1161『自然と人間の歴史・世界篇』スタグフレーションと現代(2021)
スタグフレーションとは、どんな経済現象をいうのだろうか。それは、スタグネーション(停滞)とインフレーション(物価高)の合成語であって、その相貌たるや経済現象の中でも定説があるわけでなく、その発生と発展、消滅のメカニズムについてもしかり。加えて、これまでの歴史における所在についても必ずしもはっきりしない。だが、新型コロナ禍が2年目の2021年に入っての春頃から、追って現実のものとなるかもしれない、といわれるまでになってきている。
なぜ今頃こんな話になるのかは、久方ぶりにコア(通常は、変動の激しいエネルギーや食料を除いたもの)の物価が5%近くに、数ヶ月連続して見られるようになったこと、その際に景気が過熱しているわけでもなく、景気回復といっても不況からまだ抜け出す迄には至っていない、だからして、この先どうなるのかが経済を勉強している者の中でもよくわかっていないようである。
いうなれば、利潤率、設備稼働率、雇用率の低下と持続的なインフレーションとが併存している状態が起きているならば、それはもうスタグフレーションの領域に入っているわけなのだ。これの対比としては、好況末期であり、それまでの高成長を支えた諸要因が消滅することで、資本の蓄積率は低下していく、その結果、前述の3つの指標が低落していく。
こうした事態に直面すると、国家は、金融と財政を吹かして、資本の再生産過程に積極的に関与していかざるを得なくなる。
とはいえ、この政策が上手くいくためには、(1)財政の赤字が資本蓄積率や輸出超過率(純輸出率、アメリカの場合は構造的な赤字)にマイナスの影響を及ぼさないこと、(2)財政の赤字を増大させて実現利潤率の引き上げにつながったとしても、そのことで、さまざまなルートで諸要因が重なりあうことでの加速的なインフレーションを引き起こさないことが必要であろう。そうなれば、輸出需要が制約され、また意図しない輸入増大も引き起こされるかもしれない。
また、赤字財政によって実現利潤率の低下をひとまず回避したとしても、かかる利潤率の水準(資本主義下では、その時の資本家の利潤要求態度に起因する)が維持されるためには、労働者の実質賃金率や社会福祉支出、さらに資源供給国の実質資源価格は圧迫されよう。
そして、これらの圧迫を労働者・勤労者や資源供給国が甘受しない場合には、今や資本蓄積率、財政支出超過率(赤字率)、輸出超過率によって主に規定される利潤率を達成するには、さらに諸物価を引き上げ、なおも実質賃金率、実質資源価格を引き下げねばならなくなり、物価ー賃金ー資源価格のスパイラルが生じよう。そうなれば、この三者が互いに相手に対して疑心を抱くようにもなり、相手の価格引き上げを見込んで独占的(独占的競争による、いわゆる独占価格)にであれ、そうでない場合であれ、それらを織り込んで引き上げなどを行うようになると、国内的にも国際的にも加速的インフレーションが生じうる。
また、赤字財政によって実現利潤率の低下をひとまず回避したとしても、かかる利潤率の水準(資本主義下では、その時の資本家の利潤要求態度に起因する)が維持されるためには、労働者の実質賃金率や社会福祉支出、さらに資源供給国の実質資源価格は圧迫されよう。
そして、これらの圧迫を労働者・勤労者や資源供給国が甘受しない場合には、今や資本蓄積率、財政支出超過率(赤字率)、輸出超過率によって主に規定される利潤率を達成するには、さらに諸物価を引き上げ、なおも実質賃金率、実質資源価格を引き下げねばならなくなり、物価ー賃金ー資源価格のスパイラルが生じよう。そうなれば、この三者が互いに相手に対して疑心を抱くようにもなり、相手の価格引き上げを見込んで独占的(独占的競争による、いわゆる独占価格)にであれ、そうでない場合であれ、それらを織り込んで引き上げなどを行うようになると、国内的にも国際的にも加速的インフレーションが生じうる。
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それでは、アメリカの現状はどうなのだろうか。まず、利潤率は、少なくともほぼ二分されているようである。その一つは、巨大IT企業の利益の伸びは2倍というのもある。一方、二つ目のグループは、航空業界など今度の新型コロナウイルス禍をまともに受けた業界・企業群なのだと察せられよう。そして、全体の利益率ということでは、やはり後者のグループの痛手がまだ癒えていないのではないだろうか。
ここで2021年7~9月の3ヵ月平均でいうと、一か月当たり55.0万人の雇用増加となっており、これは、コロナ禍前の2019年平均である同16.8万人増を2倍以上も上回っている。
とはいえ、ここでやや見方を変え、2020年5月以降でみると、今回9月までに1739万人の雇用を取り戻した形となっている。というのは、2020年3月、新型コロナウイルス感染拡大を受けて米国で非常事態が宣言された。そのことが介在することで、3月と翌4月の2カ月間で米国の雇用者数は2236万人減少し、それまでの10年間で増やしてきた雇用を一瞬で失った形となっている。
