの金融政策の主な展開としては、これまで歴史的低金利の継続と大規模量的緩和への傾斜であった。後者の政策では、2020年2月末に4兆1,586億ドルだったFRB(米連邦準備制度理事会)の資産規模は、2020年5月20日に7兆ドルを超え、2021年2月2日現在は7兆4,149億ドルに達した。
 それが、リーマンショック期のQEでは、FRBが資産を3兆ドル積み上げるのに5年を要した。今回は3ヶ月でその規模を達成、巨大な通貨供給が信用の安定と資産価格の上昇に寄与したと言えるだろう(ただし、物価の上昇がそれに見合う通貨の増大をもたらすという流れが基本であろう)。
 その後も、この資産の増加傾向は続いていて、2021年10月13日現在の「連邦準備バランス」(FRBサイト提供、2021.10.14)によると、約8兆4809億4200万ドルにも膨れ上がっている。

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 それが、2021年9月21~22日のFOMC(連邦公開市場委員会)において、次回11月の会合でのテーパリング(資産買い入れ縮小)開始に含みを持たせたのは、FRBのこの間の金融からの経済てこ入れが一つの転回点にさしかかってきたとの認識の表れだろう。
 その場において、ついては2022年半ば頃までにこの作業を終わらせるのが望ましい、そしてテーパリングと利上げ開始を分けて考える方針がパウエル議長から改めて示された形だ。

(続く)

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♦️1165『自然と人間の歴史・世界篇』アメリカの家計債務と企業債務(2020~2021)

2021-10-27 07:54:56 | Weblog
1165『自然と人間の歴史・世界篇』アメリカの家計債務と企業債務(2020~2021)

 

 2021年2月2日時点でのセントルイス連銀の報告によれば、2020年9月末における家計の債務残高は16兆4,064億ドルで、2019年末と比べ4,049億ドル増加していた。その内訳でいうと、消費者信用残高は237億ドル減ったのに対し、大規模金融緩和下での低金利下でモーゲージ(抵当・抵当権の意味))が3,161億ドル増えた。それでも、この時の対名目GDP比率は77.5%に留まり、住宅バブルでモーゲージが急増していた2008年3月の98.3%のレベルには達していない。

 一方、家計の債務の内訳ては、住宅ローンの動向が中心となろう。そこで、全米の住宅価格の指標となる、「S&Pコアロジック・ケース・シラー指数」(スタンダード・アンド・プアーズ社が全米の住宅価格の指標となる指数を取りまとめたもの)によると、2020年10月以降、前年同月比の上昇率が平均で10%を超えた。それからも、2021年3月時点の米国の住宅価格の水準になると、前回の住宅バブルのピークだった2006年4月の住宅価格を16.8%も上回った。

 

 それが2021年6月29日に発表された2021年4月時点の同指数では、前年同月比で14.6%上昇し、過去30年あまりで最大の伸びとなった。
 背景には、住宅ローン金利が10回以上も史上最低を更新したことに加え、コロナ禍を避けるための在宅勤務が増え、郊外への住み替え需が増加したことがあろう。かたや供給側も、米国の木材価格が高騰し、他にも材料不足に加え、おまけに資材を運ぶトラック運転手をはじめ労働力不足が顕著であることから、幅広く供給制約が出たことが挙げられている。


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 次には、企業の債務がどのくらい積み上ってきているかをみよう。まずは、セントルイス連銀調べでの2020年9月末のアメリカ企業の債務残高は、10兆9056億だった。これは、同年6月末の11兆80億ドルからはやや減少し、対名目GDP比率も56.4%から51.5%へ低下した。
 経済規模に対する企業債務ということでは、以前は対GDP比率で45%はバブルのシグナルだった。今回、その水準を大きく上回った背景は、FRBによる大規模金融緩和があったためと考えられている。

 これと相まっての数字として、2020年7月に入り、米企業の社債発行残高は10兆ドルを超え、アメリカの2019年のGDP21.5兆ドルの半分近くに上っている。フィナンシャル・タイムズによると、提携による融資や中小企業向け融資など、他の形態の債務も加えると、企業の債務残高は17兆ドルに上るとのこと。

 こうした社債の発行には、次の見方もある。そういうのは、2020年2月12日の米株式市場ではダウ工業株30種平均の終値が前日比275ドル高の2万9551ドルと過去最高を更新し、史上初の3万ドルに迫った。新型肺炎への過度の警戒感が薄らいだことが背景にあるが、自社株買いや配当など年1兆ドル(約110兆円)を超える株主還元が株高を勢いづけている面もある。
 そんな中でも代表格なのが、2019年に最も自社株買いをしたIT大手企業のアップルだ。788億ドルと純利益(575億ドル)の1.4倍もの資金を自社株買いに回した。アップル株は年間で80%あまり値上がりし、米国株全体をけん引した。有望な投資機会が減るなかで、利益以上の金額を株主還元に回す企業はなお多い。

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 こうした家計と企業の債務増加の継続に対し、警鐘を鳴らしてきたFRBは、最新の2021年5月に「金融安定報告書」発表した。その中で、前回の報告書以降、両者の債務による脆弱性は低下している。それでも、企業と家計の債務が最近横ばいでの推移に変化していることに触れて、新型コロナの影響を強く受けている企業と家計が抱える潜在的なリスクには、引き続き注意が必要だとしている。
 とはいえ、両方ともに、低金利や、賃金保護プログラムなど政府の継続的支援などの効果が薄れていくと、弱いところから債務返済能力の低下が顕在化していく可能性があるのは否めない。
 
(続く)

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