ユニーク古典現代訳(大阪弁万葉集改題)

日本の古典を訳します。そのままストンと腑に落ちる訳。なんだ、こうだったのかと分かる訳。これなら分かる納得訳。どうぞどうぞ

古事記ものがたり・中つ巻(21)宇治の見初めは 矢河枝比売

2013年04月11日 | 古事記ものがたり
■宇治の見初みそめは 矢河枝比売やかわのえひめ

仲哀ちゅうあい天皇おおきみ そのお子の
品陀和気命ほんだわけみこ 即位して
応神おうじん天皇おおきみ お成りなる

応神おうじん天皇おおきみ 近江国
巡りおさめの 宇治野うじのにて
葛野かずの望みて 謡う歌








繁る葛野かずの 見てみれば
居並ぶ家並やなみ 見てとれる
これぞ国つ あかしなり

  千葉ちばの 葛野かずのを見れば
  百千ももちる 家庭やにわも見ゆ
  国のも見ゆ
                ―古事記歌謡(四十二)―

宇治木幡こはたで 乙女

何処いずこ娘」と 問い掛けに
比布礼能意富美ひふれのおおみ 娘にて
 宮主矢河みやぬしやかわ 枝比売えひめ」とぞ

 明日に逢わん」と言い置くに
帰り枝比売えひめが 経緯いきさつ
父に伝うに 「そは天皇きみぞ」

待つに日明けて 応神天皇きみ来たり
馳走ちそう致して 酒杯はいささ

酒杯はい手に応神天皇きみが 謡う歌

ぜんなるかには 何処どこの蟹
い道たる 角賀つぬが
横這よこはい歩き 何処どこへ行く
伊知遅島いちじ美島みしま 辿たどり来て
もぐり息止め あえぎつつ
難儀なんぎあゆみの 湖畔こはん

  このかにや 何処いずくの蟹
  ももづたう 角鹿つぬがの蟹
  横らう 何処いずくに到る
  伊知遅島いちじしま 美島みしまに着き
  鳰鳥みおどりの かずき息づき
  段差しなだゆう 佐佐那美道ささなみじ







されどこのわれ すいすいと
木幡道こはたみち来て 逢いし児は
後ろ姿も 端正きらきら
白い歯並び しいひし

  すくすくと 我がませばや
  木幡こはたの道に わしし娘子おとめ
  後姿うしろでは 小楯おだてろかも
  歯並みは 椎菱しいひし
櫟井いちいで取れる 丸迩坂わにさ
 にある土 赤み帯び
 にある土 黒み帯ぶ
中の程よい 土りて
直火じかびを避けた 眉墨まゆずみ
黒々いた 児に逢いき

  いちいの 丸迩坂わにさの土を
  初土はつには はだ赤らけみ
  底土しわには 丹黒にぐろゆえ
  三つ栗の その中つ
  かぶ突く 真火まひには当てず
  まよき に書き垂れ
  わししおみな









こんな児ならと 思う児に 
こんな 児ならと 思う児が
今目の前に 向い
われに寄り添い ここに

  もがと 我が見し児ら
  くもがと 我が見し児に
  真正面うたたけだに 向かいるかも
  い添いるかも
                ―古事記歌謡(四十三)―

これが枝比売えひめの 産む宇遅能うじの
和紀郎子わきいらつこは 応神天皇きみかな