♦️1164『自然と人間の歴史・世界篇』アメリカの財政赤字(2020~2050)

2021-10-25 19:31:36 | Weblog
1164『自然と人間の歴史・世界篇』アメリカの財政赤字(2020~2050)
 
 アメリカ財務省は、2021年10月22日、 2021年会計年度(2020年10月~2021年9月)の財政赤字は約2兆7720億ドルだったことを明らかにした。過去最悪だった前年度(2020年度、2019年10月~2020年9月)実績からは少し改善したものの、大規模な新型コロナウイルス対策の導入により、2年連続で巨額の赤字となった。
 背景には、新型コロナワクチン接種が進み経済活動が再開されたことなどがあり、同赤字額は、前年度赤字の約3兆1320億ドルに比べ約3600億ドル改善した。歳出はやはり6兆8180億ドルと、約2660億ドル(4.1%)増加したのに対し、歳入は約4兆0460億ドルと、前年度から約6260億ドル(18.3%)増加した。
 景気回復に伴って税収が増えたものの、新型コロナウイルス対策の支出が続き、過去2番目の赤字幅となったことについては、経済状況が依然厳しいことが窺える。GDP(国内総生産)に対する財政赤字の比率は約12.4%で、前年度から2.6ポイント縮小した。ただ、リーマン・ショック後の2009年度(2008年10月~2009年9月)の9.8%を大幅に上回る。
 なお、バイデン政権や議会は、2021年の3~4月にインフラ投資や子育て・教育支援などからなる経済対策を議会に提出しているが、これはまだ未成立であるので、今回の決算には入っていない。


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 もしコロナ禍からの不安定要因がこの先も持続し、新しい成長が軌道に乗らず、こうしたベースで財政赤字の積み上げが続くようだと、金利負担の上昇が大いなる危険をもたらしかねない。それを見越しては、2021年7月29日のFOMC(米連邦公開市場委員会)後の会見で、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は「インフレの上振れは一時的」との判断を繰り返した。そして、「足元の高インフレがインフレ期待の上昇をもたらしている兆候はない」と述べ、「インフレの上振れは一時的」との判断を堅持している。
 この発言の背景には、債務危機を回避するために巨額の財政赤字をペースダウンさせるしかないという現実があろう。それでも、同議長は2020年の夏、景気が回復した場合FRBは利上げを検討するかと聞かれ、「利上げについては考えていない。利上げについて考えていない」と回答した。それは今も変わっていないようだ。「米国の財務省・企業・家計が膨大な債務残高を抱えているため、利上げは選択肢にない」となる。
 
 
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 それでは、これからの財政赤字と同残高はどうなっていくのだろうか。これについては、CBOの「2021~2031財政見通し」報告書では、単年度財政赤字は2021年度にGDP比で10.3%と過去2番目の大きさに達した後、減少に転じるも、2020年代後半からは再び増加していく。 
 これにより、債務残高は2021年度にGDP比で102%となり、その後も増え続け、2031年度に同107%、額でいうと約35兆8270億ドルに達してする。なお、その後も試算されていて、財政赤字とともに増え続け、2051年度には同202%になると見込まれる。
 こうしたの話になると見込まれるには、ほぼ二つの要因が指摘される。一つは、人口の高齢化による支出増加がある。メディケア(65歳以上の高齢者及び障害者向けの連邦政府が運営する公的医療保険)やメディケイド(低所得者向けの連邦政府と州政府が運営する公的医療保険制度)などのヘルスケアプログラムにかかる費用が、高齢化とともに増加していくことだ。ちなみに、2019年度でのメディケアの支出は15%、メディケイドは同9%となっていた。それが、2051年度には、GDPで9.4%に膨れ上がるというのだ。
 もう一つの主要因としては、利払い費の増大が挙げられる。こちらは、2025年度までは低金利が続くものの、2026年度から2031年度にかけて10年債の金利が年3.0%になるとの想定がなされている。かくて、2020年代中頃からは利払い費用が激増することが見込まれ、2051年度の利払いはGDP比で8.6%に上昇すると見込まれている。
  

(続く)

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♦️1163『自然と人間の歴史・世界篇』アメリカの株価(2021)

2021-10-25 13:40:11 | Weblog

1163『自然と人間の歴史・世界篇』アメリカの株価(2021)

 2021年10月22日のアメリカ株式市場では、S&P500種株価指数が8営業日ぶりに反落し、前日比0.1%安の4544.90を付けた。ナスダック総合指数は0.8%下落、ハイテク銘柄中心のナスダック100指数も0.9%安となった。一方、ダウ工業株30種平均は、73.94ドル(0.2%)高の3万5677.02ドルと高値を維持している。

 金融当局は、これの動きが物価上昇圧力につながることを注視しており、それに応じて行動するとの考えを示している。また、物価を押し上げている世界的なサプライチェーンの制約と供給不足に触れ、「従来の想定より長期に及ぶ可能性が高く、来年になってもしばらく続きそうだ」といい、その上で、そうした供給面での制約がいずれ改善されるのに伴い、インフレ率は低下するというのが、なお最も可能性の高いシナリオだとの、従来の見方をあらため示した。 

 これの現時点での評価については、2020年1月から2021年8月にかけての信用残高(注)とS&P500指数の各月末値のデータを追跡した結果(野村証券投資情報部作成「週刊、米国株式展望」2021年10月18日付け)によると、この二つの指標のこの間の増加ペースは、「ほぼ軌を一にして」急増している。このことから、当該株価の上昇にほほ見合う信用の供給が行われているのが見て取れよう。

(注)信用残高は、Finance Industry Regulatory Authority (FNRA)の中での「Debit Balance in Customers' Securities  Margin Accounts」から採取されている。


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 一方、債券市場に目を向けると、この日(2021.10.22)の米国債相場(価格)は、長期債を中心に上昇し、ニューヨーク時間午後4時26分時点での10年債利回りは、6ベーシスポイント(1bp=0.01%)低下しての1.64%を付けた。


(続く)

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