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ユニーク古典現代訳(大阪弁万葉集改題)

日本の古典を訳します。そのままストンと腑に落ちる訳。なんだ、こうだったのかと分かる訳。これなら分かる納得訳。どうぞどうぞ

日めくり万葉集<3月>(その4)

2009年09月21日 | 日めくり万葉集
■平成21年9月21日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★海の航海 命がけ 人に手向けを 捧げるは 明日はわが身を 祈るため
行く船の かじ引き折りて 
をちこちの 島は多けど  
名くはし 狭岑さみねの島の 
荒磯面ありそもに いほりて見れば

《船梶止めて さみねじま なんけ船を 寄せたなら》
浪のの 繁き浜辺を 
敷栲しきたへの 枕になして 
荒床あらとこに 自伏ころふす君が
 
《波音高い 浜の陰 一人の人が 死んでいる》 
家知らば 行きても告げむ  
妻知らば も問はましを 
玉桙たまほこの 道だに知らず
 
《知らしたいけど 家分からん どこの誰やら 知らん人》 
おほほしく 待ちか恋ふらむ しき妻らは
《奥さんさぞかし 待ってるやろに》 
                         ―柿本人麻呂―〔巻二・二二〇〕 

★大宰府の 赴任の先で 妻亡くし 旅人寂しい 戻り旅
行くさには 二人我が見し この崎を 独り過ぐれば 心悲しも 
《来るときは 二人で見たな このみさき ひとりとおるん 悲してならん》
                         ―大伴旅人―〔巻三・四五〇〕 

★春の憂いの 源は 我が身のことか 政治まつりのことか
春の野に 霞たなびき うら悲し この夕影ゆふかげに うぐひす鳴くも
《野に霞 日の射す宵に 鶯の 鳴いてる春が ワシもの悲し》 
                         ―大伴家持―〔巻十九・四二九〇〕 

★こんな可愛い子 取られてなるか
しめひて 我が定めてし 住吉すみのえの 浜の小松は のちも我が松
かこいして ワシのもんやと 決めた小松まつ おおきなっても ワシの松やで》
                         ―余明軍よのみょうぐん―〔巻三・三九四〕

★旅人帰還の 先行船は 郎党乗せて 大和を目指す
たまはやす 武庫むこの渡りに 天伝あまづたふ 日の暮れ行けば 家をしそおも
《きらきらと 武庫の海峡 日ィ暮れる 夕暮れ寂して 家思い出す》 
                       ―作者未詳―〔巻十七・三八九五〕 

赤人あかひと仰ぐ 霊峰は 今も皆人みなひと 仰ぎて誉める 
天地あめつちの わかれし時ゆ        《天地てんちのできた その昔
かむさびて 高く貴き          神が作った その山は  
駿河なる 布士ふじの高嶺を      駿河の国の 富士の山 
あまの原 ふりけ見れば      振り仰いでも 高過ぎて 
渡る日の 影もかくらひ        お日さん隠れ よう見えん 
照る月の 光も見えず         月の光も 届かへん  
白雲も い行きはばかり       白雲漂い よう行かん  
時じくぞ 雪は降りける        雪はいっつも 降っている 
語りつぎ 言ひつぎ行かむ     語り伝えて 言い継ごう  
不尽ふじの高嶺は             富士の高嶺の この尊さを》 
                         ―山部赤人―〔巻三・三一七〕 


日めくり万葉集<3月>(その3)

2009年09月16日 | 日めくり万葉集
■平成21年9月16日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★夜勤妻 夫恋しと 呼び詠う 雇い主 粋な計らい 休暇授ける
いひめど うまくもあらず ぬれども 安くもあらず 
あかねさす 君がこころし 忘れかねつも 

めし食ても 美味おいしあらへん 寝てみても よう寝られへん
 あたたかな あんたの気持 忘れられへん》
                         ―佐為王さいのおおきみまかだち―〔巻十六・三八五七〕

★謀反罪 こうむる前夜 何話す 大和帰して よかったやろか 
わが背子せこを 大和へると さ夜更けて あかときつゆに わが立ち濡れし
《お前だけ 大和帰して 夜明けまで 夜露に濡れて 立ち尽くしてた》 
                         大伯皇女おおくのひめみこ―〔巻二・一〇五〕 

★恋仲の 男おどける 雪の中 何を見たかて 浮き立つ心
筑波嶺に 雪かも降らる いなをかも かなしき児ろが 布干さるかも 
筑波山つくばやま 雪降りやろか ちがうやろ わしの可愛かわい児 布干してんや》
                         ―東歌・常陸国歌―〔巻十四・三三五一〕 

