【掲載日:平成23年1月14日】
玉に貫く 花橘を 乏しみし
このわが里に 来鳴かずあるらし
季節は 初夏を迎え
家持は 待ち侘びていた
立夏を過ぎ 数日が経っている
聞こえてこない 霍公鳥の声
〔ほい ここは越であった
温暖な 都ではないわい
いかな 夏が立ったとは云え これは無理か〕
あしひきの 山も近きを 霍公鳥 月立つまでに 何か来鳴かぬ
《ほととぎす 夏立つ月に なったのに なんで鳴かんか 山近いのに》
―大伴家持―〔巻十七・三九八三〕
玉に貫く 花橘を 乏しみし このわが里に 来鳴かずあるらし
《ほととぎす 鳴きに来んのは ここ越に 花橘が 少ないからや》
―大伴家持―〔巻十七・三九八四〕
【三月二十九日】
「霍公鳥 ほととぎす と・・・」
歌記録を繰る家持の眼に とある歌が 留まる
橘は 常花にもが ほととぎす 住むと来鳴かば 聞かぬ日無けむ
《橘が 年中花で あって欲し 鳴くほととぎす 毎日聞ける》
―大伴書持―〔巻十七・三九〇九〕
珠に貫く 楝を家に 植ゑたらば 山霍公鳥 離れず来むかも
《薬玉作る 栴檀花を 植えたなら 山ほととぎす ずっと来るかな》
―大伴書持―〔巻十七・三九一〇〕
〔おお これは 書持が歌
佐保を留守にし 恭仁の都づくりに勤しんでおった折 寄越したものであった
そう言えば 泉川の別れで 『覚えていますか』などと 申しておったが・・・
おおっ そうか そうであったか・・・〕
《兄上が 年中花で あって欲し 傍に居ったら 毎日逢える》
《薬玉作る 栴檀花を 植えたなら 兄上ずっと 居てくれるかな》
思わずに 零れる涙
今更の気付きが 悔やまれる
半月ばかりの後
それとはなしに 聞こえ来る声
ぬばたまの 月に向ひて 霍公鳥 鳴く音遥けし 里遠みかも
《空渡る 月向こて飛ぶ ほととぎす 声遥かやな 里遠いからか》
―大伴家持―〔巻十七・三九八八〕
【四月十六日】
〔そうか そうか
ほととぎすは 遠い人を思い出させるとか
そうか そうか・・・〕
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます