【掲載日:平成24年1月20日】
何時はしも 恋ひぬ時とは あらねども
夕かた設けて 恋ひは術なし
初恋過ぎて 目覚めたら 一緒居る児が 欲しゅうなる
恋に目覚めて 焦がれる時は
何を為てても あの児が浮かぶ
人目忍んで 通うてみるが
思案思案で 逢えずに帰る
このころの 寝の寝らえぬは 敷栲の 手枕まきて 寝まく欲りこそ
《このところ 良う寝られんの 夜来ると お前と共寝たい 思てるからや》
―柿本人麻呂歌集―(巻十二・二八四四)
何時はしも 恋ひぬ時とは あらねども 夕かた設けて 恋ひは術なし
《何時言うて 焦がれ止む時 無いけども 特に夕暮れ 恋してならん》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二三七三)
忘るやと 物語りして 心遣り 過ぐせど過ぎず なほ恋ひにけり
《忘れ様と お喋りごとで 気紛らし してもし切れん 余計恋しなる》
―柿本人麻呂歌集―(巻十二・二八四五)
人の寝る 味寝は寝ずて 愛しきやし 君が目すらを 欲りし嘆かむ
《皆してる 共寝もせんで 可愛い児に せめて一目と 切無い恋や》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二三六九)
恋ふること 慰めかねて 出でて行けば 山を川をも 知らず来にけり
《恋苦しいの 抑え出けんで 出てきたが 無我の夢中で ここ来て仕舞た》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二四一四)
行き行きて 逢はぬ妹ゆゑ ひさかたの 天露霜に 濡れにけるかも
《夜通しに あの児逢いとて 歩き詰め 夜明けの露に 濡れて仕舞たで》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二三九五)
君に恋ひ うらぶれ居れば 悔しくも 我が下紐の 結ふ手いたづらに
《恋しいて しょぼくれてるに ええいもう 下紐結ぶこの手が 縺れてならん》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二四〇九)
愛しと 我が思ふ妹を 人皆の 行くごと見めや 手に巻かずして
《可愛いなと 思うお前に 知らん顔 して行けるかい 共寝もせんと》
―柿本人麻呂歌集―(巻十二・二八四三)
赤らひく 肌も触れずて 寝ぬれども 心を異には 我が思はなくに
《気遣かいで まだ肌合わし 共寝とらんが 嫌ろてる訳と 違うんやからな》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二三九九)
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