★独り寝の ふと目覚めたら また独り
薦枕こもまくら あひまきし児も あらばこそ くらくも 我がしみせめ
《枕して 一緒に寝た児 生きてたら 夜のけるん 惜し思うのに》
                         ―作者未詳―〔巻七・一四一四〕 

★言霊を 出て行く船に 乗せて行け つ国向かう 遣唐使船
磯城島しきしまの 日本やまとの国は 言ことだまの たすくる国ぞ まさきくありこそ
日本やまとくに 言うたらかなう 言霊ことだまの 助ける国や 無事に帰れよ》
                       ―柿本人麻呂歌集―〔巻一三・三二五四〕 

★石見の国の 高角山たかつのやまで 依羅娘子よさみおとめを 恋しいと 袖振る人麻呂 無事帰れるか
笹の葉は み山もさやに さやげども われは妹思ふ 別れぬれば
《笹の葉が ざわざわ揺れる ざわざわと わしの胸かて 風吹き抜ける》 
                         柿本人麻呂―〔巻二・一三三〕 

日めくり万葉集<3月>(その2)

2009年09月14日 | 日めくり万葉集
■平成21年9月14日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★東国で 徴発された 防守は 壱岐・対馬まで 死をして
父母が かしらで さきくあれて 言ひし言葉けとばぜ 忘れかねつる
ととかか 頭を撫ぜて 無事でなと 言うてくれたん 忘れられへん》
                         ―丈部稲麻呂はせつかべのいなまろ―〔巻二十・四三四六〕

★欲しいんは 足音せえへん 天馬かい
おとせず 行かむ駒もが 葛飾かづしかの 真間まま継橋つぎはし やまずかよはむ
《足音の てん馬欲し 知られんと 真間の継橋 ずっとれるで》
                       ―東歌・下総国歌―〔巻十四・三三八七〕 

★樹下美人 家持はんは ほんま見たんか
春の園 くれなゐにほふ 桃の花 したる道に で立つ娘子をとめ
《春さかり こう咲いてる 桃の花 下道したみちに 可愛かいらし児ぉが・・・》
                         ―大伴家持―〔巻十九・四一三九〕 

★奥深い 入野の果ては ずっと先
こひは まさかもかなし 草枕 多胡たご入野いりのの 奥もかなしも
《うちの恋 今も胸痛つらいし 奥深おくぶこう ずっうと先まで 胸痛つらいと思う》
                       ―東歌・上野国歌―〔巻十四・三四〇三〕 

★宮廷歌人 人麻呂さんも 人間ひとの思いも あらわに詠う
わが恋ふる 千重ちえ一重ひとえも なぐさもる こころもありやと 
吾妹子わぎもこが まず出で見し 軽のいちに わが立ち聞けば
 
えた気持ちを しずめよと
 お前のった 軽の市 行ってたずねて 探したが》
玉襷たまたすき 畝火うねびの山に 鳴く鳥の こゑも聞えず 
玉桙たまほこの 道行く人も 一人だに 似てし行かねば 
 
《行き交う人中ひとなか 声聞こえん 人多数よけるに 影見えん》
すべをみ 妹が名びて そでぞ振りつる
うろてしもて 名ぁ呼んで わめき回って 袖振りまわす》
                         ―柿本人麻呂―〔巻二・二〇七〕 

日めくり万葉集<3月>(その1)

2009年09月10日 | 日めくり万葉集
■平成21年9月10日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★地霊を拝し 神饌そなえ 祈る有間に 利益りやくはあるか
家にあれば に盛るいひを 草枕 旅にしあれば しひの葉に盛る
《家ならば うつわに供えて 祈るのに 旅先やから しいで供える》
                         ―有間皇子ありまのみこ―〔巻二・一四二〕

★雪儚無はかのうに 消えたけど 恋心きもち果して 届いたやろか
梅の花 降りおほふ雪を 包み持ち 君に見せむと 取ればにつつ
《あの人に 梅に積む雪 見せたろと そっと持つけど ああ消えてまう》 
                         ―作者未詳―〔巻十・一八三三〕 

★思てたら わんといても 神さん届けて 呉れるんやろか
思はぬを 思ふと言はば 真鳥まとり住む 雲梯うなての社もりの 神し知らさむ
《思てるて 嘘をついたら 鷲の棲む 雲梯うなての神さん ばち当てはるで》
                         ―作者未詳―〔巻十二・三一〇〇〕 

