【掲載日:平成24年10月16日】
世間は まこと二代は 行かざらし 過ぎにし妹に 逢はなく思へば
棺挽く人 歌う歌 これが挽歌の 由来なり
嘆き悔やめど 甲斐はない 逝きて戻らぬ かの人よ
生死別れは この世の定め
定め知りつつ 残るは嘆く
戻れも一度 叶わぬ願い
上がり立つ雲 偲びの草か
鏡なす 我が見し君を 阿婆の野の 花橘の 玉に拾ひつ
《明け暮れに 見てたあんたを 阿婆の野で 花橘実ぃと 思うて拾ろた》
―作者未詳―(巻七・一四〇四)
秋津野を 人の懸くれば 朝撒きし 君が思ほえて 嘆きは止まず
《秋津野と 聞いたら朝に 撒いて来た あんた思うて 嘆き止まらん》
―作者未詳―(巻七・一四〇五)
秋津野に 朝居る雲の 失せゆけば 昨日も今日も 亡き人思ほゆ
《秋津野で 朝懸かる雲 消えてくと 昨日も今日も 思い出すんや》
―作者未詳―(巻七・一四〇六)
隠口の 泊瀬の山に 霞立ち 棚引く雲は 妹にかもあらむ
《泊瀬山 霞み立ち込め 漂うて たゆとう雲は あの児やろうか》
―作者未詳―(巻七・一四〇七)
狂言か 逆言か 隠口の 泊瀬の山に 廬りせりといふ
《信じへん 騙してるんや 間違いや あの児泊瀬の 山住む云んは》
―作者未詳―(巻七・一四〇八)
秋山の 黄葉あはれと うらぶれて 入りにし妹は 待てど来まさず
《秋山の 黄葉に魅かれ しょんぼりと 山入った児 帰って来んが》
―作者未詳―(巻七・一四〇九)
世間は まこと二代は 行かざらし 過ぎにし妹に 逢はなく思へば
《人間の世に もう一回は 無いらしな 逝ったあの児に 逢われんもんな》
―作者未詳―(巻七・一四一〇)
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