その後の同雇用者数は、2020年4月をボトムに回復傾向にあるものの、2021年4月時点で、コロナ前の2020年2月と比して約820万人もの雇用が失われたままになっていた。
それが、今回の2021年9月分の雇用統計で改めて2020年2月と比較すると、新型コロナ禍で失った雇用を取り戻すには、2236万人マイナス1739万人、すなわち、あと497万人が必要となる理屈となっている。
それでは、アメリカの現状はどうなのだろうか。まず、利潤率は、少なくともほぼ二分されているようである。その一つは、巨大IT企業の利益の伸びは2倍というのもある。一方、二つ目のグループは、航空業界など今度の新型コロナウイルス禍をまともに受けた業界・企業群なのだと察せられよう。そして、全体の利益率ということでは、やはり後者のグループの痛手がまだ癒えていないのではないだろうか。
次に、設備稼働率はどうかというと、こちらは、2021年7月には前月差0.7%ポイントとなり、今回のコロナ禍前の水準(2020年2月の76.3%)に肉薄するまでに回復してきている。
さらに、雇用率については、2021年9月の雇用統計ののうち、非農業部門就労者数(NFP、労働省)は、前月比で19.4万人増となり、前月の36.6万人増にも届いていない、年初来から9ヵ月連続で増加するなかで最も小幅にとどまった。
このように、今回の調査結果で雇用者数の伸びが小幅となった背景には、8月2日に成人人口における1回以上のワクチン接種率が70%を突破するものの、デルタ株の感染拡大が「見えにくい」重石となっているのかもしれない。ここで2021年7~9月の3ヵ月平均でいうと、一か月当たり55.0万人の雇用増加となっており、これは、コロナ禍前の2019年平均である同16.8万人増を2倍以上も上回っている。
とはいえ、ここでやや見方を変え、2020年5月以降でみると、今回9月までに1739万人の雇用を取り戻した形となっている。というのは、2020年3月、新型コロナウイルス感染拡大を受けて米国で非常事態が宣言された。そのことが介在することで、3月と翌4月の2カ月間で米国の雇用者数は2236万人減少し、それまでの10年間で増やしてきた雇用を一瞬で失った形となっている。
その後の同雇用者数は、2020年4月をボトムに回復傾向にあるものの、2021年4月時点で、コロナ前の2020年2月と比して約820万人もの雇用が失われたままになっていた。
それが、今回の2021年9月分の雇用統計で改めて2020年2月と比較すると、新型コロナ禍で失った雇用を取り戻すには、2236万人マイナス1739万人、すなわち、あと497万人が必要となる理屈となっている。
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それに、物価の動向及びその水準については、どうなっているだろうか。これについては、景気が緩やかに回復していく中で、米国のインフレ動向が注目されてきている。消費者物価の総合指数は2021年4月の消費者物価の総合指数は、前年比で4.2%のプラスとなった。また、FRBが物価の指標(個々の物価レベルということではなく)としているPCE価格指数の総合指数もプラス3.6%と、いずれも2008年9月以来の水準に上昇した。
さらに、物価の基調を示す食料品とエネルギーを除いたコア指数については、消費者物価指数(CPI)がプラス3.0%と1996年1月以来の伸び、PCE価格指数がプラス3.1%と1992年7月以来の水準となった。
さらに、物価の基調を示す食料品とエネルギーを除いたコア指数については、消費者物価指数(CPI)がプラス3.0%と1996年1月以来の伸び、PCE価格指数がプラス3.1%と1992年7月以来の水準となった。
続いて、2021年5~9月のCPI(消費者物価指数、前年同月比、米労働省)は、同9月の5.4%まで、5か月連続の5%台が続く。その9月の同指数をもたらした内訳としては、新型コロナウイルス禍で品不足など供給制約が目立ち、原油をはじめ国際商品価格も上がっている。変動の大きい食品とエネルギーを除く上昇率は前年同月比で4.0%と、前月と変わらない高水準、また前月比は、0.2%上がった。
また、2021年5~9月のPSE(個人消費支出、前年同月比、米商務省経済分析局)は、前年同月比で5月が3.4%、6月が3.6%、7月が3.6%、8月が3.6%となって
いる。
ここでは、少なくとも2021年10下旬に入った迄には、その水準がスタグフレーションを引き起こしているという迄には、至ってはいまい。ただし、そうなる下地はかなりかなりの程度整ってきているのではないか。
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(続く)
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