★生きてたら ええことあるで 頑張ってみよ
事もなく 生きしものを 老いなみに かかる恋にも 我はあへるかも
《平凡に 生きてきたのに 年取って こんなまぶしい 恋するかワシ》 
                         ―大伴百代おおとものももよ―〔巻四・五五九〕

★大伴の 家名を背負う 家持に 叔母の郎女 未来を託す
草枕 旅行く君を さきくあれと 斎瓮いはひへゑつ 我がとこ
《越中へ 赴任のあんた 無事でねと うち祈ってる 陰膳据えて》 
                         ―大伴坂上郎女おおとものさかのうえのいらつめ―〔巻十七・三九二七〕

歴史編(9)月出てきたし潮もええ

2009年09月09日 | 日めくり万葉集
■平成21年9月9日■
万葉集に詠われた歌を 歴史の流れに沿って 採り上げ 「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★新羅討伐 船が行く 熟田津湊にきたつみなと 月従えて
軍船の準備は 整っていた 
額田王おおきみ 月を 呼ぶのじゃ
そちの 霊力をもって 潮を叶える 月を呼びだすのじゃ」 

熟田津にきたつに 船乗ふなのりせむと 月待てば しほもかなひぬ 今はでな
熟田津にきたつで 月待ち潮待ち 船出ふなで待ち きた きた 来たぞ 今こそ行くぞ》
                        ―額田王ぬかたのおおきみ―〔巻一・八〕

額田王の朗唱が 合図となった  
船団は 一斉に 月夜の海へ 





【熟田津に】へ


日めくり万葉集<2月>(その4)

2009年09月08日 | 日めくり万葉集
■平成21年9月8日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★雲立つ度に 思いは戻る いとし人麻呂 娘子おとめの涙
ただの逢ひは 逢ひかつましじ 石川に 雲立ち渡れ 見つつしのはむ
《雲あがれ 逢いたなったら 雲あがれ 逢われへんけど 雲雲あがれ》 
                         ―依羅娘子よさみのをとめ―〔巻二・二二五〕

★煌々と照る月 一面の雪 仄かに香る梅の香 雪・月・花
雪のうへに 照れる月夜つくよに 梅の花 りて贈らむ しき児もがも
《雪白い 月夜綺麗きれえや 白い梅 贈ったりたい ええ児ったら》
                       ―大伴家持―〔巻十八・四一三四〕 

★今で言うたら 舶来服や いや ブランド服や
住吉すみのえの 波豆麻はづまの君が 馬乗衣うまのりころも さひづらふ 漢女あやめゑて へる衣ぞ
《仕えてる 波豆麻旦那の 馬乗り服は 先進の 渡来とらい女に 縫わせた服や》
                       ―柿本人麻呂歌集―〔巻七・一二七三〕 

★冥福祈るか 遠避けたのか 夕焼け染める 二上雄岳
うつそみの 人にあるわれや 明日よりは 二上山ふたかみやまを 弟世いろせとわが見む
明日あしたから 二上山ふたかみやまを 弟と おもうて暮らそ この世でひとり》
                       ―大伯皇女おおくのひめみこ―〔巻二・一六五〕


日めくり万葉集<2月>(その3)

2009年09月04日 | 日めくり万葉集
■平成21年9月4日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★筑紫歌壇に咲く花は 旅人に憶良 おゆ万誓まんぜい
わがそのに 梅の花散る ひきかたの あめより雪の 流れ来るかも
《梅の花 空に舞うよに 散って来る 天から雪が 降ってきたんか》 
                         ―大伴旅人―〔巻五・八二二〕 

志貴皇子しきみこが 自然を捉え 歌にせば これ皆名歌 外れなし 
葦辺あしべ行く 鴨のがひに 霜降りて 寒きゆふへは 大和し思ほゆ
《鴨の背に 霜りてるで さむむそうや しみじみ大和 恋しいこっちゃ》
                         ―志貴皇子―〔巻一・六四〕 

★恋した男 独身やろか 妻持ちやろか 気にかかる
あずのうへに 駒をつなぎて あやほかど 人妻ろを 息にがする
《危ぶないな あの人妻ひといのち 思うけど 崩れた崖に 馬乗すみたい》
                         ―作者未詳―〔巻十四・三五三九〕 

★さあパッと パアッとパッと 行きましょう
つかさにも 許したまへり 今夜こよひのみ 飲まむ酒かも 散りこすなゆめ
《おかみかて 今宵きょうみたい酒宴さけ 許してる 梅よ散らんと 酒付き合うて》
                          ―作者未詳―〔巻八・一六五七〕 

