令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

旅人編(23)潮干潮満ち

2009年10月19日 | 旅人編
【掲載日:平成21年12月9日】

荒津あらつの海 しほしほち 時はあれど 
            いづれの時か わが恋ひざらむ


旅人たびとの船出に 先立ち
郎党・従者の一行は  
那の大津を後に  大和への航路を進んでいた
大和へ戻れば  大納言職遂行に 従者は倍増する
早急に帰っての  準備が必要とされる

主人  旅人とは違い 用意の船は 大船ではない
航路の不安は  比ぶべくもない
乗員の  船旅不安 帰京の喜び 
二つの思いを乗せ  船は 一路 東へと・・・

わが背子せこを が松原よ 見渡せば 海人あま少女をとめども 玉藻刈る見ゆ
《おお見える アガ松原から 眺めたら 磯で少女おとめら 玉藻刈ってる》
                         ―三野連石守みののむらじいそもり―〔巻十七・三八九〇〕
荒津あらつの海 しほしほち 時はあれど いづれの時か わが恋ひざらむ
《海の潮  満ち干の時は 決まってる わしの思いは 引く時ないわ》
                         ―作者未詳―〔巻十七・三八九一〕 
いそごとに 海人あま釣船つりふね てにけり わが船泊てむ 磯の知らなく
《磯どこも  漁師の船が 泊まってる わしら泊るん どこの磯やろ》
                         ―作者未詳―〔巻十七・三八九二〕 
昨日きのふこそ 船出ふなではせしか 鯨魚いなさ取り 比治奇ひぢきなだを 今日けふ見つるかも
船出ふなでしたん 昨日みたいに 思うたが 早いもんやな ヒジキの灘や》
                         ―作者未詳―〔巻十七・三八九三〕 
淡路島あはぢしま 渡る船の 揖間かぢまにも われは忘れず 家をしそ思ふ
《船の梶 あいだ狭いが そんなも わし家のこと 忘れられへん》
                         ―作者未詳―〔巻十七・三八九四〕 
大船おほふねの 上にしれば 天雲あまくもの たどきも知らず 歌乞わが
《船の上 波に揺られて 頼りない 何時いつ着くんやろ 懐かし家に》
                         ―作者未詳―〔巻十七・三八九八〕 
あま少女をとめ いざく火の おぼほしく 都努つのの松原 思ほゆるかも
《ぼんやりと  津野の松原 見えとおる なんとは無しに 懐かしいがな》
                         ―作者未詳―〔巻十七・三八九九〕 
玉はやす 武庫むこわたりに あまづたふ 日の暮れゆけば 家をしそ思ふ
《きらきらと  武庫の海峡 日ィ暮れる 夕暮れ寂して 家思い出す》
                         ―作者未詳―〔巻十七・三八九五〕 
家にても たゆたふ命 波の上に 思ひしれば 奥処おくか知らずも
《この命 うちに居っても 頼りない 船の上では なお頼りない》
                         ―作者未詳―〔巻十七・三八九六〕 
大海の 奥処おくかも知らず 行くわれを 何時いつ来まきむと 問ひし児らはも
《海越えて 何処どこまで行くか 分からんに 何時いつ帰るかと あの児が聞いた》
                         ―作者未詳―〔巻十七・三八九七〕 



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