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令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

旅人編(22)水城の上に

2009年10月20日 | 旅人編
【掲載日:平成21年12月8日】

大夫ますらをと 思へるわれや 水茎みづくきの 
               水城みづきの上に 涙のごはむ

【水城の全貌、上水城付近】


旅立ちの一行は そちやかたを出 
いま みずの堤に立っていた
振りかえる 旅人たびと
三年を過ごした  館が見える
それらの日々が  走馬灯が回る如くに 思われる
筑紫赴任への  船旅
小野老おののおゆ歓迎の 春の宴
憶良との  すれ違い
大伴郎女いらつめとの 永遠とわの別れ
憶良の 心情こころあふれる弔問
郎女無き日々の憂い 
丹生女王にうのおおきみからの便り
長屋王の変 
総勢三十二人が集いし 梅花うめはなうたげ
松浦川への  遊行
死病の取りかれと 回復
なんと  目まぐるしくもの 日々であったろう

馬上 感慨にふける旅人に あゆみを寄せる女人にょにん
筑紫での 数多あまたの宴席にはべりし遊女 児島
老齢  やもめの旅人に 
それとなくの気遣いを見せてくれた  児島
旅人とて  その都度の 気配りを 
気付かずにいたわけではない 
ここ 大宰府を去り みやこへと戻れば 
児島との別れは 今生こんじょうのものとなろう
互いの胸を知りながら  
それぞれが 別れの心をうた

おほならば かもかもむを かしこみと 振りき袖を しのびてあるかも
《いつもやと 袖振るけども 門出かどでには はしたないかと 辛抱しんぼするんや》
                         ―児  島―〔巻六・九六五〕 
倭道やまとぢは 雲がくりたり しかれども わが振る袖を 無礼なめしとふな
《道雲に 隠れてしもたで ええかなと 袖振るけども 堪忍かんにんしてや》
                         ―児  島―〔巻六・九六六〕 
倭道やまとぢの 吉備きびの児島を 過ぎて行かば 筑紫つくしの児島 思ほえむかも
《帰り道  吉備の児島を 通るとき きっと思うで 筑紫の児島》
                         ―大伴旅人―〔巻六・九六七〕 
大夫ますらをと 思へるわれや 水茎みづくきの 水城みづきの上に 涙のごはむ
《男やぞ 水城の上で 涙なぞ いてたまるか 女のために》
                         ―大伴旅人―〔巻六・九六八〕 

遠ざかる  旅路の一行
今にも  泣き出しそうな空
雲が  垂れこめ 馬上の旅人の影は 遠ざかる
えにえた 児島が 袖を振る
振り向こうとしない旅人の馬は もやの彼方に





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