★このとき憶良 七十四 死にぎわ気概 恐れ入る
をのこやも 空しくあるべき 万代よろづよに 語りくべき 名は立てずして
丈夫ますらおと 思うわしやぞ のちの世に 名ぁ残さんと 死ねるもんかい》
                         ―山上憶良―〔巻六・九七八〕 

日めくり万葉集<2月>(その2)

2009年09月02日 | 日めくり万葉集
■平成21年9月2日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★天智病床 倭大后きさきは祈る 親兄弟を 死なせた人に
青旗あをはたの 木幡こはたうへを かよふとは 目には見れども ただに逢はぬかも
木幡山こはたやま あんたの霊魂みたま ただようて 見えてるけども もうわれへん》
                         ―倭大后やまとのおおきさき―〔巻二・一四八〕

★琵琶湖湖畔に たたずむ黒人ひとは 何を思うて 湖水見る
いにしへの 人にわれあれや ささなみの ふるみやこを 見れば悲しき
《この古い 都見てたら 泣けてくる 古い時代の 自分ひとやないのに》 
                         ―高市黒人―〔巻一・三二〕 

★憶良爺さん 恥かき児をば 病死なくしてしまい 嘆きにくれる
世の人の たふとび願ふ 七種ななくさの 宝もわれは 何為なにせむに 
わがなかの 生れ出でたる 白玉の わが子古日は 

みんな欲しがる 宝はいらん  うちに生まれた 可愛かわいい古日》
明星あかほしの くるあしたは 敷栲しきたへの とこ去らず 
立てれども れども 共にたはぶ

《朝に起きたら 枕もとよる どこにっても じゃれ付いてくる》
夕星ゆふづつの ゆふへになれば いざ寝よと 手をたづさはり 
父母も うへさがり 三枝さきくさの 中にを寝むと
うつくしく が語らへば

《日暮れが来たら 早よ早よよと おとうもおかあも 並んで一緒いっしょ
 可愛かわいらしに うんやこの児》
                         ―山上憶良―〔巻五・九〇四〕 

★家持はんよ あんたは悪い 年増郎女いらつめ その気にさせて
ひさかたの 月夜つくよきよみ 梅の花 心ひらけて おもへる君
清々すがすがし つき光に 梅咲いた うち、、の心も あんたに咲いた》 
                         ―紀小鹿郎女きのおしかのいらつめ―〔巻八・一六六一〕

★足は東に 鶴は西 早よ任務たび終えて 大和へ帰ろ
足柄の 箱根飛び越え たづの ともしき見れば 大和し思ほゆ
《鶴飛んで 箱根の山を 越え西へ ええなぁわしは 大和が恋し》 
                        ―作者未詳―〔巻七・一一七五〕 

日めくり万葉集<2月>(その1)

2009年08月31日 | 日めくり万葉集
■平成21年8月31日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★家持はんも さみしんやろな 水にたわむれ 心をいや
妹にはず 久しくなりぬ 饒石川にぎしがは 清き瀬ごとに 水占みなうらはへてな
《置いてきた お前どしてる うらなおか きれえな水の 饒石にぎしの川で》
                    ―大伴家持―〔巻十七―四〇二八〕

★旅の歌人うたひと 黒人はんは 寂しい心 自然に託す
何処いづくにか われは宿やどらむ 高島たかしまの 勝野かちのの原に この日れなば
《日ィ暮れる 何処どこで泊まれば えんやろ はらっぱ続きの 高島たかしま勝野かちの
                    ―高市黒人―〔巻三・二七五〕

★貧窮問答 憶良は詠う 人生じんせ恨んで 悲しい叫び
天地あめつちは 広しといへど        《世間せけんひろても  
ためは くやなりぬる      わしには狭い
日月ひつきは あかしといへど         明るい日や月
ためは 照りや給はぬ       わしには照らん 
人皆か                   みんなそやろか
のみや然る              ワシだけやろか
わくらばに 人とはあるを        ワシも人間ひとやで
人並ひとなみに あれれるを        人並みやのに》 

                      ―山上憶良―〔巻五・八九二〕

但馬皇女たじまひめみこ 恋仲裂かれ 世間を捨てて 何処どこ行くやろか
ことしげき 里に住まずは 今朝けさ鳴きし かりたぐひて なましものを
《人の口 うるさい里捨て 今朝鳴いた 雁と一緒に てしまいたい》
                    ―但馬皇女たじまのひめみこ―〔巻八・一五一五〕

赤兄あかえ恨めし 中大兄おおえは憎し 岩代松よ 察しておくれ
磐代いはしろの 浜松がを 引き結び 真幸まさきくあらば またかへり見む
《松の枝 結んで祈る 無事ならば 礼に寄ります 岩代いわしろの神》
                  ―有間皇子―〔巻二・一四一〕

日めくり万葉集<1月>(その4)

2009年08月27日 | 日めくり万葉集
■平成21年8月27日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します いわく「大阪弁万葉集」
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★昔 おもうんは 年取った 言うこっちゃ
鹿ししを つな川辺かはへの 和草にこぐさの 身の若かへに さ寝し子らはも
《射た鹿を 追う川縁かわべりの 若草が 思い出させた 昔に寝た子》
                    〔巻十六・三八七四〕―作者未詳― 

★この男 この歌 思う相手に 送ったやろか
しるしなき 恋をもするか ゆふされば 人の手まきて らむ児故に
《しょういな 他人ひとの恋人 思うやて あの児今夜も あいつと一緒》
                    〔巻十一・二五九九〕―作者未詳― 

★恋に狂うた 女は 怖い
人言ひとごとを しげ言痛こちたみ おのが世に いまだ渡らぬ 朝川渡る
《あんまりに やかましよって 心決め 一線越えた うちのせいちゃう》
                    〔巻二・一一六〕―但馬皇女たじまのひめみこ

★あせって 逃げたら こういうこっちゃ
むささびは 木末こぬれ求むと あしひきの 山の猟師さつをに あひにけるかも
《むささびは こずえ登って 逃げぼと したけど猟師てきに つかまってもた》
                    〔巻三・二六七〕―志貴皇子しきのみこ

★憶良はん ほんまは 覚えているくせに
あまざかる ひな五年いつとせ 住まひつつ 都のてぶり 忘らえにけり
きょうはなれ ここの田舎に 五年り みやこ風情ふぜいを 忘れてしもた》
                    〔巻五・八八〇〕―山上憶良― 

★この口説き 相手に 届いたことやろか
紫は 灰さすものそ 海石榴市つばいちの 八十やそちまたに 逢へる子やたれ
紫色ええいろを 出すの灰る〔ええ女 男次第や〕 海石榴市つばいちの 道で逢うた子 名前をおせて》
                    〔巻十二・三一〇一〕―作者未詳― 

日めくり万葉集<1月>(その3)

2009年08月25日 | 日めくり万葉集
■平成21年8月25日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★俗姓笠麻呂かさのまろ こんな歌も詠うけど 女好き?でもあったんやて
世間よのなかを 何にたとへむ 朝びらき にし船の あとなきごとし
《人生は たとえてうと 船みたい 行ってしもたら 何んも残らん》
                    〔巻三・三五一〕―沙弥満誓さみまんぜい

★天武はん 年の離れた奥さんに からかい歌を 出したけど・・・
我が里に 大雪降れり 大原の りにし里に 降らまくはのち
《わしの里 大雪降った お前る そっちの田舎 まだまだやろな》
                    〔巻二・一〇三〕―天武天皇―

★これは 一本取られた みたい
我が岡の おかみに言ひて 降らしめし 雪のくだけし そこに散りけむ
《そらちゃうで うちの神さん 願いして 降らしてもろた 雪のカケラや》
                    〔巻二・一〇四〕―藤原夫人ふじはらのぶにん

★国誉めるのは 政治のイロハ 誰かさんかて 見習みなろたらどやろ <歴史編(3)>見てね 
大和やまとには 群山むらやまあれど とりよろふ あめの香具山 登り立ち 国見をすれば 
国原くにはらは けぶり立ち立つ 海原うなはらは かまめ立ち立つ うまし国ぞ あきづ島 大和の国は

《大和には ぎょうさん山ある その中で とりわけ綺麗きれえな 香具山に 登ってあちこち 見てみたら
 おかでは炊煙けむり 昇ってる 水辺に水鳥 飛んどおる なんとえ国 大和の国は》
                    〔巻一・二〕―舒明天皇じょめいてんのう

★娘子は遊女? 服染めたって どないするんや?
草枕 旅行く君と 知らませば 岸の黄土はにふに にほはさましを
《もう会えん 旅の人やと 知ってたら 黄色きいろの土で 服染めたのに》
                    〔巻一・六九〕―清江娘子すみのえのおとめ

日めくり万葉集<1月>(その2)

