【掲載日:平成24年1月17日】
うち日さす 宮道を人は 満ち行けど
我が思ふ君は ただ一人のみ
巻の七から 十二まで 編まれし巻の そこここに
人麻呂歌集 数多ある 歌の習いに 為よとてか
古歌の お手本を 先に並べた 編み姿
そぞろ歩きに 巻々で 拾い探して 集めみた
人麻呂歌集 歌形 短歌多くて 三百余
次に旋頭歌 三十五 長歌も少し 含まれる
歌の題材 豊かにて 正述心緒 比喩の歌
寄物陳思に 相門歌 七夕多て 三十九
問答歌に 羈旅の歌 春秋冬の 雑の歌
正述心緒 何物ぞ 正に心緒を 述べるとは
心思いを 直接に 物に寄せずに 詠う歌
正の心の 代表は 言わずもがなの 恋の歌
先ずの手始め 初歌集め
心思うが 口には出せん
垣間見ただけ 心は弾む
清らな思い あの児に届け
うち日さす 宮道を人は 満ち行けど 我が思ふ君は ただ一人のみ
《大通り 人仰山に 通るけど うち思う人は 一人だけやで》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二三八二)
垂乳根の 母が手離れ かくばかり 術なきことは いまだせなくに
《母ちゃんの 手元離れて うちこんな 遣る瀬ない気ぃ もう初めてや》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二三六八)
白栲の 袖をはつはつ 見しからに かかる恋をも 我れはするかも
《白い袖 ほんのちょっぴり 見ただけで こんな切無い 恋するなんて》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二四一一)
朝影に 我が身はなりぬ 玉かきる ほのかに見えて 去にし子ゆゑに
《恋苦しいて こんな痩せたで ちらと見て 去かして仕舞た あの児の所為で》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二三九四)
心には 千重に思へど 人に言はぬ 我が恋妻を 見むよしもがも
《心秘め 胸いっぱいに 思うてる わしのあの児に どしたら逢える》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二三七一)
妹があたり 遠く見ゆれば 怪しくも 我れは恋ふるか 逢ふ縁なしに
《あの児家 遠く見えてる それだけで 胸ときめいた 逢えもせんのに》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二四〇二)
たまさかに 我が見し人を 如何ならむ 縁をもちてか また一目見む
《偶々に 見掛けたあの児 今度また 見る切っ掛けが 無いもんやろか》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二三九六)
玉くせの 清き川原に みそぎして 斎ふ命は 妹がためこそ
《清らかな 川原に出かけ 身ぃ清め 命祈るん あの児のためや》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二四〇三)
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