【掲載日:平成24年10月5日】
冬こもり 春の大野を 焼く人は 焼き足らねかも 我が心焼く
互い思いが 重なり合うて
邪魔を撥ね退け 近づき出来た
交わす言の葉 甘味を帯びて
戯れ言までに 心が通う
真鳥棲む 雲梯の社の 菅の根を 衣にかき付け 着せむ子もがも
《菅の根の みたい深うに 心込め 衣着せくれる 可愛い児欲しな》【草に寄せて】
―作者未詳―(巻七・一三四四)
(神さん頼む 大切にするに)
磯の浦に 来寄る白波 返りつつ 過ぎかてなくは 誰れにたゆたへ
《磯入江 来る白波は 重ね寄る 沖帰らんの 誰思てやろ》【海に寄せて】
―作者未詳―(巻七・一三八九)
(近寄り来たん お前思てや)
陸奥の 安達太良真弓 弦着けて 引かばか人の 我を言なさむ
《安達太良の 弓に弦着け 引いたなら 他人このわしに 何ちゅうやろか》【弓に寄せて】
―作者未詳―(巻七・一三二九)
(皆の憧れ 責められせんか)
冬こもり 春の大野を 焼く人は 焼き足らねかも 我が心焼く
《春の野で 野焼きする人 し足りんで うちの胸まで 焼き焦がすんか》【草に寄せて】
―作者未詳―(巻七・一三三六)
(罪な人やで あんたて人は)
近江のや 八橋の小竹を 矢着がずて まことありえむや 恋しきものを
《八橋篠 矢ぁにせんまま 居れんがな ほんま真っ直ぐ 矢に打って付け》【草に寄せて】
―作者未詳―(巻七・一三五〇)
(気に入ったんは 放っとき出来ん)
はなはだも 降らぬ雨故 にはたづみ いたくな行きそ 人の知るべく
《そんな大量 降りもせんのに 水溜り ザアザ流れな 聞こえるほどに》【雨に寄せて】
―作者未詳―(巻七・一三七〇)
(偶しか来んに バタバタ去にな)
向つ峰に 立てる桃の木 成らむやと 人ぞささやく 汝が心ゆめ
《実ぃ成らん 木や言う噂 気にしなや 向こうの峰の 桃の木さんよ》【木に寄せて】
―作者未詳―(巻七・一三五六)
(結ばれへんて 言うのん嘘や)
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