2009年08月22日 | 日めくり万葉集
■平成21年8月22日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★天平五年(733)遣唐大使丹比たじひ真人まひと広成ひろなりの求めに応じ
 憶良「好去こうきょ好来歌こうらいか」に託し 任務の無事を祈り奏上

神代より 言らく 
そらみつ 大和の国は  皇神すめかみの いつくしき国 
言霊ことだまの さきはふ国と 語り継ぎ 言ひ継がひけり・・・ 

《大和の国は 神代から 威厳あふれる 神の国 
 言霊ことだまかなう さちの国 語り継がれて 言い継がれ ・・・》 
                    〔巻五・八九四〕―山上憶良― 

★悟りを開いたかに見える元興寺の僧 投げ遣りに修行不足が垣間見える
白玉しらたまは 人に知らえず 知らずともよし
          知らずとも 我し知れらば 知らずともよし 

《真珠貝 人知られんと 海底うみそこひとり
           ええやんか 自分知ってりゃ 人はどうでも》 
                    〔巻六・一〇一八〕―元興寺の僧― 

★織り込み短歌の上手な長意吉麻呂ながのおきまろ ひしほ 酢 ひる たひ 水葱なぎ を織り込めと言われて
ひしほに ひるてて たひ願ふ 我にな見えそ 水葱なぎあつもの
酢醤油すじょうゆに ネギきタレの 鯛欲しに なんで出すんや 水葱ねぎの吸いもん
                    〔巻十六・三八二九〕―長意吉麻呂ながのおきまろ

おみなにおお持て家持さん 今宵は一寸都合が付かず 言い訳作りに占いしてる
月夜つくよには かどに出で立ち 夕占ゆふけ問ひ 足占あしうらをそせし かまくを
《ええ月夜つきよ 玄関立って 夕占ゆううらや 足占あしうらしたで 行きたいおもて》
                    〔巻四・七三六〕―大伴家持― 

★そう 自分を信じなくては と思いながらも・・・
ひ恋ひて のちに逢はむと なぐさもる 心しなくは 生きてあらめやも
《恋焦がれ いつかこの恋 成るもんと 思わんことに 生きてられるか》 
                    〔巻十二・二九〇四〕―作者未詳― 


日めくり万葉集1月(その1)

2009年08月21日 | 日めくり万葉集
■平成21年8月21日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★蒲生野の薬狩り 久しぶりに会う かつての恋人 大海人皇子おおあまおうじ額田 王ぬかたのおおきみ
 近づく皇子に おおきみは うたい懸ける
 
あかねさす 紫野行き 標野しめの行き 野守は見ずや 君が袖振る
《春野摘み 野守りが見るで して こっちを向いて 袖振ってたら》
                         (巻一・二〇)―額田 王ぬかたのおおきみ

★委細構わず 近づき 詠い返す 大海人皇子
紫の にほへる妹を 憎くあらば 人妻故に 我恋ひめやも 
《そういな 可愛かいらしお前に 連れ合いが るん承知で さそたんやから》
                         (巻一・二一)―大海人皇子おおあまのおうじ

★因幡赴任の 大伴家持 新春の寿ぎ歌を詠う 万葉集最終歌
あらたしき 年の初めの 初春の 今日降る雪の いやしけ吉事よごと
《新年と 立春はる一緒来た 雪までも こんなえこと ぎょうさん積もれ》
                         (巻二十・四五一六)―大伴家持おおとものやかもち

恭仁京くにきょうが一望される高台 都移り後 三年みとせ 新春の宴での 寿ぎ歌
一つ松 幾代かぬる 吹く風の 声のきよきは 年深みかも
《風の音 爽やかなんも そのはずや この一本松まつのきの 年輪とし見た分かる》
                         (巻六・一〇四二)―市原 王いちはらのおおきみ

★山部赤人の代表歌 薩埵峠さったとうげからの景観は まさにこの歌が 詠まれた景色
田子の浦ゆ うち出でて見れば ま白にぞ 富士の高嶺に 雪は降りける 
《田子の浦 回って見たら パッと富士 山のてっぺん 雪降ってるで》
                         (巻三・三一八)―山部赤人やまべのあかひと

ねた女の 可愛いい心と見るか これでは行く気もえるか すべては男しだい
来むと言ふも 来ぬ時あるを 来じと言ふを 来むとは待たじ 来じと言ふものを 
《来るても ん時もある てる るかと待たん んて言うんを》
                         (巻四・五二七)― 大伴坂上郎女 おおとものさかうえのいらつめ