【掲載日:平成24年10月12日】
かくしてや なほや老いなむ み雪降る 大荒木野の 小竹にあらなくに
巡り合わせの 良え人居れば
憂き目会う人 その裏居るぞ
臆病油断に 間ぁ悪い人
嘆きそれぞれ いろいろ世間
伏越ゆ 行かましものを 守らふに うち濡らさえぬ 波数まずして
《伏越えを 行った良かった 躊躇うて 波間計れで 濡れて仕舞たで》【海に寄せて】
―作者未詳―(巻七・一三八七)
(びくついてたら 見つかって仕舞た)
白菅の 真野の榛原 心ゆも 思はぬ我れし 衣に摺りつ
《白菅の 真野榛原の 榛の木で その気無いのに 衣染めて仕舞た》【木に寄せて】
―作者未詳―(巻七・一三五四)
(意に染まへんに 契って仕舞た)
膝に伏す 玉の小琴の 事なくは いたく幾許く 我れ恋ひめやも
《あの小琴 思いがけ無う 失うて 恋しさ募り 辛抱堪らん》【琴に寄せて】
―作者未詳―(巻七・一三二八)
(事なくは=変事がなかったら)
(一寸油断で 取られる破目や)
葛城の 高間の草野 早知りて 標刺さましを 今ぞ悔しき
《高間ある 萱野早うに 知ってたら 唾着けたのに 手遅れやんか》【草に寄せて】
―作者未詳―(巻七・一三三七)
真玉つく 越智の菅原 我れ刈らず 人の刈らまく 惜しき菅原
《悔しいで 越智の菅原 わし違ごて 他所の誰かが 刈る云うのんは》【草に寄せて】
―作者未詳―(巻七・一三四一)
山高み 夕日隠りぬ 浅茅原 後見むために 標結はましを
《山高こて 日ィ早よ暮れた 浅茅原 次来る標 した良かったに》【草に寄せて】
―作者未詳―(巻七・一三四二)
(後の祭りや 言われてみても)
かくしてや なほや老いなむ み雪降る 大荒木野の 小竹にあらなくに
《こないして 年取るんかな 人も見ん 雪の荒木野 篠竹みたい》【草に寄せて】
―作者未詳―(巻七・一三四九)
(もっと良男 思もてる内に)
世間は 常かくのみか 結びてし 白玉の緒の 絶ゆらく思へば
《世の中は こんなもんかい 繋いだる 白玉の紐かて 切れるんやから》【玉に寄せて】
―作者未詳―(巻七・一三二一)
(あんな固うに 契ったくせに)
――――――――――――――――――――
【新しい試みです】
「歌心関西訳」の作成過程をご覧ください。
これなら あなたも 訳せますよ。
